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13. 欲求を満たす喉の痣


【注意】自傷行為の描写を含みます。


ハル(海/尊)|女風で出会った私のパートナー。
シンジ|パーティーの主催者。作曲家。
かほちゃん|シンジのパートナー。職業女王様。
セナちゃん|ボーイッシュな赤髪の女の子。自傷癖あり。



セナちゃんは、いつも違うパートナーを連れてきていた。

骨ばった細い体に、ショートカットの赤髪と銀縁の眼鏡がよく似合うボーイッシュな女の子。


彼女は、自分の体を切りつけるのが好きだった。


腹も背中も脚も腕も、傷跡で赤く、撫でるとボコボコしていてとても美しい。

尊は嫌がったけれど、セナちゃんは時々私の目の前で手首を切って、ピンセットで脂肪を抜き取るところを見せてくれた。


私自身は自傷行為をしたことがなかったが、人が自分を傷つけているところを見るのは、なんというか少しハイになった。その人との繋がりを感じるからだと思う。



セナちゃんは、人の心を見透かすのが上手だった。


私が本当はこの会が好きではないこと、尊のことを本気で好きになりかけていること、嫌気が差しているのに嫌いになれないことを、知っていた。


1度だけ、ストレートに聞かれたことがある。



『ハルくんのこと、好き?』


そのときの『好き』は、

それはもう本気で、
本気で好きなのか、

という意味だったと思う。


それに、ただの疑問形でもなかった。
『好きなんでしょ』という確認だった。


私は、どうだろう、とごまかして笑ったけど、それは十分すぎるYESだったと思う。


セナちゃんとのセックスは、生きている実感を与えてくれる。
私は、その切れ長の瞳と、骨ばった身体が好きだった。

彼女は喉を噛むのが好きで、私の喉はそのたびに痣になって腫れる。トドメを刺されるみたいで、惚れ惚れする。

セナちゃんは、心底動物的に私を貪った。骨までしゃぶるなんて生やさしいものではなくて、噛み砕いて飲み込む勢いだ。

道具を一切使わないで感じる痛みと悦びは、深い交わりを感じさせてくれる。好きなセックスが同じなら、男だろうと女だろうと関係ない。


優しさなんて要らなかった。
がむしゃらに必要とされたかった。


『その様子だと、俺たちも同じセックスが好きかもよ。食べる方と食べられる方、どっちもイケる?』

シンジは私に保冷剤を手渡しながら、喉を鳴らして笑った。



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