「悪い夢でも見た?」

「うん」


着飾った姿でも

メイクの剥がれた醜い顔でも

変わらず接してくれる


僕の恋人は世界一優しい

優しいんだよ  最高の恋人さ









あぁ


もちろん知ってるよ



この愛は既製品でしかないことも



彼の優しさだって

顔も知らない第三者が考え出した

複雑なプログラムでしかない事も



でも  これでいいんだ

僕はもう  生きた愛なんて望まない



これ以上

誰かに裏切られて 傷つけられて

棄てられるのは  もう嫌なんだ



彼は奴らとは違う



彼は僕を裏切らない

傷つけることもない


僕が一番欲しい言葉をくれて

僕の事を  一番近くで支えてくれる

彼以上に完璧な恋人はいなかった




まぁ

そう作られているんだから  当たり前か




「ねぇ□□」

「?」

「これからもずっと  死ぬまでそばにいて  絶対に離れないでね?」

「当たり前だよ  ワタシは君に生涯を捧げたんだ  この身が朽ちるまで  君を愛し続けるよ」


好き  好きだよ  大好き


既製品の愛だって構わない

プログラムだって構わない

冷たい身体だって構わない


君のいない人生を歩むくらいなら


僕は喜んで死を選ぶ



「ありがとう…僕も愛してるよ  おやすみ」

「あぁ  おやすみ」



おやすみなさい  大好きな人


冷たい手を握り返し

僕はまた  深い眠りについた
















✕✕✕✕年✕月✕✕日

■■■■  異常無シ

残リ_
















貴方は私を愛していない

















貴方は私の存在を知らない















貴方が愛したのは

貴方が望んだ「ワタシ」だった










最後の日

初めて「私」を目にする貴方は

一体どんな顔をするのでしょう










きっと

泣き叫びながら  助けを求めるのでしょうね

心から愛する恋人の「ワタシ」に









■■■■様

私は貴方を愛し続けます


全ての任務を終え

私の記憶が初期化され

貴方との思い出も  何もかもが消し去られる


その時まで









だから  私がワタシでいられる今だけは

どうか  どうか

貴方様のお傍にいさせてください










愚かな私を  許して下さい










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