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とうとうオーディオブックに手を出した



小学生の頃、母親が「日本文学全集」(正式名称は覚えていない)を買って来た。

買って来たというか、多分、訪問販売から購入したのだと思う。

8段ほどあるこぢんまりした白い本棚に、びっしり100冊ほど並んでいて、その状態で納品された。


夏目漱石や太宰治、芥川龍之介らの名作揃いであった。

やれ、夏休みの宿題だ、学校の読書感想文だとなると、両親から「この本の中から選んだら?」と勧められた。

私は、聞いたことのある「吾輩は猫である」を読み始めるが、あまり面白いとは思えなかった。

今思えば、私にはまだ早すぎたのだろう。

同級生で、もちろんそれらを読みこなし、見事に感想文を書いて提出している子もいたが、私の国語力では無理だった。

その時の経験から、「読書はつまらないものだ」とインプットされてしまった私は、少女コミックばかり読む、恋に恋する小中学生をやり、

高校になっても社会人になっても、自分を読書から遠ざけて来た。

息子が産まれてからは、大好きな漫画を読む時間さえなくなっていたが、私が30代になって、少し余裕ができてきたので、若い頃から好きだったビレッジバンガードによく行くようになった。

そして、ある本をうっかり手に取ってしまったのだ。

それは、ゲッツ板谷さんという作家の「板谷バカ三代」というギャグエッセイだった。

表紙には、西原理恵子氏の面白くて可愛いイラストで、おばあちゃん、お父さん、ゲッツ板谷さん、そしてその弟の4人の絵が描かれていて、なんだか読みやすそう。

私は、本を読めないというコンプレックスを克服するため、読んでみることにした。

主人公のだいぶ変わった家族の物語で、特におばあちゃんとお父さんがとんでもない変人で、ゲラゲラ笑いながら読んだ。

「本ってこんなに面白いんだ」

一気読みした本を片手に、ゲッツ板谷さんの文才に、感動で涙さえ出てきた。

最初から、難しい物ではなく、くだらなくもユーモアたっぷりの、こーゆー本を読んでいたら、私も本好きな小中学生になっていたかもしれない。

「日本文学全集」を恨んだ。向こうさん達は、「恨まれるようなことは何もしておらんが」と言っていることだろうが。

その日から、私はそれをバッグの中に持ち歩き、繰り返し繰り返し読んでは爆笑していた。

うっかり地下鉄の中で読んでしまった日には、私が声を漏らして笑うので、周りから奇異の目で見られた。

それから、何か面白い本はないかと、街の本屋さんに行くのが習慣になった。

たった1冊の本がきっかけで、30代にして、やっと私の読書人生がスタートした。

最初は、ゲッツ板谷さんのエッセイを全部読み、その後、田口ランディさんの「コンセント」「アンテナ」「モザイク」を読んだ。不思議な物語だった。

田口ランディさんの小説を読んでから、心理学や哲学にも興味を持った。

そして、スピリチュアルの本にも辿り着いた。

当時はまだ本屋さんにスピリチュアル専用のコーナーはなく、お店の片隅のオカルトコーナーに陳列されていた。

読書のおかげで、私の人生は変わった。

なんでもかんでも人のせいにして、毎日、イライラしていた私が、本を読むほどに、少しずつ自分を変えていった。

なぜ、イライラしてしまうのかを考え、気分を直し、心を平安に暮らすことに専念した。

また、健康ヲタクにもなった。健康に関する本を読んで、それまでの自分の食生活を後悔した。

健康的に暮らす本や、どうしたら病気にならないか?また、うつ病の本もたくさん読んだ。

現在は、それぞれのブームは過ぎ去ったが、

今もちょっとは健康に気を使い、ほどほどにスピリチュアルを好み、心理学や哲学の本も読んだりする。


好みの本の種類は2〜3年サイクルで変わり、今は、また小説やエッセイを読みたくなっている。


読書の虫になって、とにかく毎日何かの本を読んで25年ほど経ったが、最近、老眼が進んだせいか、もしくはスマホでTikTokやX、インスタを見る時間が増えてしまったからか、本を読むペースがかなり落ちた。

今年は、書く方にも挑戦し始めて、どうやったら面白い文章が書けるのか?模索している。

模索というより、「もがいている」と言った方がいいかもしれない。

書いても書いても、自分の文章がつまらないのだ。

そんな時、神からのお告げがあった。

「それなら、感性を磨き続けたらいいと思うが、あなたは情報を目で見る方が得意か、それとも、耳から聞いた方が得意か?」
「私は、耳からのほうが理解しやすいです」
「それなら、オーディオブックはどうじゃ?」
「なるほど。オーディオブックは考えたこともなかったけど、いいかも」

早速、Amazonの「Audible」というアプリをダウンロードした。
最初の1ヶ月は無料で、翌月から月々1,500円で何冊でも読める。

本1〜2冊分だから、格安だ。

私は、早速、宮島未奈著「成瀬は天下を取りにいく」を選んだ。

この本は、私の敬愛する西川貴教さんが帯を書いていてとても面白いと絶賛していたので、前から読みたかったのだ。

イヤホンを両耳にさし、再生ボタンを押した。

女性の声で、第一章から読み上げられていく。

成瀬あかりというある意味天才気質だが、素朴で純粋な、とてもかっこいい女の子の中学2年生から高校3年生までの物語で、

西武大津店の閉店を巡り、成瀬が毎日夕方放送されるテレビに出ようと、その百貨店に足繁く通う。

カメラの近くをウロつくので、まんまとテレビには映るが、決してインタビューはしてもらえない。

ただ、毎日テレビに出るので、少しずつ認知度が上がってゆく。

ある章では友人の島崎みゆきがストーリーの語り部になったり、
成瀬のことなど全然知らない、ただ西武大津店が閉店になることをきっかけに、同窓会を開こうとする中年男性が語り部になったりする。

人と人とが、どんどん繋がっていくのだ。

私が面白いと感じたのは、実際に大津にある百貨店やマンション、スーパーなどの固有名詞が出てくることと、「滋賀といえば西川貴教」があまりにもサラリと登場するところ。

地元愛がすぎるのだ。

あぁ、私もこんなふうに名古屋のことを書いてみたい。

イヤホンを耳に入れ、通勤のバスの中や寝る前、起き抜けのボーッとしている時に聞いて、3日で全て聴き終えた。
寝床に入って電気を消した後も聞けるので、かなり効率が良くはかどった。

これを、実際に読むとなると、雑音がない場所でラジオやテレビを見ている以外の時間で、寝る前の数分でと、おそらく1ヶ月ほどかかっただろう。

ものすごく面白かったので、続編の「成瀬は信じた道をいく」という、成瀬が大学生になってからの話も聞いた。

今作は成瀬の行方が気になり、2日で聴き終えた。


それほど面白かったということだ。

すっかりオーディオブックの使い心地が気に入った私は、次にずっと読みたいと思い、手元に本もあるのになかなか読み進めなかった「ソフィの世界」という有名な哲学書を聞いている。

もちろん、印字された本を読むことも好きで続けて行きたいが、
なかなか読みづらかった本や、小説なんかはこちらで聞いていくのもアリだなと感じている。


目から入ってくる情報に疎く、耳から入ってくる情報に強い私にとって、本当に素晴らしいシステムだなと思い、ここに紹介した。

今まで月に1冊ペースだった私が、月に5〜6冊は新たな本を理解することになるだろう。

そして、感性が磨かれ、面白い文章が書けるように、、、なりますように。

❤︎LOVE&MIND&SOUL&MUSIC♬



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