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【MTG】謎デッキ紹介:鳥と 魚と 心強さと

【はじめに】

 環境の解析も一段落してきたかなと感じる今日この頃です。僕だけかもしれませんが、最近はメインから《梅澤俊郎の生涯》を採用した黒いデッキも見掛けるようになり、環境全体でアグロ系に強い調整が試されているようにも思えます。また、他にも《危難の道》や《兄弟仲の終焉》などの軽い範囲除去にも期待が懸かっているようで、既にアグロが結果を出しにくい状況になりつつあるのではないでしょうか。
 前回の記事で環境最安定は寓話デッキ、そして寓話デッキに強いデッキの中でも最も理想的なのはエスパー・レジェンズであると述べましたが、現に最近の大会では、これら二大勢力の上位入賞が増えているようです。

 まあ偉そうに言ってますが、環境初期に流行ったアグロが徐々に停滞を見せるというのは王道の流れではありますし、同じように予想されていた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 さて、そんな今日ご紹介するのは、またしてもメタとは無縁の謎に満ちた謎デッキになります。環境初期の実験期間が終了したことで、最近はオリジナルデッキと遭遇することも減り、娯楽としても勝率としても少し寂しくなってきてしまいましたが、今回も試行錯誤=楽しいの精神でめげずにやっていきたいと思います。

 毎度のことですが、今回もそこそこ長い記事になりますので、結論だけ知りたいという方は調整段階からお読みいただければ問題ないと思います。

【設計段階】

 実は、僕は謎デッキを作るに当たり、最新セットのカードを必ず使用するという縛りを設けています。これは設計段階において指針となる場合もありますが、ONEに関してはになることも多いです。と言うのも、ONEには毒や油のような独自性の強いメカニズムを持つカードが多く、そのシナジーを単純に突き詰めると、どうしてもデザイナーズデッキのようなものになってしまうのです。また、増殖に関してもPWを含めて既にあらゆる形式で試されているため、登場から1ヶ月以上が経った現在では全く新しい利用法を見つけることが困難になってきています。
 ガチデッキの増加、そして謎デッキ的な余地の縮小。数多のデッキが開発段階で没となり、正直それらの供養だけで数本の記事が書けてしまいそうな勢いです。もう寓話を使ってしまおうかとも思いましたが、今回やっと紹介できそうなものが仕上がりました。
 では、まずはキーカードから。

継続的増殖が可能な逸材

 こちらの《かき鳴らし鳥》は2マナ1/1とスタッツは貧弱ですが、飛行とサボタージュ能力を兼ね備えており、飛行や到達の少ない現環境では意外と厄介なクリーチャーと言えるでしょう。そもそも、増殖そのものが拡張性の高い能力ではあるため、当初から注目はしていたのですが、スタンダードで活躍するクリーチャーの特徴として、出た時、あるいは出たターンに仕事をするというものがあり、その意味で言うと《かき鳴らし鳥》は環境との相性が悪いカードとも言えてしまいます。
 しかし、環境で活躍しているクリーチャーの中には、出た時に仕事をしないものもあります。その代表例が《傲慢なジン》です。ジンは出た時の仕事が無い場合に必要とされる破壊耐性も持っておらず、立ち位置としては今回の鳥と同じです。では、何故そんなジンが活躍しているのか。
 その理由は当然、それを守る他のカードにあります。まあジンの場合は常在型能力も含めての話になるため、見方によっては出た時点で仕事をしていると言えなくもないのかもしれませんが、クリーチャーを打ち消しや回避呪文で守るという方法は、今回の鳥に対しても応用できるでしょう。
 幸い、《かき鳴らし鳥》もジンと同じ青のクリーチャーなので、その辺りのオプションは比較的自由に運用できそうです。となると、次に欲しいのは増殖と相性の良いカードになります。

最初から+1/+1カウンターを持っている子

 現在、増殖の利用法として最も一般的なのはPWの忠誠度カウンターを増やす方法でしょうか。勿論、毒や油とも相性は良いですが、それらには独自のカウンター供給手段があるため、ハックと呼べる程のものでもないような印象です。
 どちらにしても、それらは既に試された増殖であり、デザイナーズデッキ的で謎感は薄いです。つまり、それら以外でカウンターというキーワードを持つカードを探すことになる訳ですが、やはりカウンターと言ったら真っ先に思い付くのは+1/+1カウンターではないでしょうか。
 こちらの《鉄の弟子》は1マナという圧倒的な軽さに加え、+1/+1カウンターが置かれた状態で戦場に出るため、すぐに増殖の恩恵を受けられるという利点があります。また、このクリーチャーは死亡時に自分の上に置かれているカウンター全てを他のクリーチャーに譲渡することができ、これは疑似的な破壊耐性と言えるでしょう。

