連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第九話
この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。
第九話 猛スピードで祖母は(アドレナリン・ドライヴ)
9月30日、午後1時20分。胃ガンにより享年71歳で春野ウメが息を引き取ると、ミチハルとビワコは一度病室から出され、遺体を霊安室へうつすための準備がはじめられた。勤続23年のヴェテラン看護師・秋山と、新人看護師・岩田は病室に入ると、まずウメの遺体に手を合わせた。そして秋山は丸眼鏡を指で押し上げると、落ち着いた声色で岩田に声をかけた。
「岩田くん」
しかし看護師となって初めての遺体処置を行う岩田は、緊張しているのか青ざめた顔をしており、秋山の声は届いていないようだった。
「岩田くん」
ふたたび秋山が声をかけたが、岩田はせわしなく辺りをキョロキョロ見回しながら爪を噛んでおり、やはり秋山の声は耳に入っていないようだった。
「岩田くん!」
秋山が声を張り上げると、ようやく岩田は返事した。
「あ、は、ハイッ!」
心ここにあらず、といった感じの風態の岩田に溜息をつきながらも、秋山は指示を出した。
「……岩田くん、まずガーゼと消毒液、それから脱脂綿の準備を」
「あ、はい、ガーゼと消毒液、それから脱脂綿、ですね」
岩田は指示通り、五段積みのワゴンカートからそれらを取り出そうとしたが、あっちを開けたりこっちを開けたりとまるでスムーズではなかった。岩田はしきりに首をひねりながらブツの捜索を続けたが、やがて諦めたように息を吐くと、秋山を振り返った。
「ありませんでした!」
「ない?」
「はい、もぬけの殻です! おそらく全て忘れたものかと思われます!」
「……岩田くんは、この仕事をナメてるのかい?」
「ナメていません! 全くナメておりません! マジで本当にナメておりません!」
情熱に満ち溢れたまっすぐな瞳を向けてそう言う岩田に対し、秋山は長い前髪をかきあげると呆れたように肩をすくめた。
「……岩田くん、一体どうしたっていうんだい」
「何がでありますか?」
「キミがいくら新人といってもねえ、不手際にも限度というものがあるよ」
「はっ。自分もいま、己の未熟ぶりを痛感している最中(さなか)であります」
「しかもさっきからずっと、心ここにあらずという感じだ。何かあったのかい?」
「……あの、これは、なんというか、大変申し上げにくい話なのでありますが……」
「申し上げてみなさい」
「……自分はいわゆる霊感というものがありまして、人ならざるものの気配や存在を感じることがままあるのであります」
「……それで? 先ほど亡くなった患者の幽霊がベッドに佇んでいる、とでもいうのかい?」
「いえ、そうではありません。むしろ逆であります。自分はどうも、亡くなったとは思えないのです」
「バカなことを。死亡確認はとっくに終わっているんだよ。霊安室などで息を吹き返す例もなくはないが、このケースでそれは有り得ない」
「はっ。ですから、奇妙な感覚なのであります。患者は亡くなっているようでいて、同時にまだ、生きているような気がするのです。死の匂いがぜんぜん感じられないのであります」
「……バカバカしい。いいか岩田くん、二度とそんなふざけたことを言うなよ」
「はっ、申し訳有りません」
「今の話は聞かなかったことにしてやるから、さっさとガーゼと消毒液、脱脂綿を持ってきたまえ。私は春野さんの私物の整理をするから」
「アイアイサー!」
そうして岩田がワゴンカートを押して廊下へ出てゆくと、秋山は病室をぐるりと見回した。死の匂いが感じられない? 何を言っているんだか。秋山はベッドの傍へ立ち、横たわる故人の顔をじっと見つめた。弛緩しきった身体も、土気色の顔も、鼓動を止めた心臓も、あきらかに生きている人間のそれではない。その風貌のすべてが生命活動を停止したことを如実に物語っていた。
