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結局、ワクチンで新型コロナ後遺症は防げるのか、発症率「1~2割」は本当か

新型コロナウイルスの「後遺症」の予防に、ワクチンは有効なのでしょうか。

ワクチンの後遺症予防効果を見た国内外の論文は1000本以上あります。しかし、接種したワクチンは、種類も違えばスケジュールも異なります。感染したウイルスの型も違えば、感染のタイミングや回数、重症度も受けた治療も違います。システマティックレビュー(複数の論文のデータを比較検討したもの)もいくつかありますが、バイアスや交絡(因果の判断を邪魔するもの)を取り去ることはほぼ不可能です。そのため、世界の専門家の間でも意見が割れていました。

日本でも先日、厚労省の研究班が、東京・品川区、大阪府八尾市、札幌市の5歳から79歳の住民約19万5000人を対象に行ったアンケート調査を行ったところ

成人の1割から2割余りが咳や倦怠感などの症状が感染から2か月以上続いたと答えた
ワクチン接種者は非接種と比べ、成人でも子どもでも症状が続いた人の割合が25%から55%低かった

との結果が得られたとの報道があり、欧米諸国でもWHOが各国から受けている報告でも発生率はだいたい似たような数字です。

日本人でワクチンが効いているようだ、というのもいい話です。

しかし、この話を聞いた時のわたしの率直な感想は、「ふーん、感染から2か月の自己申告の症状で1割から2割か」というものでした。

理由は先ほど書いた「交絡を排除できない」ということ以外に2点あります。

1つ目に、WHOは後遺症の定義を「通常は、発症から3か月以上たっても消えない症状(最低でも2か月続くもの)を指す」としています。つまり、感染から2か月経って続いている症状でも3か月くらいまでに消える症状については、回復しても消えない症状(=後遺症)ではなく、回復期の症状として考えてもいいということです。

わたしも今年の春、コロナに感染した時は咳が約2か月続き、定期的に出演している日本のラジオ(文化放送「おはよう寺ちゃん」隔週水曜朝5時~)で咳をしないよう話すのにとても苦労しました。しかし、このスタディでは、わたしのような厳密には後遺症とは言えない症状が続いた人、つまり、日常生活に支障を来すほどの症状でも治療を受けたわけでもなく数カ月で症状が消えた人も含めている可能性があります。

半年も1年もの間、ブレインフォグや倦怠感に悩まされている人と、2か月以上咳が続いただけのわたしを同じ「後遺症」としてひとまとめに扱うことは問題の本質から目を遠ざけている、という気がします。

2つ目に、1割から2割といった数字です。確かに、欧米でもWHOの報告でも似たような数字です。しかし、肌間隔として本当にそんなにたくさんの本当の意味での「後遺症」と言えるような人がいるのか、という違和感です。もちろん、ただの印象です。傍から見えない、人には話していない症状を半年も1年も抱えている人もいることでしょう。ただ、本当に問題とすべき後遺症とそうではないものを一緒くたに扱っている可能性は否定できません

そんな中、先月末、北欧はスウェーデンから新型コロナ後遺症に関する、興味深い大規模スタディの結果が発表されました。

スウェーデンを始めとする北欧の国々では、ワクチン接種歴はもちろんのこと、病気の罹患歴から受診歴、処方、ドラッグストアにおける市販薬の購買歴から妊娠中絶歴まで、ありとあらゆる医療に関する国民の個人情報を国が一括管理しています。国はそのデータでビジネスをしており、世界中の研究者や企業がそのデータを有償で利用できます。北欧で開発される薬が多いのはそのためです。

スウェーデンでコロナに感染した58万9 722人を対象に2020年12月27日から2022年2月9日までの期間、自己申告ではなく医師が後遺症と診断した人の割合を調べたところ、後遺症が出た人の割合は

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