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心中はフクザツな信州ツーリング 1/3

【文字数:約1,700文字】

 遅れて夏休みを取得したりんどん。

 雪に阻まれる前にと、信州は長野ツーリングに旅立ったのだが……?


 昔は信濃国、今は長野県と呼ばれている山国へ行くには、神奈川からだと甲府盆地こと山梨県を抜けていく。

 その名も甲州街道こと国道20号をひた走り、山と山に挟まれてゲームオーバーになる想像をしながら進むと、やがて諏訪湖へと辿り着く。

はーるばーる きたぜ すーわこー


海のようだが湖である

 諏訪湖といえば、冬に凍結した湖が自然に割れることを「御神渡り」と呼ぶ。近年は温暖化しているせいか、見られなくなってしまったらしい。

 ちなみに日本海のある側、つまり新潟へ抜ける旅で何度か通っているけれど、この近辺に滞在するのは始めてだったりする。

 今回いくつか目的地がある中で、そのうちの1つが諏訪湖の東岸にある北澤美術館だ。

「ガレってだれ?」と言いたくなる

 エミール・ガレは19世紀に活躍したガラス工芸のデザイナーで、その後に活躍したルネ・ラリックだと箱根に名前を冠した美術館がある。

 この美術館の目玉ともいえるのが、サムネイルの「ひとよ茸ランプ」だ。

想像よりもデカい!
(右がエミール・ガレ)

 ランプというからには、ベッドサイドなどに置く30cmくらいのを想像していたけれど、実物は1mくらいありそうな大作だった。

 もはや部屋の間接照明レベルなんだけど、これを手作業で作ったのだから頭がおかしい執念がすさまじい。ただ、制作年が亡くなった1904年であることを考えると、それも納得できるというか。

 ちなみにガレは「デザイナー」であり、実際の制作については工房の職人たちが担っていたことを書き添えておく。

 数ある展示品の中で、とくに気に入ったものをいくつか掲載する。


脚付杯「すみれ」


長頸瓶《茄子》


蘭文八角扁壺《親愛》
(カトレア)


魚文高脚杯

 粘土を使った焼き物なら分からなくもない。ただ、これはガラスで作られている。混ぜ物によって加工できる温度に違いがあれど、手で触れれば火傷では済まないかもしれない。

 窯から出せば温度が下がるので、その前に手早く装飾となる別のガラスを張り付けるのは、言葉にするほど簡単ではないだろう。

 むかし大学の実験でコバルト入りの青いガラスを作ったけれど、それですら電気窯を使って1000℃近くにして、やっと指2本くらいの塊ができる程度だ。しかも作業が遅かったせいで変な形になってしまった。

 いやーホント、これを作った職人たちは頭がおかしい執念がすさまじい。

 展示の中にはエミール・ガレ以外にも、同時代における作品もある。

きのこ文杵形花瓶
作:ドーム兄弟


左 雪景文耳付花瓶
《青空に雪とカラス》
右 雪景文鉢
《青空に雪とカラス》
作:ドーム兄弟


テーブル・センターピース
《三羽の孔雀》
作:ルネ・ラリック

 撮影はOKという美術館なので、興味を持った方は現地に足を運び、実際に観て気に入ったものを探してみるのも良いと思う。

 それと2階は日本画の展示も行われているので、こちらも忘れず鑑賞していこう。(撮影は禁止)

 北澤美術館は入り口からすぐミュージアムショップという作りであり、販売されている品物も展示の1つといえるかもしれない。

 1階の展示室が終わると、ちょうどそこは現代のガラス作家たち作の展示販売が行われていたので、そちらでも気に入ったものを購入できる仕組みだ。

 ただし、1点ものということもあるのか値段は安くないので、心が壊れないよう心して値札を見よう。

 私は普段使いが出来つつ良いものを考えた結果、ひとよ茸のブックマーカーを購入した。


ギンギラギンのヒトヨタケ~♪

 色は他にもゴールドがあり、2つとも買おうか迷って銀にした。このまま飾っておける緻密な作りは、美術館の意気込みを感じなくもない。

 ひとまず「心中はフクザツな信州ツーリング」の第1回はここで締めとする。

 諏訪湖の周辺ですら首都圏より高い場所にあるためか、朝晩は町中でも冷える。そのため、秋の行楽に行く方は軽めでもいいので冬服を忘れずに。


と~おき~ や~まに~
ひ~は お~ちて~
(諏訪湖の夕暮れ)




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りんどん
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