「まったくバカバカしい……何が生きているような気がする、だ……おや?」
ふと足元を見ると、何か棒状のものが転がっているのが秋山の目に入った。拾い上げてみるとそれはひと組のドラムスティックであった。そういえばこの亡くなった患者は、バンドでドラムを叩いていたと聞いたような気がする。病室の壁にはスケボーも立てかけてあるし、さぞかし生前の故人は活発なご老人であったのだろう。秋山はドラムスティックを握ると、何気なくベッドの手すりを軽く叩いてみた。
——カツ、カツ、カツ、カツ。
小気味好い音が、静まりかえった病室に響き渡った。
——カツ、カツ、カツ、カツ。
楽器経験のない秋山にとって、ドラムというのはたいそう不思議な楽器に思えた。両手足をばらばらに動かしてリズムを作り、各セクションをまとめあげ、楽曲を推進させるというのは実に驚異的な行為に思えた。秋山はふと、若い頃にドイツへ留学に行ったときのことを思い出した。なんでもドイツではドラムセットのことを“バッテリー”と呼ぶのだと……。そんなことを思い返しながら、秋山がドラムスティックを弄んでいたその瞬間であった。
何かが、秋山の腕を掴んだのである。
あまりに突然の出来事に秋山は悲鳴を上げることすらできずその場に硬直した。そして何が起きているか理解したとき、秋山は思わず卒倒しそうになった。ベッドから突き出した故人の手が、秋山の腕を掴み上げていたのである。
そして。
故人は目をバチっと開くと、産声のような、けたたましい叫び声をあげた。
『ヒイちゃあああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!!』
そのソウルフル極まりないシャウトに、秋山は腰を抜かすのも通り越して、その場で失神し倒れた。故人、いや元・故人、いややはりこの場合は故人と呼称すべきか、とにもかくにも春野ウメはガバリと飛び起きるとあたりを見回した。清潔な病室には気絶した看護師 a.k.a 秋山をのぞいて誰もおらず、開け放たれた窓から吹き込む風でカーテンが静かに揺れているばかりであった。ウメは思った、たしかにじぶんは死んだはずだと。めくるめく走馬灯の末に真っ暗闇へとたどり着き、自我が急速に溶けてゆくところまで、ウメははっきりと憶えていた。そうだ、そしてその最期の刹那、今際の際に、叫ぼうとしたのだ。世界にたったひとりの、愛する孫娘の名前を。そうしたら、どういうワケか、ふたたびこうして目覚めることができたのだ。しかもそのうえ、ウメの身体はかつてないほどの活力にみなぎっていた。全身を蝕んでいた癌による痛みは消え、モーローとしていたハズの意識は4K並みに澄み切っており、五感も鋭く冴え渡っていた。ほとばしるほどのかつてないパウアを感じながらウメはベッドから降りると、その場で足踏みを二、三回した。だいじょうぶだ。なんともない。立てる。そうしてウメは足元に転がっていたドラムスティックを引っ掴むと、壁に立てかけてあったスケボーを脇に抱えた。ふたたび目覚めたウメにとって、やるべきことはたったひとつしかなかった。
「いま行くかんね、ヒイちゃああん!!!!!」
孫が——ヒナタが呼んでいる気がしたのだ。ひとりぼっちでさびしくて不安な孫の姿が、ウメには見えたような気がしたのだ。ならば、祖母としてそこに向かわなくてはなるまい。祖母として寄り添ってやらなくてはなるまい。病めるときも健やかなるときも孫を愛し、守り抜くことこそが、この世の全てのババアに与えられた崇高なるミッションであると、ウメは心の底から信じていた。
