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【MTG】謎デッキ紹介:奥義発動!!

【はじめに】

 WBC優勝で日本中が湧いている今日この頃です。僕の方は相も変わらず謎デッキ研究……ではなく、実はそこまで野球好きではない僕も、今大会は何故か面白くて、全試合ではありませんが、ほとんどの試合を観戦させていただきました。いつものノリですが、やはり野球にもMTGと通じるものがあるように思えますね。
 まあそれは置いといて。今回は前回の記事で予告していた4Cの謎デッキについて話していこうと思う訳なのですが、既に前回の記事で発想という面では解説してしまっているため、今回はスッキリとした内容になってしまうかもしれません。内容自体もいつものシナジー重視ではなく、どちらかと言えばグッドスタッフ的な感じですし。決してWBC観戦の片手間で調整したからとかそういうことではありません。
 一応、前回の記事のリンクも張っておきますが、未読の方でも今回の記事だけ読んでいただければ問題は無いと思います。

 それでは、前置きはこの辺にして、早速やっていきましょう。

【設計段階】

 謎デッキの出発点と言いますと、使用率が極めて低い謎カードというのが通例ですが、今回に関しては前回のセレズニア・ミッドレンジの試験運用で得られた幾つかのコンセプトから着想を得ています。

1.グッドスタッフ的な構築で安定感を

2.ランプ戦術による脅威の早期展開

3.緑救済

 このセレズニア・ミッドレンジというのは、白単ミッドレンジを基に独自の改修を施した亜種デッキであり、オリジナルデッキではあるものの、原種である白単ミッドレンジの『シナジーよりもカード単体』というグッドスタッフ的なコンセプトを継承しています。このコンセプトはスタンダードと非常に相性が良く、比較的容易に安定した勝率を出せるのですが、単体として強いカードというのは謎力が低く、謎デッキ研究員の僕としては敬遠してきたものでもありました。
 しかし、今回に関しては土地を伸ばすという緑特有のメカニズムを救済する意味も含まれているため、そこを軸に謎指数を高めていければ、史上初の緑が絡んだ謎デッキを作れるのではないか、と思い、思い切ってグッドスタッフ・コンセプトを出発点にしてみました。

土地or増殖

 土地を伸ばすというキーワードを基にデッキ作成を始めた僕が、最初に目を付けたのが《球層の拡大》です。
 主に土地を2枚展開する目的で使用されるカードですが、このカードの土地加速方法はライブラリーのトップ6枚を確認し、その中から最大2枚の土地を展開するというもので、基本土地などの縛りが無い分、トップのラインナップ次第で不発になる可能性があります。
 とは言っても、土地27枚ぐらいであれば、そうそう外れることはありませんし、不発時には不発分だけ増殖を行えるという最低保証のような能力も搭載されているため、ほとんどの場合で基本でない土地も展開できる利便性の方が大きいです。
 しかし、この最低保証能力を単なるサブにするのは、若干もったいないような気もします。と言うのも、1枚で連続2回の増殖が行えるカードというのは意外と稀少で、更に言うと、この手のカードの弱点である土地が揃い切った中盤以降での活用法という面で、この2回増殖は非常に強力に作用する可能性があるからです。
 つまり、ランプデッキかつ増殖を活かせるデッキで使えれば、この上ない戦力になるということです。

奥義は無いが、-3の時点で派手

 そこで僕が注目したのがPWでした。PWは場に残れば残るほど強力に作用する性質を持つため、ランプ戦術による早期展開という今回のコンセプトとも相性が良く、PWの忠誠度を増殖で増やすという戦術も既に何度も試されており、こちらも一定の価値があることが判明しています。
 また、4マナある状態で《球層の拡大》を撃つと、次ターンには最大で7マナまで扱えるため、7マナの現環境最重量PWを5ターン目に唱えることも可能です。
 ということで、今回は《無形の処刑者、ケイヤ》を使ってみることにしました。7マナPWと言えば《向上した精霊信者、ニッサ》という案もあるのですが、単色PWでは《球層の拡大》を有効活用できず、加えて能力も単色寄りなため、ほとんどの場合でケイヤの方が好相性でしょう。
 ケイヤは奥義という奥義を持っていないPWですが、-3の能力は相手のクリーチャーやエンチャントの質次第で下手な奥義よりも強力に作用する可能性があるため、その弾数を増やせるという点だけでも増殖との相性は良いと言えるでしょうし、そもそも7マナにもなると出た時点でゲームに多大な影響を与えることができるため、増殖を重ねて無理に奥義まで行こうとする必要もないように思えます。ケイヤに関しては呪禁までありますし。

