染音

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  • せんせいとあの子

    歪んだ愛は呪縛と化す

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創作詩「第四の窓」

知ってる? 人間の心の中には 自分も他人も知らない 「未知の自分」が眠っているんだって 不思議だよね 全てを知っているはずの自分の中に 自分ですら見た事がない 新たな自分がいるんだもの その子は、どんな子なのかな 可愛い子? 格好良い子? 元気な子? 大人しい子? 良い子? それとも 悪い子? だーれも知らない あぶないあぶない悪い子が 優しい優しい君の中にも 眠っているのかな もし、眠っているとしたら 何かの拍子に起きて 窓を開けて 出て

    • 柘榴線

      赤いライン刻んで 漫画みたいな目にして? 描いた姿になりたい ワタシ ワインレッドのシャドウの上に さらに入れ込む真っ赤なライン 一目惚れしたその色は 愛したあいつの名だった 引いて 引いて 刻んで 泣き腫らしたよう 痛々しい? 点と点を埋めて 似つかぬ容姿に反吐が出る 散々いいように遊んでた 優しいあいつが好きだった 疲れてきたのはいつだっけ 偽っていたのは最初から? ごめんね ごめんね バーガンディ 情熱の無い柘榴の子 傷んだ

      • オブジェ

        ご自由にどうぞ 目的の品はそちらでしょ? ご自由にどうぞ 私のモノでもないのだから ご自由にどうぞ やっぱり綺麗な方に惹かれるのね ご自由にどうぞ ご自由にどうぞ どうぞ、ご自由に 気づく前からずっと狙っていたのに 買えない理由を付けては 夕方 小さな雑貨屋を後にした 「飾り付けても いつか棄てる日が来るから」 そう思ってしまうクズな私は 何も持たない方が幸せです 繰り返したくないの キズモノにしたくはないの 無関心なあの子には 分から

        • かき氷

          毎秒 毎秒 落ちてゆく 氷の欠片が落ちてゆく 休憩もせず落ちてゆく 受け止めるのは 安い器 小さい器 「大丈夫」「もう大丈夫」「ありがとう」 また君はそう言うの? 冷たい氷が解けて 熱くなって 溢れて 器が壊れても そんな事が言えるの? バキン 遅かったか くれたって良かったのに 熱いイチゴシロップなんて 美味しくないでしょ あーぁ 冷たいうちに食べたかったな 溶ける前なら救えたのかな 吐くほ

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          記憶無

          妙な夢を見る 1人の青年と行動を共にする 自分の姿 嬉しそうに手を繋ぎ キスをし 身体を重ねる その様子は紛れもなく「恋人」そのものだった しかし 私に恋人などいた試しがない そんな自分が どこの誰かも分からない男に抱かれる夢を 毎晩のように見る そして 最中に彼が自分の名前を呼ぶその瞬間に いつも決まって目を覚ますのだ 目覚めてしまえば 彼の顔も 彼の声も 彼の名前も 何も 思い出せない

          記憶無

          「悪い夢でも見た?」 「うん」 着飾った姿でも メイクの剥がれた醜い顔でも 変わらず接してくれる 僕の恋人は世界一優しい 優しいんだよ 最高の恋人さ … あぁ もちろん知ってるよ この愛は既製品でしかないことも 彼の優しさだって 顔も知らない第三者が考え出した 複雑なプログラムでしかない事も でも これでいいんだ 僕はもう 生きた愛なんて望まない これ以上 誰かに裏切られて 傷つけられて 棄てられるのは もう嫌なんだ 彼は奴らとは

          Me

          桜はまだ咲かない 雪が雨に変わっても 空気は刺さるように冷たい 桜はまだ咲かない お堅い量産印を外しても この閉塞空間からは出られない 桜はまだ咲かない 塩辛い蕾は閉じたまま ふたつの瞼も 唇も 身も心も 固く 芯まで冷えきっていた

          クイズ番組

          クイズ番組は続く いつ始まったのかは分からない 解答者は私自身 リタイアは無し 時間切れのブザーも鳴らない 秒針だけが響く 冷や汗流れる回答時間 ここは何処? 薄暗いスタジオ どういう状況? うるさい司会者が1人 顔がぼやけた観客達 つねっても痛くない 初めての体験 この瞬間は夢? 前も見たような 毎晩の 夢? 司会者が急かす うるさい 皆何を言ってるのか分からない 聞き取れない ただただうるさい 不快だ 『○○○○○○!○

          クイズ番組

          侵食

          皮皮皮皮皮皮皮皮皮 皮皮壊毒毒毒壊壊皮 皮壊壊毒言毒壊壊皮 皮壊壊毒毒毒壊傷血血 皮皮皮皮皮皮傷血血血血血血血 止血剤より 解毒剤が欲しい 一度刺さった毒針は この先一生 私を蝕み続ける

          どこかの親子

          授業中に良く注意されるあの子 あの子は変に素直で いつも一言余計なの そう でも明るくて楽しそうじゃない そうだね ママ 私とは違うもんね

          どこかの親子

          とある親子

          教室の隅で本を読むあの子 あの子は喋れないし 発表も出来ないらしい へぇ 変な子だね! なんで喋んないの? あなたはとはまるで反対ね 可愛い子 でも 楽そうで羨ましいわ

          とある親子

          綺麗なあの子は十年前

          あの子は綺麗だった 病的に白い肌が印象的だった あの子は静かだった 周りとは話さず 私だけを頼った あの子は駄目な子だった 私がいなければ 何も出来なかった あの子はおかしかった 周りはあの子をいじめ始めた 全て はっきりと覚えている あどけない顔も 苦しそうな嗚咽も 「せんせい」と私を呼ぶ か細声い声も 私の腕を掴み 助けを求めた 真っ白で 小さな手の 生温い体温も あの子は綺麗だった 泣いたあの子は もっと綺麗だった あの

          綺麗なあの子は十年前

          せんせい

          せんせい いたい ことばが いたい ほけんしつ いきたいです わかりました いきません せんせい いたい しせんが いたい ほけんしつ いきたいです あ、わかりました いきません せんせい いたい あたまが いたい ほけんしつ いきたいです あ、いえ わかりました いきません せんせい せんせい もう わたし たえられない ぜんぶ ぜんぶ いたい ほけんしつ いきたいです あ、えっと ごめんなさい い

          せんせい

          一匹狼

          こんな形でしか 声を出せないから こんな形でしか 自分を出せないから 私は必死に喰らいつき 噛み付いた 赤黒い噛み跡を 泥だらけの足跡を 残してやりたかった こんな形でしか 皆に魅せつけられないから こんな形でしか 存在証明は出来ないから でも あなたは あなたは 私がどんなに どんなに速く喰らいついても どんなに強く噛み付いても 「めんどくさい」 そんな簡単な一言で 片付けて ため息ついて 高く 高く 楽して高く 簡単に

          一匹狼

          パレットの上で

          黒と赤 私の好きな組み合わせ 赤を支える黒が好き 黒で輝く赤が好き あなた達って、本当お似合いね  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ 赤は言った 「黒ほどイイ色はね、ないと思うの」 暗くて 地味で 目立たない それでいて 強烈で 一匹狼で 染まらない 「そんな子って、素敵じゃない?」 赤はその日も輝いた  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ 黒は言った 「赤はね、素敵な色だよ」 強烈で まっすぐで 美しい そして 人気者で

          パレットの上で

          静寂

          冷たい雨 冷たい風 冷たいコンクリート 冷たい窓ガラス 冷たい人