見出し画像

子どもがワクチンや輸血を受ける権利とそれを受け「させない」親の権利のこと

日本に一時帰国中だった3月8日、わたしの暮らすドイツ・ハンブルクにある新興宗教「エホバの証人」の施設で銃撃事件が起きたことについては以下のnoteでもお伝えしました。

エホバの証人は輸血を拒否する信仰で知られ、輸血拒否カードを持っています。患者には「治療の自己決定権」がありますが、医師には「患者の救命のために全力を尽くさなければならない」という義務があります。

そのため、救命に輸血が必要な場合、医師は非常に困ったことになります。

日本でもドイツでも裁判所は、原則、医師の救命義務より患者の自己決定権を尊重するからです。

結果として、医師側には、①輸血を行うことを伝え、患者が拒否したら治療を断る、②患者の意志に従い、輸血を行わずに治療を行うの二択しか残らないことになります。

その後、負傷者の安否についての報道はありませんでしたが、搬送先の大学病院に勤める友人によれば、幸い全員を輸血なしで救命することができました。ただ、亡くなった人の1人は妊娠しており、結果として、胎児1名と自殺した犯人を含む計8名が命を落す惨事となりました。

マイボディ、マイチョイス


以上の話の根底にあるのは、「マイボディ・マイチョイス(自分の体のことは、自分で決める)」という考え方です。

この言葉は、かつてはウーマンリブ、現在ではフェミニズムと呼ばれる市民運動の中で、女性の性や生殖に関する決定権、特に、妊娠中絶権を求める標語でした。

ところが、最近ではこの「マイボディ・マイチョイス」はワクチンに反対する人たちが掲げる代表的な標語ともなっています。つまり、輸血にしろワクチンにしろ、かつては“医療を受ける権利“の話だった「マイボディ・マイチョイス」が、”医療を拒否する権利“の話に変わってきているのです。

もっとも、本人の意志で決めたことであれば、どちらも患者の権利ということでたしかに間違いありません。

しかし、たとえば、親が「自分の子の輸血に同意しない」といった場合はどうなのでしょうか。

一刻を争う緊急時、子どもの命は親のもの?

わが国において、自分が受ける医療行為に対する意志を示すことができるとみなされる年齢は、その医療行為の内容、病院や学会の判断などによってばらつきはありますが、一般的な診療契約年齢は18歳、臓器提供なら15歳、妊娠中絶なら

ここから先は

2,242字

¥ 980

正しい情報発信を続けていかれるよう、購読・サポートで応援していただけると嬉しいです!