 さて、ここまででアブザン・ランプという着地点が何となく見えてきた訳ですが、実を言うと、アブザンかつ《無形の処刑者、ケイヤ》などのPWを使ったデッキというのは、過去の没デッキの方で既に試しているものでもありました。
 そのデッキはコントロール的なコンセプトだったのですが、ドローの機会が非常に少なく、序盤のマナスクや終盤のマナフラが頻発したことで没になったのです。今回のアブザン・ランプも、このままマナ加速やPWを詰めるだけでは同様のエラーが発生する可能性は十分にあり、このまま開発段階に移行するのは危険であると、僕は判断しました。
 しかし、アブザンを構成する白、黒、緑の3色は、どれもドローが得意な色ではなく、特にルーティングのような手札の質を高める手軽な手段を持っていません。残された手段は、更なる多色化しかないでしょう。

ランプ戦術もドローも可能
マナ加速かつ手札の質を高める

 こちらの《日没を遅らせる者、テフェリー》と《セレスタス》はランプ戦術と手札増強の両方が可能な理想のパッケージです。寓話を入れた白黒赤緑の4Cにしてしまうというのも一応は考えたのですが、今回はPWがメインのデッキであり、コピー能力を持て余してしまう可能性があるため、こちらの方が圧倒的に相性は良いでしょう。
 色としては白黒青緑の4Cになってしまいますが、そもそも現環境は土地基盤が強固で、そこに《セレスタス》のような好きな色のマナを出す要素を加えているため、最終的には特に気になりませんでした。

 とは言え、この時点では仮デッキも完成していなかったので、まだ4Cというものに対して半信半疑でした。
 確かに、4Cで各色の美味しい所を享受できれば、デッキのパワーと対応力は飛躍的に向上しますが、当然のことながら、事故率というのは多色化すればするほど高まります。
 加えて、ランプデッキは序盤に土地加速を行う都合上、仕掛けの早いデッキに弱いという特性を持ちます。更に4Cであれば、三色土地やダメランを使わなければならないため、よりアグロ耐性というものを意識する必要があるでしょう。
 つまり、ここからの開発段階では、ランプデッキとしてのパワーを上げるのは勿論のこと、事故率を如何にして下げ、アグロ耐性を如何にして上げるかという点を考慮する必要があるという訳です。

【開発段階】

 では、4Cランプデッキとして最も避けたい事故というのは一体どんなものなのでしょうか。そもそも、今回のコンセプトはランプによる脅威の早期展開にあり、相手よりも迅速かつ大量にマナを出せる状況を作り出さなければなりません。つまり、序盤で土地が詰まってしまうなんてことは以ての外ということです。

壁+土地安定+時々増殖

 こちらの《伝染病のヴォラック》は、そんな序盤の土地事故を回避する目的で採用した1枚でした。ONEリミテッドの方で最強コモンの一角と目されているカードですが、構築の方でも結果を出してくれました。
 3マナ3/3の時点でアグロに対する壁として十分ですが、本編は出た時の能力で、ライブラリーのトップ4枚の中から土地1枚を手札に加えることができます。これは《球層の拡大》と同様にトップのラインナップ次第で不発になる可能性もありますが、これまた《球層の拡大》と同様に不発の場合は増殖が可能です。
 土地枚数が多いデッキ+序盤であれば、トップ4枚でも事故率は低く抑えられますし、中盤では展開したPWの忠誠度を操作したり、ランプデッキのようなマナが豊富なデッキであれば、終盤に三色土地を釣ってサイクリングでスペルを探るなんて芸当もできます。
 土地を安定させるだけなら他にも色々と選択肢はありますが、今回のデッキに関してはヴォラックが最適解と言っても過言ではないでしょう。

