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36歳でおばあちゃんになった姉の話

遅かれ早かれそのポジションにつくとは思うけど、一体誰が、働き盛りの姉に孫ができるなんてことを想像できただろうか。

我、姪孫てっそんなり

姉に孫ができた。
連れ子とかそういうことではなく、紛れもなく直接の姉の孫、つまり姉の子供の子供である。
割とシンプルな話で、姉は16歳で息子を産み、そしてその息子も20歳で結婚して娘が生まれた、という次第。

いや早えよ。姉ちゃんまだ36だよ。
そして姉の孫って、私にとっての何なのよ。

ググったら出てきたのが「姪孫てっそん」という呼び名だった。自分の甥の娘のことを指すらしい。

なんだよテッソンって。読めねえよ。


私の知る限り最速でおばあちゃんになった姉は、7人の中で最もバイタリティ溢れる働きマンだ。
某大手不動産会社で店舗責任者となりマネジメントに注力していたが、この春から本社勤務になったと聞いている。

今でこそ高卒でも活躍できるフィールドや手法は幅広くなったけど、当時姉が高校生で子供を産んで今に至るまでには、どれだけの苦労があったか計り知れない。

子供の父親とは、とうの昔に別れている。



giveし続ける人

私より7歳上のその姉は、思い返せば働き始めて初任給が出てからずっと、よく私含めた妹たち(7人の中では「チーム下っ端」と呼ばれている)に対して、ことあるごとにプレゼントをくれる人だった。

洋服を買いに行った時は「好きなものなんでも買っていいよ」と言って本当にそうしてくれたし、クリスマスには必ず小さな手紙と一緒に、私たちそれぞれの趣味によくあった小物を贈ってもくれた。

自分に同じことができるのかということを私がいささか不安に思った時、姉に「なんでこんなにも色々買ってくれるの?」と聞いたことがある。
するとその姉は少し考えてからこう言った。

「多分、自分がそうして欲しかったから。あんたたちに同じ思いはして欲しくないのかもね」


私たちチーム下っ端が知らない事実。
うちの子供たちは各自が高校生になって自分でアルバイトをするまで、年間の洋服代は一人一万円だけで、母はきっかりそれを守る人だった。

そして特に上の三人に関しては、自分がアルバイトをして稼げるようになると、そのうち数万円を実家の生活費として入れていたらしい。

私には姉たちからの「お下がり」があったし、自分が高校生になる頃はもう実家には妹しかいなかったから、生活費を入れるなんてこともしたことがなかった。自分で稼いだ分は、全部自分のためだけに使うことができたのである。

はたまた私が高校を卒業して都内で姉と同居させてもらっていた間も、
「私は家事炊事はできないから、あとは海、頼むよ」
と言いながら、姉は食費やら生活費やらの面倒を見てくれていた。

姉が自分の幼少期の経験から、その反動で自分にだけお金を使うようになっていたとしても全く不思議ではない。
それなのに姉は、いわば「恵まれたチーム下っ端」に対して、たくさんのわがままを聞いてくれた。


ずっと誰かに与え続けている人。それが私の、三女に対しての印象である。



おばあちゃんと孫

ある程度私も稼げるようになったとき、恩返しのつもりで「これからは姉ちゃんにも旅行とかたくさんプレゼントするからね」と言ったことがあった。
でもすかさず姉は、
「私にはいいから、甥っ子や姪っ子たちに、いっぱいそうしてあげて」
と言っていた。とことん頭が上がらない。

もちろんその中にはくだん姪孫てっそんも含まれる。


今、姉はびっくりするくらい孫にメロメロだ。ババ馬鹿とでも言うのだろうか。
先日も「当時忙しくて自分の子供にしてあげられなかったことを、その孫に対してやっている感じ」と言っていた。

自分の息子に対しても
「どんなに忙しくても子供の顔を見に帰って来なさい」
「あまりお菓子をあげすぎるんじゃないよ」
「野菜たっぷり食べさせてあげなさい」
と小言を言っている。

かつて忙しさを理由に帰ってこなくなったり、自分の息子にマクドナルドのハンバーガーやインスタントラーメンばかり食べ与えていた姉がそれを言っていると考えると、思わず笑ってしまう。

きっと姉も、かつての自分自身を反面教師にしているに違いなかった。


私もなぜかこの姪孫という存在がかなり愛おしい。
もしこの子が大きくなったら、かつて姉がそうしてくれたように、一緒に買い物に行ってたくさんたくさん、欲しいものを買ってあげたいと思う。




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