シャワーのように花びらを浴びて
桜が満開の2022.3.27
昨日まで雨が降っていたのが嘘のように、
桜が咲き誇る日曜日。
家族でお弁当を食べる姿、おじいちゃんとおばあちゃんのデート姿、子供が公園で走り回る姿を眺めながら歩くと、清々しい1日の始まり。
この日は高校2年生から働き始めて
4年弱働いた古着屋の店舗に立つ
最後の日だった。
幼い頃から父と母の影響でファッションや古着に興味を持っていたが、気がつけば自らが店舗に立って働くという道を選んでいた。
昔の私の中での古着の魅力といえば"人と被らないこと"のみだった。
でも古着やヴィンテージに沢山触れていくと
数十年も前の服でも長い年月を経て大切にされてきたからこその温もりを感じるし
その年代にしかないディティールやデザイン
新品ではすぐに出せないような
柔らかくなった服の生地感や色あせ、
タグに前の持ち主の名前が書いてあったりするような発見と面白さに溢れた服たちの虜になっていた。
本当の意味での"人と被らない"がわかっていくようになった。
さすがにボロボロがカッコいいと思う日は来ないだろうと思っていたけれど、その服が歩んできた歴史を考えると、今ではそんな所までもが愛おしく感じてくる。
そして、ここの古着屋は私が人と話すことが好きになった、大きなキッカケのひとつとなった場所。
そんなお店で私が得た事は
きっと今後も私の生きていく中での
大きな糧になるだろうから、
ここに綴って残そうと思う。
長くなるけれど興味のある方は是非、
読み進めてください。
もともと私は若干の人見知りだった。
初めて会う人なんてお互いの事を何も知らない、(当たり前)、話題も思い浮かばない、(アセアセしちゃう)、どうしたらいいのかわからない。
そんな私がなぜ接客業を選んだのか。今思い返してみると、最初は"ただ、古着とその古着屋が好きだったから"という単純な理由だった。
もともと常連として店舗に通っている中で、
出会ってすぐとは思えないほど気さくに話してくれるスタッフの温かい空気に癒され、
いつもそこには昔から知っているご近所さんのような安心感があった。
そんな大好きな古着屋で働かせてもらう事になり日々接客をするうちに、
初対面の沢山の人達と会話をできることに喜びを感じていくようになった。
まさに一期一会。
そしてなによりも来てくれるお客さんが求める服、似合う服を一緒に選ぶ事が本当に楽しくなって。
自分の提案で
お客さんの新たなファッションの選択肢を増やすことができるという希望に満ち溢れた仕事に、
やりがいを感じていた。
そのうちに、いつのまにか私の中で人見知りという概念が消え去り、会話をする事が好きになった。
環境でこんなにも変わることができるのかと自分でも、正直びっくり。
沢山のお客さんを通じて感じた事は、
優しい言葉と表情を向けられたら
温かい気持ちになるのは、
いつ何時でも変わらない事。
心と心でハグしているような優しい感覚。
そこからは、自らが買い物をしたら「ありがとう」と伝えること、ご飯屋さんへ行ったら帰りに「美味しかった」と伝えることをより意識したり。
小学生の時に習ったフワフワ言葉は
こういう風にも活かしていきたい。
それが例え一方通行だとしても、
なにかが変わる一歩になる気がしている。
勿論古着屋の仕事は接客だけが全てではないけれど、私が人とのコミュニケーションについて考える事のきっかけとなった。
本当に大事な時間だったと思う。
そして、1人の店員として働いた事で
この目まぐるしい社会の中で働く人への
尊敬が大きくなった。
多くの人のまだまだ計り知れないほどの努力と汗の結晶が、この世の中を創り出しているんだなぁと。
アーティストとしての活動をしている中で
また違った職業を経験できたことは
私にとって大きな糧となった。
それに、立ちながら服を畳むことができる店員に
小さな頃から憧れていたから、
それができるようになったのは
実は嬉しい。本当に嬉しい。
何百枚でも畳みたい。
最後の出勤を終えた後は、東京という場所から離れるわけでもないのになんだか寂しくて。卒業式の後のような、爽やかでいてじんわりとするあの感覚。
私にとって深く思い入れのある空間で
"もうひとつの家族"のような会社。
ひとりっ子だから優しい兄と姉がたくさんいるみたいで、嬉しかった。
この先店頭に立つことはなくとも、
大好きな服、古着はいつでもそばにあって、
そこで出会ったみんなとの関係がずっと続いていくと思うと心がとっても温かい。
最高な古着屋で働けた事を誇りに思います。
いつか面白いことが一緒にできたらいいな。
別れと出逢いの春。
桜並木沿いを歩きながら帰っていたら突然風が吹いて、シャワーのように花びらが降ってきた。
年々桜との思い出が増えていくことで、また大人に一歩ずつ近づいているんだなと感じた。
私にとってひとつの節目の話。
読んでくれてどうもありがとう。
そして、最後の出勤日に足を運んで下さった素敵な皆様、行くことが叶わなくても行きたかったと思ってくださっていた素敵な皆様、どうもありがとうございました🫂
凜