 しかし、ヴォラックだけで全ての事故をケアした気になるのはあまりに早計です。ヴォラックは確かに優秀ですが、その土地サーチはランダム性が伴うもので、任意の色を確保するような運用は困難と言わざるを得ません。
 そう、次に回避すべき事故は色の事故という訳です。如何に土地基盤が優秀でも、4Cにもなると毎回バランス良く展開するのは難しいですし、仮に色が揃っていてもダメランの濫用は避けるべきでしょう。

マナ・クリーチャー界、期待のホープ。

 そこで採用したのが、こちらの《硬化した屑鉄喰らい》でした。既にジャンドやグルールなどで活躍している優秀なマナ・クリーチャーですが、改めて彼の性能についても触れていきましょう。
 2マナのマナ・クリーチャーということで、タップすることで好きな色のマナ1点を加えられる伝統の能力を備えているのは勿論のこと、2マナでありながらタフネスは3というマナ・クリーチャーとして恵まれたスタッツを誇ります。まあ流石に《切り崩し》は喰らいますが、《火遊び》では墜ちませんし、アグロデッキに対しては最序盤のブロッカーとして役立ちます。
 加えて、タップ状態になる度に墓地からカード1枚を追放できる墓地対策能力も搭載しており、それによって油を重ね、最終的に+3/+0の修整も受けられるという非常に多機能な1枚となっています。
 BO1のような墓地対策が取りにくいゲームで、このついでに墓地対策が強力なのは《墓地の侵入者》で既に判明しており、色安定+マナ加速のおまけとしては十分すぎる程でしょう。

 ヴォラックと屑鉄喰らいは事故回避に加えてアグロ耐性を上げることもできるという正に理想の2枚で、序盤はこれらが出れば良いため、土地の調整としては緑に軸足を置くような調整が可能になった点も評価できます。

【調整段階】

 それでは、現在も絶賛調整中のデッキリストを見ていきましょう。

4C増殖ランプ

デッキ
2 地底の大河 (BRO) 267
1 見捨てられたぬかるみ、竹沼 (NEO) 278
4 硬化した屑鉄喰らい (ONE) 158
4 伝染病のヴォラック (ONE) 164
4 球層の拡大 (ONE) 168
2 裏切りの棘、ヴラスカ (ONE) 115
4 スパーラの本部 (SNC) 257
1 無形の処刑者、ケイヤ (ONE) 205
1 皇国の地、永岩城 (NEO) 268
2 永遠の放浪者 (ONE) 11
2 完成化した賢者、タミヨウ (NEO) 238
4 ラフィーンの塔 (SNC) 254
1 天上都市、大田原 (NEO) 271
2 アダーカー荒原 (DMU) 243
2 砕かれた聖域 (VOW) 264
1 耐え抜くもの、母聖樹 (NEO) 266
2 日没を遅らせる者、テフェリー (MID) 245
2 シェオルドレッドの勅令 (ONE) 108
2 喉首狙い (BRO) 102
2 魂の仕切り (BRO) 26
3 死天狗茸の林間地 (VOW) 261
3 草茂る農地 (MID) 265
3 ヤヴィマヤの沿岸 (DMU) 261
2 セレスタス (MID) 252
2 ヴェールのリリアナ (DMU) 97
2 放浪皇 (NEO) 42

サイドボード
2 未認可霊柩車 (SNC) 246
2 告別 (NEO) 13
2 悪意ある機能不全 (NEO) 110
1 無形の処刑者、ケイヤ (ONE) 205
2 呪文貫き (NEO) 80
2 羅利骨灰 (DMU) 183
2 強迫 (STA) 29
2 沈黙を破る者、スラーン (ONE) 186

