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あげます・ください・たのしんで

【文字数:約1,000文字】

 すこし前に不用品あげます、くださいの掲示板から、ある人に連絡を取ったことを書いた。

 今回はその人と実際に会った顛末だ。

 提案された日時に了解して、当日になって現れたのはイメージに近い感じの人だった。

 自転車で日本を旅したいのに、それを他者から譲ってもらうことで叶えようとするのは、おそらく無謀と言って間違いない。

 貧弱な装備で旅に出る以前の話であり、目標だけは高めに設定するタイプだろうと推測する。

 実際に会う前、私と同じように連絡を取った人から自転車を「借りられた」と返信があったけれど、それは旅の用途に耐えないロードバイクだった。

 その点を指摘していたにも関わらず乗ってきて、当然こちらで用意した道具類は付けられず、私の努力や時間はムダになった。

 とはいえ、そうしたものも含めて話してみたいと思ったので、私としては完全にムダとは思っていない。

 ◇

 かなりの時間を要する旅をしたいというくらいだし、てっきり学生かと思ったら社会人で、教員資格を持っているらしい。

 旅に出て自分探しをするのではなく、迷える子供たちを導くのが正道だろうけれど、わざわざケチをつけるようなことは言わない。

 乗ってきたロードバイクについての知識もなく、そのあたりの話を混ぜながらやり取りをしていくと、過酷なキャンプ引率をして興味が湧いたとかなんとか。

 「それ、つながってます?」という疑問を胸に留めながら話を聞き、ひとまず借りたロードバイクで走る練習をするそうだ。

 当初の自転車旅からスケールダウンした感がハンパない。

 それでも1人の自転車乗りが誕生するなら、可能な限り手を貸したい。ある程度の悟りを得た自転車乗りとは、そういう生き物なのだ。

 旅用のものは付けられないため、ついでに持参した小物類を渡し1時間ほどで解散した。

 自転車旅をする計画は維持されるとのことながら、私の見立てでは実現しないと思う。動機の純あるいは不純と関係なく、「飽きる」ような気がする。

 借りたからにはロードバイクに乗るだろうけれど、自転車旅には日帰りツーリングと異なる困難があり、物好きじゃないとやってられない。

 キャンプ経験ありなのは見所として有望だと思いつつ、

「私のいとこの子供の〇〇くん、中学受験するんですって」

 という話を聞くような気分であり、合否とか別に気にならない。

 旅に出るならもちろん応援するけど、辞めたところで非難する気もない。

 過去に自転車旅をしていた人間は、とりあえず安全に楽しんでくれれば、それでいいと思った。

なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしますか?