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Kawaii Future Bassの沼に足を突っ込む

Kawaii Future Bassを聴/聞いたことがあるだろうか。

Kawaii Future Bassは、既存のジャンルFuture BassにKawaiiの要素を足したものである。ローマ字「Kawaii」の起源と言えば中田ヤスタカだが、その流れを汲んでいると言っても間違いではないのだろう。Kawaii Future Bassの起源は2014年、Ujico*がSoundCloudに楽曲を挙げる際にタグにKawaii Future Bassとつけたことだと言われている。


Future Bass、Kawaii Future Bassのざっくりとした音楽的特徴については以下。

二次元のオタク文化や音楽ゲームとの相性がよく、それらを中心に発展しているKawaii Future Bassだが、歴史が浅く曖昧にジャンル名として使われている語を外してみれば、いたるところにその断片が見れることがわかる。現在は流行は落ち着いているという言説もあるが、今また再流行の兆しを見せているのではないだろうか。ここではKawaii Future Bassを中心として、しかしジャンル名にとらわれず隣接していると思われる音楽にも踏み込みながら、それらが他の音楽ジャンルやコンテンツと結びつく瞬間を切り取りたいと思う。

電音部

今年発表された、ダンスミュージックをテーマにした音楽原作キャラクタープロジェクト、電音部。すでにキャラクター、ストーリー、楽曲が展開されており、これからの動向に注目を集めるプロジェクトだ。この楽曲の制作に参加している面々がまた豪華で、Snail's House、Moe Shop、YUC'e、Yunomi、KOTONOHOUSE、PSYQUIと、Kawaii Future Bassの重要人物が名を馳せる。豪華なトラックメイカー陣による楽曲は単なるキャラソンにとどまらず、キャラクターの設定にある場所感を音色によってあらわしてもいる。

Vtuber

中田ヤスタカとKizuna AIのコラボがその代表と言えるだろうが、キャラの濃さで持たせていた節もあったVtuberの楽曲の時代はもう主流ではない。

Vtuberの楽曲で盛り上がっているのがKawaii Future Bass周辺の曲調だろう。

Kawaii Future BassのMVに多く観られるキャラクターを利用した映像は、指摘するまでもなくVtuberの在り方と相性がいい。

VtuberとKawaii Future Bassのより直接的な融合と言えば、2019年リリースの「IMAGINATIONvol.1」だ。

アニメソングをVtuberがカバーしているコンピレーションアルバムで、編曲はYunomiやYUC‘e、Moe ShopなどのKawaii Future Bassを多く作曲するトラックメイカーが担当している。
最新映像技術などを利用したライブやVRコンテンツ、2Dあるいは3DCGを利用したキャラクターでの展開をするVtuberは、シンセベースをはじめとした電子音やポップなシンセサウンドを中心とするKawaii Future Bassと、生々しさを感じさせにくい点で共通している。

Vocaloid

Kawaiiの要素を持つキャラクターと電子音楽の融合でいえば、そのはしりと言えるのはVocaloidだろう。定義は定かではないとされているが、テクノポップと初音ミクを合わせた造語、「ミクノポップ」とのタグも存在している。アップテンポでかわいらしい曲につけられることが多いこのタグは、部分的にであれKawaii Future Bassと共通する。

同人レーベルOn Prism Recordsがリリースするコンピレーションアルバム「Prhythmatic」シリーズはFuture Bassに限らず、電子音楽とボーカロイドの融合を試みている。

(特に4曲目「Melty Magic」が王道Kawaii Future Bassという曲調だ)

Pops

さて、ここまで主にキャラクターコンテンツとKawaii Future Bassの相性のよさを見てきたが、このジャンルが展開する先は二次元に限らない。

5人組アイドルCY8ERの多くの楽曲はYunomiが作曲を担当している。珍しい音色で増幅される可愛さはもはや武器のように聴こえる。


長谷川白紙とのコラボ曲「音がする」が話題のyuigotはYunomiとYUC‘e主宰のレーベル未来茶屋レコードのコンピ、「未来茶屋」や前述の「IMAZINATION vol.1」に参加するなど、Kawaii Future Bass周辺の編曲もしている。ボーカロイド楽曲の作曲もするyuigotの動向には目が離せない。


またKawaii Future Bassにギターの要素を濃く追加したKawaii Future Rockの提唱者であるNeko Hackerは、ボーカルに次世代を担うシンガーソングライター4s4kiや音楽プロデューサーでもあるぷにぷに電機をゲストに迎えている。

4s4kiやぷにぷに電機を筆頭に、従来と比べてシンプルなビートミュージックが次世代アーティストから多く出てきている今、それがKawaii Future BassやEDMと結びつくのは当然の流れともいえるだろう。その潮流に押されるようにしてKawaii Future Bassの盛り上がりも加速するのではないだろうか。

おまけ

2020年もあと数日というところなので、Kawaii Future Bass(とその周辺)の個人的ベストをいくつかピックアップしてみることにする。

Neko Hacker 『Isekai Travel』

3人のゲストボーカルをフィーチャーした本作は、4曲がまったく異なった色を醸していて面白い。しかしここでピックアップした理由といえば、今年の社会情勢下でリリースされた意義の大きさだろう。様々な形の応援や肯定がネコハカワールドにきっちり組み込まれているところが、今年の特別さを感じさせずとも救いになる。

KOTONOHOUSE 『Synchronicity』

本作は10月リリースだが、これを以て2020年が総括されたと言っても過言ではない。
KOTONOHOUSEが他の歌い手やトラックメイカーとコラボした楽曲が集められた『Synchronicity』は、落ち着いた曲調の楽曲も多い。KOTONOHOUSEが作る緻密な空気感を楽しむことができるほか、異なる声を土台にして次々と繰り出されるシンセサウンドには飽きることがない。

Elliot Hsu 『Fragment』

どう間違ってもこの楽曲はKawaii Future Bassではないが、それ系の作曲者でもあるのでピックアップしてしまう。映画のサントラさながらの壮大さがありながらもドラムパターンがある程度一定なせいかまとまりを感じ聴きやすい。3分強と決して長くないながら波のような抑揚、展開がある。思わず何度も再生してしまう魅力がある。

Yunomi 『ゆのもきゅ』

2017年リリースのYunomiとnicamoqのコラボアルバム。家にいがちだった2020年、周囲に迷惑にならないぎりぎりの音量で本作をかけては力強い可愛さに元気をブーストしてもらった。

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