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昔々、30cm 直径の「誘惑」がありました ~ ジャケ買いで成功した5枚 pops, jazz fusion, healing music, nadonado..

2023年 現在、
世の中の音楽商品の流通方法は、マーケティング(販売戦略)やプロモーション(販売促進活動)も含め、その多くはネット配信が占めていると感じます。スマホを片時も離せないという人が多いはずです。

1980年代~1990年代前半までは、
複数階でレコード・CDを陳列しているチェーン店で、何か面白い音ないかなと、1~2時間かけて館内を探し回ったわけですが、いまや、電車の中でもイヤホンをして椅子に座ったまま液晶画面をサッとスクロールしながらチェックできてしまいます。

LP、cassette 、 MD、CD、Walkmann から smartphone まで
1980年代前半に忽然と現れ、たちまち全世界を席巻した音楽CDのために、ホコリに弱い30cm直径の黒いLP盤は現役引退、画質がイマイチで巻き込みやすいVHSテープは、鮮やかな美しさのDVD盤によって廃棄物扱いとなってしまいました。
70年代末に発売、たちまち世界で爆発的に拡がったカセットテープ音源のアナログWALKMANは、途中ちょっとMDに市場を荒らされても90年代半ばまでは延命できたようですが、データ音源によるデジタル ipod に駆逐され、今や、若い世代中心に音楽はネット配信で、となっているようです。

昔々、30cm直径の「誘惑」がありました

直径30cmのLP盤アルバムの紙製表面、いわゆる「ジャケット」には、レコードショップで実物を見ることのできた世代の人間にだけ味わえた「特別の
楽しみ
」があったのではと思います、・・

・・それは、「ジャケ買い」です。

音の試聴ができない場合、そのジャケット表紙の「絵」によって、買うかどうか決めることがあったのではないでしょうか。ジャケットのデザインや絵柄とキャッチコピーの巧みな「誘惑」によって、きっと中身の音楽もスゴイはず、と信じて買って、裏切られたことも度々。( これは、人間同士のつきあいや商品広告などではよくある話です・・)
もちろん、ジャケットの描く「うわべ」のイメージと、「中身」がピッタリ一致している場合もあります。

そういうわけで、ジャケ買いの成功例を、制作年代順にいくつか紹介します;
( なお、1990年以降発売のアルバムは、CD盤ジャケットとなります )


1978年 ILLUSION ( 日本語盤:幻想の翼 )

アルバムタイトルがバンド名でもあり、ライナーノーツによると、British Rock の名盤扱いらしいです。私が唯一気に入った曲が、女性の歌う7分近い曲「ルイのテーマ」:Louis' theme で、希望と祈りに満ちた炎が静かに燃えているような美しさです。

以下をクリック Louis' theme を聴くことができます

https://www.youtube.com/watch?v=fRDLHlBUJPw  7:37


1979年 John Abercrombie Quartet:Arcade 
ジョン・アーバークロンビー・クァルテット : アーケイド

アメリカのジャズ・ギタリスト John Abercrombie のアルバムです。特に Neptune という曲では、繊細な響きのエレクトリック・マンドリンを奏でながら、ジャズという範疇を超えた、朝霧の拡がる湖水風景のように、奥深い余韻と神秘さに満ちた音楽が繰り広げられています。
すっかり気に入った私は、その後、彼のソロアルバム:Characters を買い、あまりに美しく儚く、想いと優しさのつぶやきのような彼のギター音楽に浸り込んでしまいました。 

ずばりの曲が検索できず、ラルフ・タウナーというアコースティック・ギタリストとのデュオ音源に、彼らしいエレクトリック・ギターの奏で方があったので、そちらを紹介しています。

https://www.youtube.com/watch?v=v3JOmuoWKBY       6:27



1985年 Al Di Meola : Cielo e Terra
アル・ディメオラ 天地創造

80年代に流行った音楽ジャンル FUSION (ロックとジャズの融合):フュージョンの人気実力ともにトップのギタリスト Al Di Meola 。このアルバムでは、派手なエレキをアコースティックギターに持ち替え、シンセサイザーを駆使し、パーカッションも加えた多重録音。禁欲と内省に徹したような音造りですが、特に when your gone や solace では、彼本来の持ち味であるロマンティシズム:繊細で夢見るような音色と旋律を美しく奏でてくれます。

今でも人気ギタリストなので豊富な音源がアップされていますが、ここでは、彼らしいリリシズムあふれる繊細な音作りの美しい曲 when your gone 紹介します。

https://www.youtube.com/watch?v=gz24H8vZxtA      4:31


1996年 ALPHA アルファ:クリスタル・ボウルの響

デンマーク人 F・ローレンツェンによるサウンド・セラピー的な音楽。特殊な音具クリスタル・ボウルに打楽器、シンセ、自然音等を重ねて構成されています。CDショップでは、Medetation / Healing music などのコーナーに置かれていました。

アルバム宣伝帯にはこう書かれています:

宇宙に存在する全てのものは振動している。
クリスタル・ボウルの調和的ヴァイブレーションに共振するとき、
人は本来のピュアな状態に戻ることができる。

( 正直、私がこれを聴くのは、数年に一度あるかないかで、最後まで通して聴いたことはありません・・)

https://www.youtube.com/watch?v=EoNp8YtpCcw     14:03


2005年 リベラ / ヴィジョンズ
LIBERA / VISIONS

イギリスの人気合唱団リベラの何枚もあるアルバムの中から、これを選んだのは、まさにこの「絵」ゆえです。淡いグレーや銀色に光り輝く海辺に、
幻影のように佇む「その人」の威厳と神秘に満ちた姿に心奪われたのでした。

CMで有名な「リべラ」はもちろんですが、作曲も手がける指導者 R・プライズマン によるオリジナル曲「アヴェ・マリア」は、西洋古典音楽の数々の名曲のどの「アヴェ・マリア」にも見劣りしない,、清冽な美しさにあふれています。

ここでは、" ave maria "  の素晴らしいライブ映像を紹介します。
変声する前の、ほんのひと時だけの少年の歌声は独特で儚い故に、どこかこの世ならぬ別次元から聞こえてくる声のように聞こえます。途中、女性ヴァイオリニストのソロも入り、歌う少年たちと演奏する女性との対比が映像的に見事です!やはり、このような宗教性の強い音楽は西洋人のものだなと感じさせられます。

https://www.youtube.com/watch?v=91ucurJ4yAw  4:19


最後に
他にもジャケ買いがあったのですが、再生機の無くなったレコードは、もう聞かないCDと共に、Book off などに売りさばいてしまいました。
思えば、CD盤になってからは、小さすぎるアルバムのカバーデザインにあまり注目しなくなりました。

PCかスマホばかりで音楽を聴いていると、目も姿勢もますます悪くなるでしょう。今後も、自ら動かないで済む通信情報ネットワークが生活の隅々にまで浸透してゆくことでさらに体を動かさなくなるでしょう。

このような現象が世界中で続けば、近未来、人間は、「肉体的な退化」を余儀なくされるのでしょうか、それとも、使わない肉体は退化してかまわないという「環境適応の進化」とみなされるのでしょうか・・?