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素人視線で考えるアイドルのリスクマネジメントとファン心理

「アイドルの運営スタッフって大変そうだなあ。」

生まれて初めて私が男性アイドルのファンになって感じたことだ。
経済やアイドル文化についての知識は浅いのだが、最近なんとなく考えていることをつらつらと書いてみようと思う。
特にめちゃくちゃ真新しいことが書いてあるわけではないので、あくまで自分の中での考え方の再確認のような気持ちで書き進めていきたい。

◆一般社会に浸透する推し活

今の世、推し活は大ブームとなっている。
推しと呼ばれる存在は、アイドルや、アニメキャラクターが多い印象だ。推し活がニュースで取り上げられたり、アニメや漫画のテーマになるなど、一般にもその概念は浸透してきている。
「推し活」は経済を回しているーーー初めてアイドルのオタクの世界に足を踏み入れた私がそう感じてしまうほど、彼ら、彼女たちの購買意欲はすさまじい。

◆推し活の例と動機

私が知っている・実際にやっている範囲になるが、アイドルのファンによる推し活の例をあげてみる。

◆アイドルの推し活の例

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ライブや音楽に関すること
・ファンクラブに入る
・CDやダウンロード音源を購入する
・ライブに参加する
・アイドルのTwitterやインスタグラムの情報をリツイートやメンションなどで拡散する 
・アイドルの公式グッズを購入する
・ファンレターを書く・公式へのメッセージを送る

メディアの外仕事に関すること
・紹介されているWebメディア情報を拡散する・感想を発信する
・インタビューが掲載された雑誌を購入する
・出演するメディアの情報や感想を拡散する
・テレビ、雑誌、ラジオへのリクエストと出演の際のお礼

布教・リクエスト活動
・CDを友人やラジオ局などに配布する
・ストリーミングサービスで楽曲を再生する(再生リスト・ランキング入り)
・MVのコメント欄に感想を書く
・アイドルのグッズを撮影した写真や関連する感想をSNSで発信する
・カラオケのリクエスト
・カラオケで歌う
・誕生日やライブに合わせた応援広告
・Twitterでのトレンド入りを目指す
・化粧品やデパートなどコラボした企業の商品を買う
・推しが身に付けているものや食べているものや読んでいる漫画を買って体験しその感想を発信する

創作・情報の編集・再発信
・ファンアートを描いて発表する
・動画をつくってtiktokやYoutubeで投稿する
・情報をとりまとめて他のファンに向け再発信する
・ライブや、アイドルとのトークイベントのレポ、またはアイドルの魅力についての記事を執筆・発信する

推し活には、「購入」だけでなく、「情報」「拡散」「発信」という言葉が多く登場する。このことは、私が「アイドルの運営スタッフって大変だなぁ。」と感じた理由にも関係している。

◆情報の拡散・発信におけるリスクマネジメントとファン心理の関係

ようやく本題に入れる。

前述のように、アイドル活動というのは、情報に取り巻かれている。
アイドル本人や運営が発信することだけでなく、ファンのひとりひとりが、情報の発信者となって動いている。

ファンはなぜアイドルの情報を発信するのか。

それは、より多くの人間に推しのことを知ってほしいからだ。多くの人間に推しが知られると、推しの音楽を聴く人が増え、推しのファンクラブ会員が増え、推しのライブに行く人間が増え、推しが呼ばれるテレビやイベントが増え、推しのCDランキングがあがり、推しの収入が増える。

より詳細な動機は様々だが、「推しに、より大きな舞台に立って欲しいから」あるいは「少しでも長く今と同じかそれ以上のパフォーマンスをみたいから」であったり「より多くのひとたちに推しの歌を届けるのが私の使命だから」はたまた「君の笑顔がわたしの幸せだから」「夢を一緒に追いかけたいから」などの理由がある。