 1マナの《鉄の弟子》に2マナの《かき鳴らし鳥》と、これまた低レアリティのカードを救うみたいなテイストになってきましたが、このまま増殖アグロとして進めるにしても、流石に彼らの火力だけでは心許ないように思えます。
 《かき鳴らし鳥》を出発点にしたことで自然と忘れていましたが、このような+1/+1カウンターの増殖が可能なアグロというのはグルール・アグロとして既に試されているものでもありました。そちらと比較しても、単純な戦闘力が圧倒的に不足しているのは一目瞭然です。
 そこで、ここからはグルール・アグロとは別の方向で、増殖アグロとして如何に火力を出すかという研究にシフトしていきました。

武勇をハック

 《剛胆な敵対者》は2マナ3/1絆魂と単純な戦闘力の時点で一定の活躍が期待できそうですが、多重疑似キッカーとでも呼ぶべき全体強化能力が搭載されています。流石は神話レア。
 この武勇カウンターというものですが、これも勿論、増殖で増やすことが可能です。つまり、1個でも武勇カウンターがあれば、増殖するだけで本来は2マナ必要な全体強化を増やし続けることができるのです。
 また、全体強化能力は既に自分がクリーチャーを展開している状況下では出たターンの仕事になり、ある程度の即効性はあると言えるでしょう。
 タフネスが低く、除去に弱いという弱点はありますが、そこは鳥と同様に最終的には打ち消しや回避呪文で守るという方法が使えそうです。

 この時点でアゾリウスかつ増殖を利用したアグロという着地点が見えてきた訳ですが、グルール・アグロとの差別化打ち消しや回避呪文の利用という観点から、最終的にはフラッシュやテンポ的な性質を加える必要もありました。
 そこで思い付いたのが、こいつです。

インスタント・タイミングに魚2匹

 フラッシュを作る上で最も重要なのは打ち消しではなく、それと一緒に構えられるカードだと僕は思っています。
 この《風変わりなペット》はインスタント・タイミングにブロックされない魚2匹を同時展開することができる風変わりなカードです。また、既に自分のクリーチャーの上にあるカウンターと同じカウンターを魚に乗せるという今回のテーマにピッタリな能力も備えています。
 つまり、既に《鉄の弟子》がいれば、即座に1/1と2/2のブロックされない魚が出現し、カウンターを持つクリーチャーが増えることで増殖の効率も倍増します。加えて、魚の複数展開は全体強化を効率的に運用するという意味で《剛胆な敵対者》とも好相性です。流石に武勇カウンターを魚に乗せても意味はありませんが、ここまで紹介した全てのカードと相性が良いという奇跡の1枚です。

 1マナ、2マナ、3マナ、そして多重疑似キッカーの利用を見越すと4マナの動きさえも決定し、ここからは本格的にデッキとしての形を整える段階に移行します。

【開発段階】

 ではまず、開発段階でオミットされたカードから。

放浪皇
 フラッシュかつ+1/+1カウンターを乗せられる非常に理想的なカードでしたが、少し重いという点と除去や継続的な展開よりも自分のクリーチャーを守る方が良い場合が多かったため、今回は見送りました。

血清の罠
 バウンス+増殖ということで試してみましたが、2マナというのが微妙に噛み合いが悪く、除去よりも自分のクリーチャーを守りたいという場面が多かったため、今回は見送りました。

惑乱のいかさま師
 恐らく、名前だけ聞いても分からないという方が一定数いらっしゃると思いますので、画像も乗せときます。

起動型謀議

 1マナかつタフネス2で毒性アグロに対する受けが期待され、起動型謀議は構えとカウンターを両立できます。しかし、ほとんどの場合で1マナ1/2のバニラで終わってしまい、有効活用はできませんでした。

 とは言え、特に《放浪皇》はカード単体としてどう考えてもパワーが高いため、今後も試される可能性は高いです。

 次は開発段階で発見されたキーカードを紹介していきましょう。

+1/+1カウンターと回避
増殖と打ち消し

 先程から何度も述べていた自陣を守る打ち消しと回避呪文ですが、今回はこちらの2枚を採用しました。
 《とんずら》は1マナという圧倒的な軽さに加え、+1/+1カウンターと回避を両立しています。青単テンポでもそこそこ使われていたイメージのある1枚ですが、今回のデッキにとっても正に理想的なソリューションと言えるでしょう。
 《不完全を拒絶せよ》は3マナの確定カウンターに加え、条件付きではありますが同時に増殖も可能です。3マナは《風変わりなペット》と一緒に構えることができるため、そこまで動きを硬直化させずに運用することができそうです。

青敵対者

 こちらは《剛胆な敵対者》と同じ敵対者サイクルのカードで、2マナ2/1に瞬速飛行と、やはり通常の戦闘力の時点でそこそこ優秀ですが、多重疑似キッカーによってフェイズアウトと+1/+1カウンター付与が可能です。
 正に今回のテーマに関係する能力をこれでもかと詰め込んだ一石三鳥ぐらいのカードと言えるでしょう。

敵対者と同じMIDから

 《農家の勇気》は一時期の白単アグロやヒロイックなどで使用されていたイメージがあるカードですね。最初は+1/+1カウンターを手軽に付与できるカードとして試してみたのですが、実際に使ってみると、3マナあるけど構えるのは2マナで十分という時に余分なマナを活用したり、赤単相手の時に白敵対者に警戒を付与したりと意外と小回りの利くカードでした。

