仕事を通してホロライブを好きになったライターのホロライブの楽しみ方
2022年、ホロライブを好きになった。
昨年は角巻わためをはじめ、ホロライブ所属タレントのインタビュー、ライブレポートに携わることが増えた。
本格的にホロライブの活動を追うきっかけになったのは、角巻のインタビューをするにあたって彼女のことを調べていた際、筆者と誕生日が同じということで親近感を抱いたことと、穏やかな語り口が心地いい角巻の配信を見たことだった。それから彼女がインタビュー時に推しと答えていたおかころ(猫又おかゆ、戌神ころね)の配信や、おかころの2人が所属するゲーマーズの配信、多くのメンバーが参加する大型コラボといった流れで配信を見、楽曲を聴いて、半年後にはホロライブメンバー全員の要点はなんとなく押さえた程度になった。
VTuber黎明期と言われていた頃、初音ミクはじめとするボーカロイドのライブを通してバーチャルアーティストの存在をうっすら感じていた筆者は当時、VTuberにはまることはないだろうと勝手に思っていた。仕事での出会いを通してあっさりとはまった今、ホロライブのどのような点に魅力を感じているのか、印象に残っている配信や動画とともに簡単に記録しておきたい。
日常系漫画のような面白さ。リスナーと同じ世界を生きるVTuberの雑談配信
大型コラボやライブ以外の多くの配信(雑談、ゲーム実況etc)は有志による切り抜き動画を見ることも多いが、筆者はこれらを漫画のスピンオフや日常系漫画を読むような感覚で楽しんでいる。雑談配信は配信者の身に起こった最近の出来事やホロライブメンバーとのトピックスなどを、時折リスナーのコメントを拾い上げながら語っていくことが多い。彼女たちのトークスキルで話されるメンバーとの出来事は、度々漫画のようなユーモアやオチがあり、面白い。そのトピックが絵の上手いリスナーによって漫画化されることがあることからも察しが付くが、イラストを軸にした容姿やメンバーによって語られる感情豊かなエピソードは漫画とも親和性が高いのだろう。
ほのぼのとした雰囲気で行われる、リスナーとのボケとツッコミの応酬や各々のキャラクターの生きたコラボ配信。それらは、彼女たちの生活がフィクションの世界ではなく、リスナーも知っている世界で営まれているからこそ面白くなっていると感じる(というのも、筆者はそれまでVTuberたちは公式プロフィールの世界線に忠実に、並行世界を営むようにふるまっていると思っていた)。彼女たちは場所を呼称するのに「バーチャル○○(地名)」という言い方を用いることも多々あるが、とはいってもリスナーと配信者の過ごす世界が一致しているのは多くのフィクション作品とは異なる点である。平たく表現すれば、VTuberと同じ世界に生きているのだという事実が、より親近感を感じさせる配信を作り上げているのだろう。
ちなみに上記の「VTuberも同じ世界に住んでいる」とも通じる感覚ではあるのだが、ホロライブの配信を見始めて驚いたことのひとつが「彼女たちも人間らしいのだな」だった。2次元の姿やバーチャル世界での生活が彼女たちのすべてだと思っていたので、特にカメラを用いて手元を映しながら料理配信等をする「カメラ配信」の存在には驚いた。意外とVTuberは人間らしいという気づきは、筆者がVTuberに対して親密感をおぼえる大きなきっかけになった。
また、寝起きのメンバーに通話で突撃する「寝起き逆凸」や、特徴的な声と語尾を持つ兎田ぺこらのアイデンティティを個性豊かなメンバーと掛け合わせた「兎化コレクション」など、メンバーの声やキャラクターを存分に活かした企画も多々。ビジュアル含め各々キャラクターが確立されているからこそ、それがほろりと崩れる瞬間は面白い。
個性豊かなVTuberと作曲者が織り成す自由自在な楽曲たち
女性アイドル事務所であるホロライブ。彼女たちは各々、多彩な楽曲をリリースしている。
ときのそら、星街すいせいなど、メジャーデビューをしてVTuberアーティストの先駆けとして活動しているメンバーがいる一方、自身のキャラクターと作曲者のアイデアを掛け合わせた自由な楽曲でリスナーを楽しませるメンバーも多い。
宝鐘マリンの「I'm Your Treasure Box *あなたは マリンせんちょうを たからばこからみつけた。」や沙花叉クロヱの「人生リセットボタンぽちーw」はTikTokでも話題となり、振付や遊び心のある歌詞がVTuberリスナー以外からも支持を得た。鬼神である百鬼あやめの和風曲「夢花火」や狐である白上フブキの「KONKON Beats」など、本人のモチーフに関連した要素がふんだんに盛り込まれた楽曲も多い。尾丸ポルカ「ぽ」や、姫森ルーナ「ぐるぐる@まわる@まわルーナ」などはJPOPシーン、アイドルシーンにはあまり見られない自由なソングライティングの光る楽曲だ。ボカロPやアニソン作曲者、電波ソングを得意とするクリエイターが携わるホロライブのオリジナル楽曲だが、ホロライブメンバーの個性とかけ合わせられることでクリエイターの持ち味はより光る。
