魔を払い福を招く土神
【文字数:約1,000文字】
年が明けた第9回「おたからさがし」もキノコ特集だ。
地面が凍る冬の間は見つけられないし、砂浜で拾ったものも溜まっているから交互にできたらと思いつつ、記事にしたくなるのがキノコの魔力だ。
鳥居が赤いのは魔を払い、神域と俗世を切り離すためらしいけれど、残念ながら赤いキノコは人を寄せつける。
あるいは人の形をした魔なのかと、ぼんやり思ったりする。
◇
ある日のこと。
山林を歩いてキノコを見つけた人の書きこみを読んで、私もまた現地へ向かった。
絶大な人気と知名度だからこそ、お目にかかることが難しいと諦めていたものの、それは唐突に姿を現した。
全体が赤くて珊瑚のような形をしており、これはおそらくカエンタケだ。
全体的に傷みや色褪せが見られることから老菌だろうとは思いつつ、それでも悪魔の手と見間違えそうな形と、見る者に警告を与える色が美しい。
第6回で取り上げたドクツルタケが死の天使なら、こちらは赤鬼の腕と呼ぶのが相応しいかもしれない。
昨年に報道でよく取り上げられたので知っている人も多いだろうけれど、触れただけで皮膚がただれるとされ、もちろん食べれば命が危うい毒キノコだ。
そうした経緯で見つけ次第ひたすら駆除されたせいか見つけられず、なかば諦めていた中での情報は、わざわざ足を運ばせるのに十分だった。
◇
もう1つは色こそ地味ながら、特異な形が一度見たら忘れないだろう。
皮をむいて色の変わった果物に見えるけれど、これはエリマキツチグリだと思われる。
もう少し近づいて撮った写真がコチラ ↓
うっかりすると押したくなる形ながら、成熟すると頂点の部分から胞子が出るらしい。聞いてないよぉ!
キノコと言えば棒から伸びた傘をイメージするけれど、第8回のホコリタケと同じく、胞子を飛ばせれば形は自由なのかもしれない。
ちなみにエリマキツチグリの英名は「Collared earthstar」で、襟のついた地上の星、と訳せる。
亡くなった人が流れ星となる表現があるけれど、やがて輪廻転生の輪をめぐる中で、様々な生物に変わる可能性を有している。
そんなものは頭のおかしい人間の戯言かもしれない。
ただ、その人間は猿人の姿をしていても、小さな微生物に生かされていることを忘れないでおきたい。
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