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【詩/詞】春夕立

春嵐の風にベランダ
冷えた音に浸した足
目を開けてそのまま
明日春晴れを
駆け抜けたい

淀む空気
記憶が霞んでいく
忘れれば都合もいい
不恰好なコートも
置いていけば格好がいい

それでも僕らが背負う全てで
この陽気に抗いたい
変わりたくても
変わりたくても
夜に忘れぬは

ひしめいている胸の鼓動だ
打たれたように朽ちた声
目を閉じてそのまま
増す大荒れで
叫んでいたい

麗らか陽だまり凡庸だ
消えゆく騒音 車道に掃除機
このままいっそ忘れたい
このわがままに溶け込みたい

それでも僕らは歩き出してみる
この想像に抗いたい
終わり近くとも
曲がりきれぬとも
春に淀まぬは

薄紫の花を仰いだ
歩道に迫る落とした影

春嵐の風にベランダ
冷えた音に浸した足
数えないでこのまま
明日春晴れを
駆け抜けたい



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