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エホバの証人銃撃事件、負傷者への「輸血」はしたのか?

3月9日、ドイツ・ハンブルクのわが家の近所にあるエホバの証人の施設で銃撃事件が起き、8人が死亡(胎児1名、犯人1名を含む)、8名が重傷を負いました。事件の起きた教会の現在の様子については、こちらの記事に書いたとおりです。

聖書を額面どおり解釈することで知られるエホバの証人では、創世記9章4節、レビ記17章10節、申命記12章23節、使徒行伝15章28節29節などにある「血を避けるべき」とする聖書の一節に基づいて、輸血を禁じていることは有名です。

日本でも、エホバの証人の信者が自分の子どもの治療に必要な輸血を拒否したり、患者の意志を確認せずに輸血を行った病院側が訴えられ敗訴するなどさまざまな問題が起きています。

厚労省、宗教2世への輸血拒否は「虐待」とする新指針

統一教会問題を受けた厚労省は昨年12月、信者の親を持つ「宗教2世」への児童虐待防止を理由として、輸血を含め子どもに必要な医療を受けさせないことは虐待であるとする新しい指針を発表しました。

とはいえ、信者の親からすれば、子どもへの輸血拒否は虐待でも何でもなく、善意と正義です。

エホバの証人などの宗教2世を支援する弁護団が先月開いた記者会見によれば、教団では信者に子どもへの輸血を拒否するよう引きつづき指導しているそうです。

新型コロナワクチンの時もそうでしたが、個人の信条と医学上の必要性やベネフィットは時としてぶつかり合い、どちらを優先させるべきかで判断の難しい議論を巻き起こすことがあります。

失血のため輸血が必要な負傷者は4名

ドイツでもエホバの信者が本人や子どもの手術や治療、臓器移植などで必要な輸血を拒否する事件はたくさん起きています。

先日のハンブルクのエホバの証人の銃撃事件では、8名(内訳は、女性6人、男性2人。ドイツ人6人、ウガンダ人1人、ウクライナ人1人。すべて成人)の負傷者のうち、失血のため輸血が必要な状態の人は4名との発表がありました。

警察の特殊部隊がたまたま近くにいたことと、現場がハンブルグ大学病院の近くだったことから被害は最小限に食い止められ、負傷者たちは速やかに救急搬送されましたが、負傷者全員がエホバの証人の信者であることがはっきりしている中、病院は救命のために必要な輸血をするか否かで厳しい判断を迫れることになりましたが、輸血は行われたのでしょうか。

実際には輸血に同意する場合も

の同意に基づいておこなわなければならな人は、事故や病気の悪化など意思表示ができなくなった緊急事態に備えて「治療指示書Patientenverfügung)」を作成し、信頼する弁護士や医療施設に託すことができ、多くのエホバ信者はこれを持っていると言われています。

ところが、エホバの証人の信者の中には、教団や他の信者からのプレッシャーの中で治療指示書を作った人も一定数にのぼり、

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