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日本邂逅

5年ぶりに日本の土を踏んだ。5年前も10日ほどいただけだから、9年ぶりといってもいい。何か新鮮だった。新鮮だったのは私の方で、日本は変わっていないのかもしれない。ひとことで言うと、ここはいいところだということ。これから住みたい場所であるということ。こういう感じ方は初めてだ。

実家へ帰った。生まれた場所。育った場所。ああ、ここには、私の出発点がある。なつかしい匂い。鳥の鳴き声、蝉の声、夏の日差し、その間を駆け抜けるしずけさ。圧倒的な、しずけさ。

ああ、ここは、居心地がいいと思った。誰もいないが、何かがあたたかくそこにあると思った。それで十分とも。


両親は82歳で元気。畑を耕し、もりもり食べ、ぐっすり眠り、生活している。私は、この二人とあまりふかいつながりがない。元気でいてくれて感謝している。たのしい毎日を過ごしてほしいと思う。しかし、それ以上には近づけない。それでいい。それがいいのだと思う。


いま暮らしている、日本からはいろいろな面で程遠い地にいて、古い恋人を思い返すように故郷を想っている。あのしずけさと、深い出会いをした。昔は重苦しく感じたのだったろう。しかし今はちょっと違うのだ。不思議。あそこに、たしかに、私はいたのだ。

帰ろう。あの地へ。土へ帰る、月へ帰る、元いた場所へ帰る。そう、帰るのだ。私の原点へ。

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