【調整段階】

 それでは、現在も調整中のデッキを紹介していきましょう。

エキゾチック・カウンター

デッキ
4 かき鳴らし鳥 (ONE) 72
5 島 (THB) 251
4 農家の勇気 (MID) 24
5 平地 (THB) 250
4 とんずら (SNC) 62
4 鉄の弟子 (NEO) 248
4 風変わりなペット (SNC) 185
4 剛胆な敵対者 (MID) 25
4 幽体の敵対者 (MID) 77
4 不完全を拒絶せよ (ONE) 67
1 皇国の地、永岩城 (NEO) 268
1 天上都市、大田原 (NEO) 271
4 アダーカー荒原 (DMU) 243
4 さびれた浜 (MID) 260
4 金属海の沿岸 (ONE) 258
4 秘密を掘り下げる者 (MID) 47

サイドボード
4 盾、構え (DMU) 35
3 放浪皇 (NEO) 42
2 呪文貫き (NEO) 80
2 否認 (STA) 18
2 軽蔑的な一撃 (SNC) 39
2 血清の罠 (ONE) 68

もし宜しければ……。

 デッキ名はエキゾチック・カウンターです。エキゾチックは《風変わりなペット》の英語名《Exotic Pets》から。カウンターは打ち消しの英語訳であるCounterと+1/+1カウンターなどのカウンターのダブル・ミーニングというやつです。
 開発段階でオミットされた《放浪皇》と《血清の罠》ですが、調整段階でサイド要員として復活しました。まあ《放浪皇》に関してはサイドに入れることに意味があるというより、BO3での試験運用時に対照実験のようなことを行う目的で入ってる感じです。未練たらたら。

1.実際の試合

VS赤単 相性:△
 《剛胆な敵対者》の絆魂が刺さると後手からでも勝てますが、単純にアグロとしてのパワーで負けているため、苦手な方ではあるでしょう。

VSエスパー・レジェンズ 相性:△
 《スレイベンの守護者、サリア》が最速で来なければ戦えます。まあ完全にカードの質で負けているため、先手+最速サリア無しでも厳しいことに変わりはありませんが……。

VSミッドレンジ系 相性:○
 そこそこ善戦しました。まず単体除去は回避が刺さり、税血や寓話を展開されても飛行やブロックされないクリーチャー陣で容易に突破可能です。

VSコントロール系 相性:△
 PWコントロールは得意ですが、《精神接合器》系のコントロールには耐えられてしまう場合が多かったです。正直ミッドレンジとコントロールに対しては得意であると言い切りたかったのですが、アグロ系と戦うことも考えると打ち消しに寄せ切る訳にもいかず、なんとも歯痒いです……。

2.試合を通じて

 今回の感想と致しましては「ハマると楽しい」という感じです。今回も土地を除くとメインには敵対者しかレアが無いため、理想的な組み合わせによるシナジーが発揮されないと容易に破綻します。
 しかし、武勇カウンターを増殖させたり、ブロックされない魚を全体強化したりと夢のあるデッキではありますし、フラッシュしつつカウンターを溜める動きが《塩水生まれの殺し屋》っぽくて少し懐かしかったです。
 一応、調整段階までは漕ぎ着けましたが、メインのデルバーに関しては自分でも違和感がありまして、本当は《幽体の船乗り》のような1マナの瞬速持ちが良かったのですが、そのようなカードは無さそうだったので、最終的には妥協してしまいました。やはり現環境でフラッシュを組むのは非常に難しいようです。
 敵対者はMIDの頃からプレイしている方なら意外と揃っていそうなカードなので、構築のハードルもそこまで高くないと思っています。そうでない方は頑張って組む必要性は皆無ですので、ご注意を。
 今度の展望ですが、《かき鳴らし鳥》自体には未だに広大な余地がありそうなので、これからも研究していきたいと思っています。というか謎デッキ初回の窃盗鳥と言い、どうやら僕は鳥に惹かれる性質があるようです。

3.まとめ

謎指数:8(10段階評価)

★増殖の新しい形!
★シナジー強めの快楽物質ドバドバ系!
★鳥に魚に鉄屑と謎感は抜群!
★やはりレアリティの差を思い知らされることも……。

【さいごに】

 今回も長々と語ってしまいましたが、ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
 前回のスタンダードを漠然と語る記事ですが、やはりああいうテイストの方が伸びが良いみたいですね。とは言え、文字数こそ謎デッキ記事の方が多いですが、ゼロから話題を作って話すというテイストは体系的に進行するのが難しいので、労力的にはトントンな感じです。
 また何か話題があれば語っちゃう系の記事もやりたいですが、僕はあくまで謎デッキ研究員として、オリジナルデッキと試行錯誤の楽しさを広めていきたいという野望が……。
 と思っていたのですが、noteで活動されているプレイヤーはオリジナルデッキをしっかり組んでいる方が多いようで、正直、日々勉強させてもらっています。僕も負けてられないですね……。
 それでは、また次回の記事で。


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