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「ピースを埋める」2021.03.27 FC町田ゼルビア vs ヴァンフォーレ甲府 J2第5節マッチレビュー

前節の水戸戦は強い雨風のなか、0-3という悔しい敗戦。昨シーズンは一度崩れると立ち直るのに時間がかかった豆腐メンタルチームがどういう戦いを見せるか注目の集まった今節は、アウェイの地で甲府に1-0と苦しみながら勝利を掴んだ。

この試合の特筆すべき点は何といっても、安定の深津水本のCBコンビではなく、水本に代え高橋祥平を使ってきたことだろう。相手との嚙み合わせもあるが、高橋が起用されたことでチームの戦い方が良い方向に変化していったことは明らかだった。今節のブログでは、ここら辺をメインにしつつ相手の戦い方についても見ていきたいと思う。

スタメン

スタメン

ゼルビアは水本裕貴に代えて高橋を起用。トップ下に長谷川アーリアジャスールを置き、左SHに平戸太貴を置くという今年初の配置に。

甲府は3-4-2-1を用い、攻撃時には質的優位を発揮する泉澤仁を左サイドに開かせアイソレーションの状況を作り、守備時には5バックになるという練度の高い可変を見せた。

高橋祥平の起用によるチームの変化

ポポヴィッチ監督が試合後の会見で語ったように、高橋の持ち味は「ボールを持った時のクオリティー」。今シーズンからボール保持にも力を入れているゼルビアには欠かせない能力でもある。前節に悪い負け方をした中で、チームに刺激を与える意味もあったと思うが、ここで高橋を使ったところにこの試合に懸ける思いを感じた。

ここからは高橋を使ったことによる変化をいくつか紹介していきたい。

まずは髙江麗央のプレーエリアが前に移ったこと。これについては下記リンクを見てもらいたい。

リンク先の画像を見ると分かるが、明らかに今節の方が敵陣でのボールタッチが増えており、尚且つペナルティエリア手前の危険なエリアでプレーできていることが分かる。

続いては、中盤での人数が確保できるようになったことである。これも髙江の立ち位置が前に移ったことと大きく関係している。これによって佐野海舟にマークが集中することが無くなり、相手が的を絞りにくくなったため、体感ではあるが、前方へのパスがこれまでの試合に比べ多かった気がする。もちろん、海舟やアーリアといったターンで相手を剥がすことに優れている選手の存在もあるが、これも中盤の人数が多くなり、マークが分散したためであり、すべては高橋起用の賜物である。さらにはセカンドボールの回収もスムーズに行えるようになり、2次攻撃3次攻撃と続き前半の攻勢に繋がった。

あとは高橋の個人的な能力であるが、攻めのロングボールが蹴れることである。ボール保持を得意としない深津水本コンビはプレス回避の為に、いわば逃げのロングボールを使い相手にボールをプレゼントする場面が多かった。しかし、そこに高橋が割って入ることで、この試合の先制点のように相手の最終ラインの背後に落とすロングボールをオプションとして使えるようになったというのも高橋起用による変化だと思う。


自らバランスを崩した甲府

試合開始から甲府は3-4-2-1を採用してきたが、これは左シャドーに入った泉澤の質的優位を活用するために左右で非対称であった(右サイドで関口正大と奥山政幸の1対1を避けたかったのもあったか)。

甲府のビルドアップの段階からゼルビアは同数プレスに行き、且つ相手の最終ラインで最もボール保持を不得意としている左HVのメンデスへと誘導することでビルドアップを詰まらせることに成功したゼルビア。平戸を左SHに置いたのはこの同数プレスを成功させるためでもあったと思われる。サイドにアーリアを置くとプレスが緩くなってしまうので、プレスバックしてくれる平戸を置SHに置いたのはこの試合においては正解だった。

敵陣プレス

甲府が上手くボールを前に運べなかった理由として考えられるのは3バックの幅が狭かったため、1人で2人見れるという状況になっていた。DHの山田陸と中村亮太朗が縦関係になっており、最終ラインからのパスコースが限られていたため、プレスの的を絞りやすかったなどが挙げられるが、詳しくは甲府のレビュワーの方にお任せすることとする。

またゼルビアは泉澤対策として、泉澤にボールが入ると一気に2人3人が取り囲み前を向かせない、良い状態でボールを持たせないという相手が嫌がる動きが出来ていた。結果として泉澤の質的優位を使わせずに、ただ甲府が自らバランスを崩しただけとなり、ゼルビア側のポジティブトランジションにおいては甲府の配置がかなりガタガタになっていた。そのためゼルビアはフリーの状態でボールが持てたりパスを繋げることが出来た。

甲府は試合中に何度か配置を変えたものの、どれも泉澤をサイドに大きく開かせることは変わらず、泉澤にどうやってボールを届けるかを考えた配置換えだったため、このアンバランスさは変わることは無かった。


課題は潰せてきている

これまでの試合で浮き彫りになっていた課題が少しずつ解決されてきた。3節のヴェルディ戦の後半に再三突かれた、自陣のサイド奥深くでの守備においてSBが持ち場を捨てて出ていったとき、誰がそこを埋めるのかという課題に関しては、佐野髙江のCHコンビのどちらかが埋めるというのをこの試合はかなり意識的にやっていた。

埋める意識

次に攻撃時のチャンネルランと裏抜け。練習では昨シーズンから取り組んでいることは選手たちのコメントから伺えたが、これまでは出し手の技術不足により、決定的なシーンを作り出せずにいた。しかし髙江の位置取りが前に移ったことにより、髙江の配球能力がより活きるようになり、惜しいシーンを何度か作った。また、海舟へのマークが分散したことにより、海舟も得意のターンからの縦パスが見られ、オフサイドになったものの、62分の縦パスは思わず唸ってしまった。

最後は展開に合わせた戦い方である。この1点を守り切ると決めてからは森下怜哉を投入し、海舟をリベロの位置に置き、敵陣コーナーフラッグ付近で時間稼ぎをするなどハッキリとした戦いが出来ていて個人的には非常に良かったと思う。


試合結果

甲府 0-1 町田
得点者:3' 中島裕希

さいごに

思い切ってメンバーを変えた試合で結果が付いてきて良かったと思う。対3バックのプレスのかけ方もメンデスを狙った誘導の仕方も全員が共有して有機的に動けており、こういう戦い方が出来た試合にきちんと結果が付いてくることでチームとしてのまとまりやモチベーション向上に繋がると思うので一安心である。

やっと足りなかったところを埋めることができた感もあるので、あとはフィニッシュワークとカウンターを仕込むことが出来れば形になっていくのかなと思う。

まあ久しぶりに良い試合が見れて良かったと思います。


今節もお読みいただきありがとうございました。

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