機械翻訳もAI翻訳も人間が自分の下僕のように使える環境を目指す~適正な対価を支払う
最近の翻訳業界を取り巻く状況、そして業界の将来について思うことを書いてみたいと思います。
🌸翻訳の未来について巷で言われること
機械翻訳、とりわけAI翻訳が出てきて翻訳業界界隈でなくてもよく耳にするのが、
「翻訳の仕事はなくなるのではないか」。
そしてこれに対するお決まりの回答が
「機械に代替される部分もあるだろうが、まだまだそのまま使うわけにはいかないから、少なくともしばらくは人間の手による翻訳は残る。」
本当でしょうか。
🌸人間翻訳者の役割はなくなるのか
個人的には、翻訳作業の大半が機械化されるのは時間の問題だと思っています。
ただ、最終的に、機械に責任を負わせることができない限り、翻訳の品質を保証するという役割だけは人間の翻訳者に残るだろうと思っています。
「ジョークとしてよく言うのは、土下座をして謝って責任をとるのは人間にしかできない・・・」(『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』堀江貴文著からの引用)
これに大きく頷きます。
そして、その場合、「責任をとる」資格がある翻訳者とは、品質を担保できる翻訳能力を備えていなければならないと思っています。本来は非常に高度なものが求められるはずなのです。
しかし、今現在、翻訳は機械でもできるからと単価が下がり続けるなか、そのような資格がある人のうち、どれだけの人が、何十年か後に翻訳をやっているのだろうかと不安視しています。
🌸機械と人間の位置づけはどうなるのか
翻訳の最終目的は、人間の手によるものであっても機械翻訳・AI翻訳であっても、本来は「高品質なものをアウトプットする」ことが最終目標であることに否定の余地はありません。
その目標に向かうにあたり、機械もAIも人間も、いわば手段でしかないわけです。
手段として考えた場合、日本でも2023年に使用人口が急速に増えたChatGPTなどは非常に優秀だと思われます。なぜなら、
「プロンプトさえ入れれば、文句もいわず、何度もやり直してくれるから」
です。そして、修正を重ねれば、求める品質に近づくのです。
人間の場合はどうでしょう。何度もやり直せと言われたら、嫌な顔をしますよね。疲れますし、プライドも傷つくでしょう。当然人間関係は悪化します。現実的にはなかなか言い辛いです。
その点、機械翻訳にせよAI翻訳にせよ、(機械やAIに感情があるか否かという問題はさておき)何度もやり直させるのに抵抗感はありません。
ただし、実務的な観点からいうと、何度かけ直してもコストが一律なプランがリーズナブルに利用できるのであれば、という条件付きですが。
したがって、何度もかけ直すことが非現実的な場合は、機械もAIも非常に硬直的なシステムとなり、人間と比較して大きなメリットがあるとは言い難くなってしまうかもしれません。
とはいえ、機械やAIのコスト面の問題を解決する方が、人間の感情の問題を解決するよりは容易に思えます。
そうなると、人間に残る役割は、機械翻訳やAI翻訳をコスパよく駆使する側にまわって、最後の正しさだけ保証する側にまわることではないかと思います。
🌸これからの時代、翻訳の品質担保のために一番大事なこと
「責任をもって品質を保証する」
そのようなことを、高い能力をもって、きちんとした対価をもらってできる「優秀な品質保証翻訳者」が将来も存在し続けていられる環境を整えることが大事です。
そのために、適正な対価が支払われる仕組みが非常に重要だと思っています。
翻訳のみならず、何においても、自分も適正な対価を支払う、むやみに値下げしない、肝に銘じて日々精進したいものです。
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