Vol.5.22 冷凍パイシート、万歳!
子どもの頃よくお菓子を作っていた。
その理由は、新しく買ったオーブンレンジの取扱説明書にオーブンやレンジ機能で調理できる料理やお菓子のレシピがついていたからだ。
私はそれでクッキーを作り始めて、それからマドレーヌ、パウンドケーキ、マフィンといった簡単なお菓子を作るようになった。
もちろんお菓子のレシピはそれだけではなく、スポンジケーキやチーズケーキ、アップルパイやシュークリームといった子どもが作るにはなかなか難易度高めなレシピも掲載されていた。
その中でも、私はアップルパイが作ってみたかった。
レシピを読んでいくと、アップルパイの調理時間は5時間。
クッキーとは違って手順も多い。
でもなんとかなるだろうと材料と調理器具を揃え、アップルパイを作り始めた。
りんごを銀杏切りにして砂糖で熱し、アップルフィリングをつくる。
バターは固形状のものを使用して作ったパイ生地を折り畳んでは平らにして冷蔵庫で数十分寝かせる。(これを5セット)
正直、この時点で私の心はかなり挫けかけていた。
長い…レシピの工程が長すぎる!?
「アップルパイってこんなに大変なものだったの!?」
しかし、自分で作るといった手前、途中で投げ出すわけにもいかなかったので根を上げつつもどうにか5セット目の折り畳みも終わり、パイ生地を再び冷蔵庫の中へ。
ようやく工程の折り返しまで来てホッとしたので、パイを休ませている間、私もソファでごろ寝した。
そして、再びパイを冷蔵庫から取り出し、再び平らにしてアップルパイの型にパイを隙間なく敷き詰める。
そこへ作っておいたアップルフィリングを山盛りに敷き詰める。
レシピでは細長く切ったパイ生地を交差させるように編み込みを作らないといけなかったが、ここでもう私の気力とやる気がピークを迎えていたので、ただ平たい網目にした。
焼けた時に艶を出すために、卵黄でパイの周りをコーティングしてようやくオーブンレンジへ。
レシピ通りにオーブンの温度と時間を設定して、さあいってらっしゃい!と言わんばかりにスタートボタンを押す。
数十分後、始めて作ったアップルパイが完成した。
いい出来とは言えなかったが、達成感というよりようやく終わったという気持ちの方が大きかった。
そして私は「もう二度と作らん!」となり、それ以来アップルパイをつくることはなかった。
それぐらい子供の頃の私にはパイ作りには心が折れた。
今思うと、アップルパイやシュークリームといった難易度高いレシピはある意味、将来パテェシエ志望になるかならないかのターニングポイントとなるレシピではないだろうか。
時は流れ、私はパイ生地がスーパーの冷凍コーナーで販売されているのを発見した。
「え!?すでにできたパイ生地が売られてる…。パイ生地がある〜〜✨✨✨」
喜びのあまり、久しぶりにアップルパイを作ろうと、りんごと冷凍パイシートを購入した。
アップルフィリングを作っておけば、パイ生地はただ麺棒で伸ばすだけでいい…。
嗚呼、なんて楽なんだ✨
もう生地を折り畳んでは平らにして、冷蔵庫で寝かせる時間も省ける。
これでいつでも気軽にアップルパイが作れる。
そんなわけで、ときどきパイシートでアップルパイを作っている。
もうパイ生地を作る事はないだろうけど、一度でもパイ生地を作ったからこそわかるあの苦労も経験できたし、パテェシエさんの努力と苦労もなんとなくわかった。
ありがとう、アップルパイ。
ありがとう、パイシート。
そして、パテェシエさん。
いつも美味しいお菓子を作っていただいてありがとうございます。
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