他方、TAKU INOUEとのユニットMidnight Grand Orchestraのボーカリストとしても活躍している星街すいせいは「ソワレ」にて味のあるミックスボイスを聞かせているほか、桃鈴ねねはEPのリリースに先駆けて爽快感のある「Ring-A-Linger」を発表するなど、ユーモアを交えずにメンバーの声色や歌唱力を生かす楽曲ももちろんある。鷹嶺ルイは乃木坂46の作曲などで知られる杉山勝彦が手掛けた「TSUBASA」をリリースしたほか、尾丸ポルカの「エヴァーブルー」は春ねむりが作詞作曲を手掛けた楽曲。さらにホロライブENに所属するMori CalliopeはTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也プロデュースの楽曲も収録したアルバム『SINDERELLA』をリリースし、ずっと真夜中でいいのに。の新曲「綺羅キラー (feat. Mori Calliope)」に参加するなど、メジャーシーンで活躍するアーティストとのコラボも増加している。
コンセプトライブからメンバーの魅力を吟味できるライブまで。3Dで行われる見ごたえ抜群の音楽ライブ
ホロライブの活動を追うようになり驚いたことは、音楽活動の面にもある。彼女たちはとにかくライブが多いのだ。
リアル会場でのワンマンライブこそ決して多くはないが、誕生日や活動期間の周年を迎えた際にはメンバーを多数ゲストに呼び、配信ライブを行うメンバーも少なくない。加えて2022年はホロライブ内で結成された音楽ユニットを集めたライブ「hololive IDOL PROJECTユニット初集合LIVE!」が行われたり、夏には「Climax Story Live」、年末にはカウントダウンライブも行われるなど、とにかくライブが多い年になった。
オリジナル曲だけでなく季節に合ったJPOPやボカロ曲も歌う選曲の幅広さ、レアな組み合わせのメンバーでの歌唱、3Dモデルで歌い踊る姿や舞台セットなど、ホロライブメンバーによるライブの見どころは様々。宝鐘マリンが3周年記念として行った「昭和老人会♪宝鐘マリン3周年記念歌謡祭」は、その中でも特に見どころの多いライブだった。画面のアスペクト比や舞台セット、テロップ、選曲、何をとっても昭和の音楽番組を再現したものとなっており、そのアイデアと技術力は反響を呼んだ。曲のイントロや歌唱の合間に挟まれる、大神ミオと白上フブキによるほとんどアドリブだという解像度の高いMCも含め、メンバーの多才さとVTuberゆえの柔軟さが活かされたライブであった。
先述のようにボカロ曲などのカバーをすることも多いため、ホロライブオリジナル曲だけで構成される配信ライブが少ないのも事実。常闇トワが行った3周年記念ライブはその中でもホロライブ楽曲の魅力を全面に押し出した、ホロライブ曲への愛を感じるライブであった。
ゲストにホロライブメンバーを多数呼んだ本ライブは、ゲスト出演したメンバーのオリジナル曲でコラボすることで、常闇のライブでありながら他のメンバーの魅力も感じられる公演となった。コラボメンバーとのMCを極力なくし、フェスを彷彿とさせるムービーを挟んだクールな構成は楽曲やパフォーマンスの魅力を引き立てる。余談だが、ホロライブの3Dライブと映像の融合は今後もっと見てみたい部分でもある。
さらに彼女たちはカバー曲を「歌ってみた」動画として投稿することも多いが、それをコラボ形式で投稿することもある。
ときのそら、星街すいせい、大空スバル、尾丸ポルカ、博衣こより、沙花叉クロヱの6人によるユニット・スターアニマルはYOASOBI「怪物」をカバー。歌唱力にも定評のあるときのそらと星街すいせい、普段の配信と歌声のギャップが人気の大空スバルと沙花叉クロヱ、歌声のニュアンスで楽曲に遊び心を加える尾丸ポルカ、博衣こよりと、個性豊かなメンバーによって特徴あるカバーに仕上がった。
楽曲の魅力とメンバー同士の関係性、どちらも美味しいシャッフルメドレー
音楽活動に力を入れているホロライブだが、そんなホロライブらしいユーモアある企画「hololive shuffle medley」のオリジナルMVが年明け早々公開された。
オリジナル曲をリリースしているメンバーが他のメンバーの楽曲をカバーするという内容の本MV。10曲がメドレーになった構成だけでなく、衣装ごと取り替えるVTuberならではのシャッフル方法もファンにとってはうれしいものとなった。2022年にその関係性が注目された白銀ノエルと大空スバルが衣装と楽曲を交換する形になったことや、普段ざっくばらんな獅白ぼたんがキュートな「WAO!!」をカバーしていること、兎田のファンとしても知られるMoona Hoshinovaが兎田の楽曲をカバーしていることなど、見どころが満載のMVでエンタメ性にも富んでいる。
ちなみに、「ホロライブサマー」の際に公開された全体曲「Shiny Smily Story」のリメイク版MVも、ファンにうれしい小ネタに富んだMVとなっている。
おわりに
ここまで駆け足ではあるが、印象深い配信を紹介しながらホロライブの魅力的な部分を書き連ねてきた。
今年もホロライブ関連の執筆、インタビュー仕事お待ちしております。
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