疲労と酸性

カーステレオから流れる女性の声を聴きながら、その子はありがとう、と呟いた。「カレーが食べれなかったんだ。身体から、変な匂いがするようになったの。毎日お風呂に入ってるのに。自分じゃない匂いがする。」

今はあんたの匂いがするよ。そう伝えると、彼女はニカっと笑った。香水つけ忘れたんだけど。臭くない?

きつかった時期、その友だちは体臭が変わった。
初めて、人肌からツンとする匂いを嗅いだ。

あんたが強くなったんじゃなくて良かった。その錯覚で、熱を出すでしょ。冷えピタは、表面に貼ってるだけに見えて身体の内側から冷やしてる。傷パワーパッドだって。たまごの殻は、大事な命が入っているのに、かんたんに割れる。

窓を開けると、海風が吹き込む。潮っぽさが顔に貼り付く。拭かずに帰ろうかな。そう呟くので、つけて帰ったら?世界はここだけじゃないって思い出せるよ。変な勧め方をした。そうする。彼女は、塩からい顔のまま正面を向いた。

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