動機はさておき結果として、多くのひとが同時多発的に、アイドル本人や運営などからもたらされた情報や、Webメディアでの情報募集などをもとにそれぞれ発信を行う。
このことは、より遠くまでリーチするメリットもあるが、ときに情報の氾濫を起こすリスクがある。
情報というのは、視覚的なものであったり、そうでなかったりするが、突き詰めると実態のないひとつのエネルギーのようにも思えてくる。メディアリテラシー(テレビや新聞などメディアのメッセージを主体的・批判的に読み解く力)の重要性が広く普及して久しいが、私たちが情報に触れるとき、主体的、批判的に関わろうという意識が必要であり、情報を発信する際はその情報が引き起こすリスクを意識しなければならないと私は思う。

私が今回疑問に思ったのは、アイドルの情報をとりまく拡散・発信に対して運営スタッフ、あるいはそのファンはどのようなリスクマネジメント(危機や損失を最小限に抑えること)を行っていったらいいのだろうか、ということだ。
あくまで疑問であり、明確な回答があるわけではないのだが、個人的にこうしたらいいのではないか、と思っていることと、その理由、また、リスクマネジメントを怠った場合、どのようなデメリットが考えられるかなどについて記していきたい。

結論から述べると、リスクマネジメントの具体的方法は「とにかくひたすらチェックしまくる」「数字と名称は特に何度も違う人間の目で見る」「複雑な情報は整理してみえる化して共有する」、なんだか会社の目標みたいになってしまったが、これにつきると思う。
そしてリスクとは、アイドルが信用を失墜することと、アイドルのファンに不安や諍いが生まれることだ。

◆ 正しい情報が伝わらないとどうなるのか

「さらなる頂を目指していきましょう」

私が推しているアイドルのリーダーが、渾身のシングルの順位を発表されたとき述べた言葉だ。
このとき、私の推しているグループはその週のチャートで1位を取ることはできなかった。
だが、この言葉に鼓舞されたファンも多いだろう。
自分の生活のことではない。
彼らをより高みへ押し上げるために、次はもっと頑張ろう、とそう思ったはずだ。
あるいは、次は事情があって推し活に勤しめないものは、それでも今回のリリース週を一緒に戦ったことで、自分自身に自信がついたり、これからの新規ファンに想いを託したりしたかもしれない。
「一緒に戦う」の具体的内容は、まったくちんぷんかんぷんの場合は、前述の◆アイドルの推し活の例 を参考にしていただきたい。
私がここで言いたいのは、アイドルのファンにとってアイドルのCDチャート順位や人気指標というのはとても大事なものなのだということだ。

だからこそ、これらの数字は、アイドルや運営やファンが取り扱う場合、とても注意が必要だ。タイミングにも慎重にならざるを得ないが、チャートというのは即時性が大切になるので、タイミングを図るのはむずかしい。できることは、せいぜい、この時間帯に発表するのがいいだろう、と検討をつけるくらいだろう。
チャート順位だけではない。
共演者名・番組名・日付・イベントの場所・関連商品金額など、これらの情報は誤って発信すると一度に拡散され、その回収が大変になる。

とても簡単に言うと、炎上する。と、いうことだ。

私が編集について勉強していたころ、「数字と値段と名称は最終チェックで必ず読み返すように」と教えられていた。編集中のセルフチェックのあとには第三者校正が入り、クライアントの確認があるが、さらにその後、内容を読み返す時間がとれるようにスケジューリングするよう言われていた。

発信者や受取手が少数であれば、情報の修正というのはそこまで難しくない。例えば上司への報告書の数字が一桁間違っていても「間違っていたのですが、このようでした。申し訳ありません」と謝り修正したことくらい、社会人なら一度はあるだろう。
だが、この情報が多数の人間により一気に拡散され、どこまで広まってしまったかわからないとき、その修正にかかる労力・人件費・精神的負担は大きなものになる。
しかも、アイドルの存続には「信用」と「人気」と「ファン心理」が大きくかかわってくる。
だから、私のような素人でも「アイドルの運営スタッフって大変そうだなあ。」と感じるのだ。

