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美しい人(本屋さん)

人は、美しい。

そこに貴賤なんてものはなくて、だから裏を返せば、人は、「皆」美しい、ということになるのだろう。

ただ、元来美しい人と、その美しい人に近付きたくて努力する美しい人がいる。

私は特に元来美しい人が好きだ。彼女らは、光り輝く拳を振りかざして、そしてその空間を一瞬にして瓦解させる力を持っている。ただ、彼女らはその拳を振りかざしたことすら気付いていない。

私には特技がある。美しい人を見たら、その人を私の世界へと誘導する特技。ただし、私はその世界では動けない。身動きを取ることができず、まるで見えない蜘蛛の巣にかかってしまったかのよう。

でも、動けない私に寄り添ってくれる。美しい人が寄り添ってくれる。優しい指で、私の頬を撫でる。唇に指を這わせる。耳に吐息がかかる。目の前で瞼が閉じる。そして。

そして、意識が元の世界に戻る。

私は本屋の中。

さっき私の頬を撫でた、美しい人が渡した本に機械をかざす。

ピっという音がして、お金を払う。

彼女は私の耳に吐息をかけた口で「ありがとうございます」と言う。

本を渡されたときに、私の頬を撫でて、唇に這わせた指が触れる。

にこり、と笑う彼女は「またのご来店をお待ちしております」と言う。


次は彼女をどこに連れていこうか。

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