入院着のままで病室を出ると、ウメはスケボーに乗って廊下を爆走した。プッシュ、プッシュ、プッシュ、プッシュ。ひたすら右足で床を蹴りながら、猛スピードでウメは院内を駆けていった。“病院内をスケボーで爆走するババア”という強烈な絵面に、すれ違う患者たちはただ一様に目を丸くして口をあんぐりするばかりであった。ナースステーションに差し掛かるとウメは素早く身をかがめてカウンターの下へと姿を隠し、ついに病院関係者の目に触れることなくエレヴェーターにたどり着いた。まるでウメの到来を待っていたかのようにエレヴェーターの扉がゆっくりと開いた。しかしその向こうに立っていたのは、ワゴンカートの取っ手を握った岩田であった。
「……え?」
眼前の光景が信じられなかった岩田は目を瞬かせたが、ウメは堂々と『何か?』と尋ねた。岩田はコンマ一秒であらゆる可能性を考慮した末に力なく「いえ……」と答えるのがやっとだった。そうしてしずしずエレヴェーターを出ていく岩田と入れ違いにウメはエレヴェーターにINした。しまる扉を岩田はしばし見つめていたが、やがてワゴンカートを放り捨てるとダッシュで病室へと向かった。もしや、もしや、まさか、まさか、どうか、どうか見間違いであってくれ。岩田がそう祈りながら病室の扉を開けると、果たしてベッドはもぬけの殻で、その下には秋山が白目を剥いて倒れていた。岩田は慌てて秋山を抱き起こした。
「先輩っ! しっかりしてください、先輩っ!」
目を覚ました秋山は錯乱状態で両手をばたつかせながら叫んだ。
「ああッ! うわあッ!! うわああああああーーッ!!!」
「先輩! 落ち着いてください、僕です、岩田ですっ!」
「ああッ、あああッ、やめろッ、やめろーーーーーーッ!!!!」
「先輩、気を確かに! 丹田に力を込めて深く呼吸してくださいっ!」
「いっ、岩田くんッ! 岩田くぅううンッ!!! 君の言った通りだったッ! 死んでなかった、あのババア、死んでなかったッ! 私の腕をこうやって、バッと掴んでッ、イーッて!」
「はっ、自分も見ましたっ! どうすればいいんでしょうか! この場合、どういう処置を取るのが適切なんでありますかッ!?」
「知らんっ! こんなのっ、私の看護人生でも初めての経験だッ! とりあえず、今はただ、ひたすらに怖いッ! マジで怖い、めちゃくちゃ怖いッ!」
そうして岩田と秋山が病室で大騒ぎしていると、ミチハルとビワコが訝しげな顔で様子を見に来た。
「……あのぉ、ど、どうかしましたでしょうか?」
岩田と秋山は声を揃えて叫んだ。
『ババア、死んでませんでした!!!』
ミチハルとビワコはわけがわからず、目を丸くして声を揃えていった。
『……はあ?』
……いっぽうその頃、ウメはオーリーやボードスライドを駆使してすでに一階ロビーを突破し、病院を出たところであった。久方ぶりの直射日光と外気に包まれながら、ウメはスケボーに乗って車道へと飛び出した。
「ヒイちゃん、いまっ、いま行くかんね〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
そう叫んだ瞬間、ウメはスバルのインプレッサWRXに跳ね飛ばされた。激しい衝撃によってスケボーは折れ、ドラムスティックは転がり、ウメの身体はアスファルトへと叩きつけられた。車から降りてきた若い青年ドライバーは青ざめた顔でウメに駆け寄った。
「わっ! あっ、あっ、だ、大丈夫ですかっ!?」
ウメは自らの力でヨロヨロ立ち上がると、ドラムスティックを拾い、血まみれの顔面をドライバーに向けて叫んだ。
「心配ゴム用!!!」
すると若い青年ドライバーは目を白黒させながら叫んだ。
「え、う、う、ウメさんっっ!!!?」
ウメは目をパチクリさせながら放心した声でいった。
「ありゃ、奇遇だんね。ジローさんじゃあないか」
なんたる運命のイタズラ a.k.a 偶然。スバルのインプレッサWRXを運転していたのはジローであった。唐突に飛び出してきた老婆をクルマで轢いてしまった&その老婆が知己の仲であったというWショックに打ちのめされたジローはとにかくテンパりまくった。