ここでは、最もファンが関心を持っていることのひとつ、チャート順位を例に上げる。
オリコンやビルボードでうちの推しは今回何位を取れたのか、という話だ。

チャートに関することは他のアーティストファンにとっても関心があることだ。
だからこそ発信には細心の注意が必要となる。

次回チャート対策の基盤となる
オリコン・ビルボードの内容は一覧化してシングル・アルバムごとに把握していた方が良い。

ファンは情熱がある人材が自発的にそのような資料を
作ってくれたりもするが、
アーティストとスタッフなら、できれば紙にプリントするなど「みえる化」して共有していただくのが望ましいと思う。

あくまで一意見であり、実現する可能なことかはわからないが、有名なグループであるほど、
アイドル本人が情報発信を行う場合は、
スタッフが内容を確認・アップロードの際に
共演者名・番組名・日付・関連商品金額・チャート順位など最低限の数字や名称に関わる情報をチェックする体制を設けたほうがよいのではないかと思う。
また、ファンも公式の情報を鵜呑みにするのではなく、再発信するときには今一度内容を確認するべきだと思っている。

FCコンテンツなど閲覧者が限られた場所であればクレーム等につながることはまずないだろうが、これをきっかけにTwitterなどでファンにより誤った情報や、指摘が拡散された場合、修正作業に大きな労力がかかる。
また、大好きなアーティストに、心労をかけたくないというファン心理もあり、なんとなーくチーム全体がネガティブな空気になってしまう。

ファンのミスであっても、誤った情報が拡散されたとき、
信用を失ってしまうのは運営であり、
アーティストだ。
だからこそ、ファンの間でも数字の扱いはデリケートで、誤った発信をした場合、すぐに指摘が飛んでくる。

一度のミスで離れてしまうファンはあまりいないだろう。誤字についても、ヒューマンエラーだし、個性として「かわいいねえ」などと微笑ましく受け取るかもしれない。

しかし、順位情報等の誤発信は、
他アーティストのファンからの信用失墜や、
新規ファンの誤った情報認識につながってしまう。厳しい言い方をしているように感じるかもしれないが、これはなかなか大変なことだ。

たとえば、中堅のアイドルAがランキング1位を長年の努力で取ったとする。
その横でBという大人気グループのファンがランキング1位だったと報告し、そのツイートがたくさんいいねとRTがついていたらどうなるか。
まずは、誤情報の発信をしているBのファンにAのファンが訂正を行うよう求めるだろう。その誤情報の発信元がBの公式発表の誤字などだった場合、Bの運営は、AのファンとBのファン全てに謝罪しなければならないし、膨大な問い合わせに対応する必要が出てくる。
また、AとBが元々ライバルのような存在であれば、ファン同士の確執、さらに、同じグループでのファン同士が考え方が違って対立するなどの事態も考えられる。また、炎上が大きくなれば、外部からのイメージダウンにもつながってしまう。

「あとから修正すればいい」という気持ちは、修正の人件費もろとも、積み重ねた信用を失ってしまう原因となってしまいかねない。アイドルがより大きなグループとなる過程では、正しい情報発信を行うためのリスクマネジメントの徹底は必要不可欠ではないかと思う。

アイドルの運営スタッフの仕事は幅広い。

私が把握しているだけでも、
ライブの計画とアーティストのスケジュール管理だけでなく、ファンミやフェスなどのイベント企画に加え、普段の更新や外部フェス・キャンペーン等のPR、プレスリリース関連の業務、お問い合わせの対応などなどなどなど。
それらを、少人数でこなし、作業が深夜におよぶこともあるだろう。

