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山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第116回 卒業式系ソウル特集


厳密には存在しないんだけど、なんか呼び方が定着しちゃったジャンル名っつーのがありますよね。

橋本徹さんが提唱した、軽くておしゃれで聴きやすいソウル・ミュージックを指す“フリー・ソウル”とか、

ホームセンターやスーパーの店内で流れてそうなチープなソウルやフュージョンを指す“ホームセンター・ファンク”とか、

エモーションズの『ベスト・オブ・マイ・ラヴ』やシェリル・リンの『ガット・トゥ・ビー・リアル』のコード進行とリズムパターンを流用したディスコを指す“スウェイ・ビート”とかね。

オレも何か新たなるジャンルを発明したい。

そして流行らせたい。

考えた挙句、見つけた答えは『卒業式』でした。

卒業式で流れても違和感のない、涙を誘う感動的なソウル・ミュージック。

目を閉じれば、青空に舞い上がる無数の学帽が浮かんでくるような、エンディング感丸出しの、やりすぎなぐらい泣けるソウル・ミュージック。

曲の途中で、『力を合わせた、運動会!』とか『みんなで行った、修学旅行!』とか『いっぱい走った、マラソン大会!』とか、茶番全開の呼びかけをしても完全にハマるソウル・ミュージック。

オレはそれをグラジュエーション・セレモニー・オブ・ソウル……つまり“卒業式系ソウル”と呼ぶことにしました。

というワケで山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第116回は、“卒業式系ソウル特集”と題して、俺が独断と偏見でチョイスした卒業式っぽいソウル・ミュージックを紹介していきたいと思います。

えっ、歌詞が全然卒業式感ないって?

そうか……

お前は金輪際ウチの敷居をまたぐな!!!

二度とオレにそのツラを見せてくれるな!!!!

大人になれないヤツは置いていく!!!!!

『旅立ちの日に』はもう古い!!!!!!!!

『卒業』したいヤツだけついてこい!!!!!!!!!




一曲めは、ザ・トンプソンズで『アイル・ゲット・オーヴァー・イット』。

幼少期よりゴスペルを歌っていたトンプソン三兄弟と、その友人であるサンディ・アンダーソンによって結成されたコーラス・グループ、ザ・トンプソンズでございます。

なんだよ! トンプソンズとか言って一人だけトンプソンじゃねーじゃん! サンディ除け者かよ! マジ許せねえ! お前サンディの気持ち考えたことあんのかよ! 


と義憤にかられる御仁もいらっしゃるでしょうが(いない)、兄弟を中心に結成された黒人コーラス・グループにはよくあるネーミングなんですよコレ。

アイズレー・ブラザーズだって途中から六人編成になったけど、兄弟だけじゃなくていとこのクリス・ジャスパーもいたからね。

しかも途中から仲違いの挙句に分裂して“アイズレー・ブラザーズ”“アイズレー・ジャスパー・アイズレー”になったからね。

まぁまぁ、そんな目くじら立てんなっつー話よ(そもそも誰も立てていない)。

で、コレはそんな彼らが唯一リリースしたアルバムの一曲ですね。

1975年作。

もうイントロから卒業式ですよね。

卒業式すぎますね。

コード進行からコーラスワークに至るまで、完全に卒業式ですよ。

これはもう言い逃れできないレベルで卒業式ですよ(さっきから何言ってんのオレ?)。

ラスト間際で繰り返される『アイ・ウォント・ユー アイ・ウォント・ユー アイ・ニード・ユー』って歌詞がもう最高に泣けますね。

結局ね、『アイ・ウォント・ユー』って裏声で歌い上げるのがソウル・ミュージックですからね。

裏声で、本気で、切実に愛を歌い上げるのがソウル・ミュージックの真髄ですから。

『愛なんて何処にもないのサ…』なんて格好つけてるうちはソウル・ミュージックをわかっていないと思います。

このアルバムは当時あんまりプレスされなかったんで、オリジナル盤はかなりな値段で取引されているレア盤なんですけど、他の曲もめちゃくちゃ良いです。



二曲めは、ヴァイオリネアーズで『テイク・タイム・トゥ・プレイ』。

あのウィルソン・ピケットが在籍していたことで知られるゴスペル・ソウル・グループ、ヴァイオリネアーズでございます。

その歴史は長く、結成はなんと1952年、ライヴ盤やベスト盤も含めるとリリースしたアルバムは30枚近くというヴェテランですけれども、そんな彼らの1976年の傑作であります。

もうね、アルバムタイトルからして卒業式ですよね。

『ア・メッセージ・トゥ・マイ・フレンズ』ですよ。

卒業式にも程がありますよね。

ジャケもいつメンのプリクラ感あるしね。

で、この曲はアルバムの最後を飾る大トリなんですけども、これがまあ、大変に卒業式なワケです。

イントロのピアノからもう卒業式ですよ。

ファルセット全開、繊細なピアノとむせび泣くギターが涙を誘う、非常に感動的なスウィート・ソウル・バラードです。

一瞬挟む転調も憎い。

これ聴いて卒業できないヤツはダメですね。

何をやってもダメですよ(だからさっきから何言ってんのオレ?)。



三曲めは、ジーン・ヴィアーレで『アイ・ウィッシュ・ウィード・オール・ビーン・レディー』。

ゴスペル・ゴッド、ジェームス・クリーヴランドのバッキング・シンガーとして活躍したジーン・ヴィアーレでございます。

1975年作。

まあまあまあ、大変な卒業ですよね。

卒業式系ソウルに燦然と輝く大名曲ですよ。

これを聴くたびにありもしない思い出が矢継ぎ早に脳裏に蘇りますよ。

ハートウォーミングも休み休みにしてくれって話ですよ(頭おかしいんじゃないの? オレ)。

作曲は、クリスチャン・ロックのパイオニア、ラリー・ノーマン

非常に素晴らしい仕事をしております。

これが我々の卒業アンセムです。



四曲めは、イリュージョンズで『アイド・ライク・トゥ・セイ・アイ・ラヴ・ユー』。

70年代末から80年代初頭にかけて活躍したソウル・コーラス・トリオ、イリュージョンズによる、一世一代の大名曲であります。

1977年作。

イリュージョンズはね、ファースト・アルバムが1981年リリースなんで、それ以前のキャリア、つまり1970年代のシングル群は好事家以外にはあんま知られてないです。

でもね、70年代イリュージョンズ最高ですよ。

もちろん80年代のチャラくて踊れるディスコ・ソウルなイリュージョンズも俄然最高なワケですけども、卒業式系ソウルという観点から鑑みて激推ししたいのはやはりこの曲ですね。

やりすぎなぐらい感動的なストリングス、優しく寄り添うヴィブラフォン、ソウルフル極まりないヴォーカル、どれをとっても琴線に触れまくりです。

完全にご法度です(は?)。

卒業式のみならず、冠婚葬祭オールオッケーな全天候型ユーティリティ・プレイヤーです。

オレがもし死んだら、出棺のときは絶対これ流して欲しいです。




ハイ、というワケでいかがでしたでしょうか、山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第115回 帰ってきたオーパーツ・ミュージック特集、そろそろお別れのお時間となりました。

次回もよろしくお願いします。

お相手は山塚りきまるでした。


愛してるぜベイべーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!

















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