あゝ、むくつけき四畳半
『四畳半神話体系』 森見登美彦 読了レビューです。
文字数:約1,000文字 ネタバレ:一部あり
※ ヘッダー画像左は単行本版、右が文庫版
・あらすじ
あのときこうしていれば、という後悔は尽きることがない。
意気揚々と、あるいは半信半疑で決めた選択が「私」の人生を振り回す。
されど始まりは四畳半の奇妙奇怪な物語、ここに開幕──。
・レビュー
明鏡国語辞典によると「むくつけき」の意味は、気味が悪くて恐ろしい、粗野でむさくるしい、とのこと。
何度も繰り返し登場する主人公「私」の下宿が四畳半であり、本作に収められた最終話「八十日間四畳半一周」では、文字通り80日間をそこで過ごす。
詳細を語ることは控えるが、歩き回っても数秒で足りるはずの四畳半において、よもや80日を過ごすなど狂気の沙汰である。
しかし主人公の選択によってそれは現実となり、そうならなかった世界とは明らかに異なる進展をするかと思いきや、最終的には同じような結末へと流れ着く。
注意せねばならないのは、あくまで「同じような」という日本語が得意とする曖昧さであり、読者諸兄においては目を皿のように、ときに目薬など使用しながら読み進めて頂きたい。
ありがたいことに同じ経過を辿る部分もあるため、ここは前にも見たぞ、と感じたなら読み飛ばしても構わぬであろう。
ちなみに当レビューの文体は本作における模倣であり、より濃いものを所望されるのであればデビュー作『太陽の塔』を推薦する。
小生のレビューもあるので、興味があれば一読してみては如何だろう。
すべての選択において悪友である小津が絡んでくるのは、彼の言うところによれば「運命の黒い糸」により結ばれているためだそうな。
始めこそ何を戯けたことを抜かすのかと呆れ、されど言葉通りになってしまう世界に眉を顰め、最後には万歳三唱をするのも吝かではないと思ってしまう。
主人公が想いを寄せる黒髪の乙女こと明石さんは、本作においては外野席に収まる小動物に過ぎない。
運命の相手こそ小津であり、最終話においては主人公の彼に対する見方が激変する。まさしく艱難辛苦からの驚天動地、哲学者ニーチェによれば「神は死んだ」である。
ここまで記述してきて肝心の内容が定かでないことは明白であり、本レビューに期待していた殊勝な方には申し訳ないが、私には荷が勝ち過ぎたようだ。
されど私をこのような行いに駆り立てる魔性、はたまた頭のおかしさを喚起することだけは確かである。
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