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6人分の人生を見ながら生きるあなたへ。

今、少しだけ疲れて、少しだけ自信をなくしているあなたに、ちょっとだけ立ち止まって読んでほしい。あなたは7人兄弟の末っ子で、昔から口下手で大人しくて、でも誰よりも激しい情熱を胸に秘めた、そんな子だった。

後悔

私は幼少期のあなたの声を思い出せない。
あなたはいつもじっと周りを観察して、自分から進んで何かをすることはあまりなかった。だけどその分、周りの兄弟たちが取る行動全てに、笑顔で応えていたと思う。
私が自分の言葉をうまく伝えられなくて大声で泣きわめいていた時でさえ、あなたはじっとそれを見て、そして、何か安心させるように、ニコニコと笑ってくれていた。

今だから言うけど、あなたは紛れもなく誰からも愛されていたし、そんなあなたに、私はずっと嫉妬していた。
「6番目」なんて中途半端な位置じゃなくて、「末っ子」だったら私ももっと構ってもらえるのに。そんなバカみたいなことを、本気で思い悩んでいた。

でもあなたが小学生になってから、だんだんとその気持ちは薄れていった。
あなた自身が、友達からの「イジリ」の延長で、とても嫌な思いをしたことがあったから。
その話を聞いたときに心底あなたの友達を恨めしく思った。生まれて初めて、「うちの妹に何してくれてんだ」と思った。
でも、私は結局何もできなかったし、何をすればいいのかも分からなかった。

あの時、あなたの話を、ゆっくりでもいいから聞いてあげていたらよかったね。


私よりも早くバスケを始めて、すぐに上達していったあなた。監督からもコーチからも「上手い」と言われていて、4年生以下の大会でも大活躍。小学生のクラブチームではキャプテンだったね。
学年的にも結局私はあなたと一緒にコートに立つことはなかったけど、姉たちに混じって練習している姿を横目に見ながら、私はひとり誇らしかった。
「すごいでしょ、うちの妹」ってずっと思っていた。

あなたが中学に上がると同時に私も高校に入学したから、正直あなたの中学時代のことは、ほとんど知らない。
高校で爆発した承認欲求を埋めるがごとく私はダンスにのめり込んでいて、正直周りのことは何も見えてなかったし、見ようともしていなかった。

でも冷静に考えた考えたらその時、7人いた兄弟は私以外全員家を出ていて、あの広い家にはお母さんとお父さんと私とあなたの4人だけ。
それまで分担していた家事も、私もお父さんも帰りが遅いから、ほとんどあなたとお母さんでしてくれてたんだよね。私ばっかり勝手して本当ごめん。


他の兄弟よりも、家族全員と一緒に過ごした時間が一番短かったあなた。

改めて振り返ると私は、ひどい姉だね。
3つしか違わないのに、子供時代にあなたとちゃんと会話をした記憶がほとんどないなんて。
当時のあなたは、どんな子で、何が好きで、何が嫌いなのか、どんな時に楽しいと思うのか、もっともっと、たくさん話せばよかった。



愛おしさ

あなたには上に6人の兄弟がいる。あなたはそれを、物心ついた時からじっと見ている。何をしたら怒られるのか、何をすれば喜ばれるのかも全部わかった上で自分の行動を「選択」してきたと思う。

あなたは自分のことを頑固だと思っているかもしれないけど、観察力に長けていて、そしてそれが「わかる」分、周りの言っていることに影響を受けやすくもあると私は思う。
いつの間にか周りの人の言葉を借りて、それを自分の言葉のように話してしまうこともあるかもしれない。

だけどそうなる前に、あなたにはあなたの言葉を、ゆっくりでもいいから見つけることをしてほしい。自分が本当は何を思っているのか、どう感じているのか、どうしたいのか、ゆっくりゆっくりでいいから、教えて欲しい。
それをする手伝いなら、私はいくらでもする。その言葉が見つかるまで、いくらでも待つ。



今、自分が想像以上に「いい状態」ではないことを、責めなくていい。

少しでも自分の「こうしたほうがいいのかな?」と思う部分があるのなら、しっかりとそれと向き合って欲しいと思う。周りの誰かに言われたそれじゃなくて、あなたの心がどう感じているのかを大事にして欲しい。


この間「自分はサボりやすいんだ」って責めていたけど、私から見たら、あなたは毎回、きちんと自分の目の前のことにサボらずに向き合っていると思う。
私がさっさと辞めてしまったバスケをあなたは高校でも続けて、片道1時間以上かかる道を3年間通い通して、浪人時代も耐え抜いて。
別の会社の出向社員というポジションから修行を経て見事、もともと行きたがっていた大手の広告制作会社に勤め始めた時は、本当にすごいと思った。この「やりきる力」はどこから湧いてくるんだろう、って感動した。

だから今サボりやすいわけじゃなくて、自分の中の明確な「こうしたい」という姿が、思い描けていないだけなのかもしれないね。それが決まったら、何が何でもやりきる、それがあなただと思うから。
見つけることも、継続の方法も、一緒に模索していこう。


照れ臭いけど、あなたの自分を客観視できているところ、すごく好きよ。
自分の大事なものの順番が変わってそれを思い悩む姿も、あなたの優しいところだから、すごく好き。
喧嘩しても、シャットダウンせずにきちんと相手に自分の気持ちを伝えようと努力する姿も本当好き。

だから、
この先あなたがどんな選択をしようと、どんな意志を持とうと、私は応援する。
あなたのことを、ゆっくりゆっくりでいいから教えて欲しい。

あなたの好きなパンを買い揃えて、美味しいコーヒーと一緒に食べながら、あなたの言葉を聞かせて欲しい。
私はいつでも、この広すぎるログハウスで待ってるよ。





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