私は、自分が好きなアイドルの運営スタッフの皆さんが大好きだ。
ひとりのファンには、アイドルを世間からのやっかみや理不尽な誹謗中傷、誤解の声から守ることはできない。
いくら「大好きだよ」、「愛しているよ」、「そんなの気にしないで」とファンが言ったところで、実際に彼らをとりまく情報に真正面からぶつかり対処するのは、アイドル本人とスタッフの皆さんだ。
楽しく公式コンテンツを楽しみ、安心して応援していられるのは運営スタッフの皆さんのおかげだと思う。
アーティストを直接守り、支えてくれる大切な存在だ。

戦争や疫病で苦しい社会情勢が続くなか、エンタメ業界・芸能界が大きな被害を被っていることは、いくらニュースに疎い私も知っている。歓声をあげられないライブ。無観客の空席に向かってパフォーマンスするアーティスト。毎回の除菌・換気。制限があって満員にできない劇場。オンライン配信の需要が増えたが、そのかわり、遠方からのファンは会場に足を運ぶことが難しくなってしまった。
そんな中でも、運営スタッフの皆さんは、
アイドルと一緒にファンを楽しませようと奮闘してくれている。

顔も名前も知らないし、交流することもできないけれど私は運営の皆さんが大好きだ。

だからこそ、少しのミスで、運営やファンの余計な心配が増えることがなくなってほしいと思い、自分での再確認の意味も込めてこの記事を書いた。
私も盲目になりすぎず、視野を広くして、チームを支えるファンのひとりになれたらいいなあと思う。

運営さんへ。
いつもお疲れ様です。愛してます。

◆この記事のまとめ

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◆私の推しについて

最後に私が推している男性アイドルを紹介しておく。
4月11日に結成2周年を迎える吉本興業所属の四人組ダンスボーカルグループで、名前はOWV(オウブ)という。

●OWV公式サイトリンク

本人たちは自分のことを「アーティスト」と呼んでおり、リーダーの本田康祐さんが中心となって結成されたというエピソードはなんだかバンドのようだが、プロモーション方法やファン層はアイドルとも言えるので、あえて「男性アイドル」として紹介させてもらった。(個人的にはOWVはOWVという存在なので型にはまらない新種の何かだと思っている。)
一見では読めないグループ名オウブには、Our only Way to get Victory~勝利を掴む僕たちだけの道~という意味がある。メンバー全員で考えた名前らしい。
キャッチフレーズは「次世代ボーイズグループ」とのことだが、今年6月にはメンバー最年少の浦野秀太さん(※私の推しメンである)もこの世に舞い落ちて25年を迎えるため、そろそろ「なぜだか気になるッ!よしもとの歌って踊る最強四天王ッ!!!」あたりに変えたほうがいいんじゃないかなあと思っている。

OWVは、2月にはワンマンライブ「and I」を成功させ、3月9日にリリースされた5th Single「 You」は多くのチャートにランクイン。テレビの音楽番組でのパフォーマンスこそまだ少ないものの、全国のラジオやコミュニティラジオや地上波で流され、動画サイトでのMV再生回数も順調に伸びている。

●OWV - 「You」Music Video【4K】

参考:OWV 5thシングル「You」チャート順位 
①オリコン
・シングルデイリー 発表日3/9 2位 
・週間シングル・セールス 発表日3/21 4位
・週間合算シングル 発表日3/21 9位(CD・DL・ストリーミング)
②ビルボード 
シングル・セールス先ヨミ 発表日3/11 2位
週間シングル・セールス 発表日3/14 2位
ビルボードHOT100(合算) 発表日3/16 10位

4月にはファンミーティングの開催が決定、ゴールデンウィークに大阪万博記念公園で開催するWARAI MIRAI FES 2022、5月に千葉幕張メッセ国際展示場で開催されるGirls Awardなど大型イベントへの出演もぞくぞく決定している。これからの活動が楽しみだが、同時にちょっと財布が心配だ。

これもまた、ファン心理のひとつだろう。

読みづらい長文にて失礼いたしました。
目を通していただきありがとうございます。

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