気に入っていただけると嬉しいです。

 名前は4C増殖ランプです。いつもより平凡な名前ですが、勝率的には過去の謎デッキの中でも1、2を争います。
 実は今回のデッキは仮デッキから大きな変更点が無く、開発段階にオミットされたカードというのもありませんでした。まあ流石に枚数の調整などはありましたが、やはりグッドスタッフということもあり、形にするの比較的簡単でした。
 それと、今回の土地調整は控えめに言って神調整でした。まあ数十回程度の試験運用を経た時点での感想ではありますが、このデッキでは2ターン目にアンタップ・インの土地が欲しい場面が多いのですが、絶妙なタイミングでダメランや魂力土地をツモれるような調整が成されています。
 そのため、今回のデッキに関してはコピーの際に土地を改変するのは避けた方が良いと思います。マナ面だけを考慮すればダメランの枚数を増やすという改修案もありますが、ライフ面も含めた総合的な安定性で言うと、この調整が最適だと思います。いつもあんまり自分の調整を信用していない僕が言っているので、これは信用して良いと思います。

1.実際の試合

VS赤単アグロ 相性:〇
 相性の悪い相手と予想していましたが、意外と展開が間に合うことが分かりました。また、PWが攻撃を吸ってくれるため、実質的にPWの忠誠度の分だけライフゲインしているような感じでした。

VS青単テンポ  相性:
 
こちらも相性が悪いと予想していましたが、当初の想定よりも健闘することができました。大量のマナから重量級のアクションを連続で叩き付けることで、打ち消しの上から捲るなんてこともできます。

VSエスパー・レジェンズ 相性:〇
 サリアが来なければ終始有利です。来たとしても今回は調整が上手いからか解答を引き込む確率が高く、苦手という感触はありませんでした。

VSミッドレンジ系 相性:△
 こちらが4、5マナのPWを展開しても返しに《絶望招来》され、対処されつつドローもされるなんて最悪の展開になると、ゲームの流れを再び引き込むのは困難です。また、複数のPWで有利な盤面を築いても、《兄弟仲の終焉》で滅茶苦茶にされてしまう恐れがあるため、嫌な予感がしたら忠誠度を調整しておきましょう。

VSコントロール系 相性:〇
 PWを複数展開できれば捲られることはありません。しかし、その前段階で打ち消しをピンポイントに刺されると、リソースで追いつけなくなることもあります。

2.試合を通じて

 感想と致しましては「そりゃ強いよ」という感じでしょうか。やはりグッドスタッフ・コンセプトにハズレはありませんね。
 今回はシナジーを重視していないデッキでしたが、例えば、屑鉄喰らいから3ターン目に《球層の拡大》を唱え、4ターン目にケイヤをドロップするような凄まじい動きも可能ですし、《裏切りの棘、ヴラスカ》の奥義も十分に現実的なものとして機能し、毒9個を乗せてヴォラック増殖で勝利なんてこともありました。そのため、派手さという意味では、過去の謎デッキと遜色は無いように思います。
 ただ、訳の分からないシナジーで奇襲するデッキではないため、先手後手に左右される割合が大きくなったのも事実で、プレイ感は普通の環境デッキとそこまで変わらないかもしれません。
 PW陣では《放浪皇》を2枚採用しており、これは謎指数を下げる要因になっていますが、まあそれだけガチで勝てるように調整しているということなので、見逃してくれると有り難いです。
 また、今回のデッキでは《完成化した賢者、タミヨウ》が非常に良い働きをしてくれており、それこそ《放浪皇》や《ヴェールのリリアナ》を墓地からコピーしたり、敵の動きを止めつつ忠誠度を上げたり、使ってみると意外と厄介なカードなんだなと思いました。
 今後の展望としては、土地の調整が完璧に近かったため、この状態から大きく改修する予定はありませんが、このランプデッキの骨組み自体は緑に依存している面が強いため、緑が含まれていれば他の色の組み合わせでも応用できる可能性があり、その辺りを探る形になりそうです。

3.まとめ

謎指数:5(10段階評価)

★狙い通りの安定した勝率!
★4C故のパワーと対応力!
★増殖やランプで派手な動きも可能!
★謎ソムリエ的には物足りないかな……?

【さいごに】

 結局いつも通りのボリュームになってしまいましたが、最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
 この記事を書いている間に、なんと新セットのスポイラーが本格的に始動らしく、「え、もう!?」と思ったのは僕だけではないはずです。そんなこんなで、そろそろ新カードの話も始めていこうかなと思っています。
 それでは、またの記事で。

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