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どこにでもいる人間の半生9

私がうつ病と診断されるに至ったきっかけは些細な事だった。

とある月、保育園に白ごはんを持って行けない事が何度かあった。

先生に頭を下げ、代わりの米0.5合を後日保育園に手渡す。

いつもならそれで良しとされていた範囲の事だった。

私は自分が万能ではないと思わせられる体験を痛いほどしてきた。
円滑に毎日をこなすには優先順位があったのだ。
どこかに迷惑をかけてでも、物事には優先順位をつけて処理をしていかねば到底回らない生活を私は選び続けて生きてきたのだ。

自業自得、しかし否定し難い私の人生である。

全てにおいて完璧に出来ないダメな母親なのだが、私なりに一生懸命ではあった。

もちろん、頭ではわかっているのだ、あぁ、今日も忘れ物があった、今日は子どもに歯磨きをしてやれなかった、プリントの提出期日だ、予防接種に行かないと、あ!歯医者の予約はいつだっけ?役員の講演会もあったなぁ、仕事は今日は棚卸しだから遅くなるかな、晩御飯はどうしよう、洗濯物がたまっている

頭には入っていても、体がついてこなかった。

そんな時、保育園の先生にご飯を忘れた事を注意された。

困ります。

たったその一言で、私の中で何かが音を立てて崩れた。

私は外に出るのが怖くなった、人に会うのが怖くなった。
情けなくて情けなくて、毎日涙が溢れてくる。

どうして出来ないんだろう

やっぱり私は無力だ

私はやはり世間にはバカにされるような人生なのか

自分を肯定してやれない

私がもっと出来ていたら、しっかりしていれば

消えてなくなりたい

来る日も来る日も一日中、私は沈みに沈んでいった。

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