「いや、え、あ、なっ、とっ、とにかくっ、きゅ、救急車呼ばなきゃ!」
「いらん! むしろいま病院から逃げてきたとこだわい!」
そしてウメは、テンパりまくるジローを尻目に、折れたスケボーを見やると顔をしかめた。
「む……これでは、もう使えんなぁ……」
「う、ウメさん、ねえ、ちょっと……」
「すまん、ジローさん。頼みがあるんだけども聞いてくれんか」
「え、は、はいっ、なんですか?」
「わたしを車に乗せて、大至急SAWAGASHIまで向かってくれんかえ?」
「え、え、ええっ!?」
「絶対ぜったいぜ〜ったい、どうしても、わたしは行かなくちゃならんのよ。どうかお頼み申します、力を貸しておくれ」
「や、そ、そんなこと言われても……な、何が、なんなのか、さっぱり……」
深々と頭を下げるウメを前にジローが困惑しきっていると、助手席から降りてきた人物が声をかけた。
「えーやん、乗せたっても。どーせウチらも行くんやし」
「あ、アズキちゃん、今はそういうこと言ってる場合じゃ……」
「むしろこんなとこで押し問答してる場合ちゃうやろ。ケーサツとか救急車とか呼ばなくて済むんなら、ウチらとしてもラッキーやろ。乗せたってや」
そして助手席の人物——大納言アズキはサングラスを外すとウメの顔を見た。
「ども。色々話は聞いてたけど、会うのんは初めてですねえ。ジローの妻の大納言アズキですぅ」
アズキが派手なアロハシャツの裾をつまんでうやうやしく挨拶すると、ウメも手術着の襟を正して頭を下げた。
「ありゃまたこりゃまたご丁寧にどうも、春野ウメでありんす」
「ま、とりあえず乗ってー。お話はそれからっちゅーことで」
「どうもどうもどうもどうも、それじゃあ失礼いたしんす」
そしてウメはイソイソと後部座席に乗り込み、意気揚々と拳を掲げた。
「それじゃジローさん、レッツラ・ゴン」
「ゴーン」
助手席に乗り込んだアズキもそれに追随し、ジローは苦笑しながらハンドルを握ると車を走らせた。
「しかしアレですな、今から向かうとはなかなか悠長ですなア」
「や、朝方余裕持って出るつもりだったんですけど、何ていうか、そのう……」
「昨晩ちょっとハシャギすぎたな、うちもあんなん久々だったから調子乗りすぎた。脳の血管全部ブチ切れるかと思ったもん、ヨダレ全開や」
アズキがケラケラ笑いながらいうと、制するようにジローはいった。
「まあまあまあまあ、とにかくそのー、きのうの夜ちょっと遊びすぎて、それで朝寝坊したっていう話です。それよりあの、ウメさん、入院してたんですか?」
「うん、ほんのちょび〜っとねえ」
「ぜんっぜん知らなかったんですけど。何で言ってくれなかったんですか」
「心配かけたくなかったんよ。心配で問題が解決したためしはないべしゃ」
「いや、まぁ、そりゃ、そうですけど……でも、“孫と私”って出演キャンセルとかなってないじゃないですか?」
「んん、ヒイちゃんはひとりでも出るっちゅうてなぁ……」
しみじみウメがそういうと、アズキが口を挟んだ。
「でもおばあちゃんも当日ギリになって、やっぱ出よう思って病院脱走したゆうこと?」
「そのものズバリ。アズキさんは話早くて助かるなあ」
「熱い。ジロちゃん、このおばあちゃんめっちゃ熱いわ。こりゃやっぱ、“孫と私”の出番に間に合わせなアカンやろ」
「や、それはさすがに無理でしょ、あと二時間ないし……」
ジローが首を振りながらぼやくようにいうと、後部座席でウメはのけぞった。
「二時間!?」
「“孫と私”の出番は17:50。いまもうすぐ16時になるとこです。さすがにこっから会場まで二時間は、ちょっと……」
「そげか……」
がっくりうなだれるウメを尻目に、アズキがぶっきらぼうな口調でジローに尋ねた。
「どんぐらい無理なん?」
「どんぐらいって、どういう意味?」
「十段階評価でいうとどんぐらい無理なん?」
「え……それはつまり、一が最低で十が最高ってこと?」
「せや。一が最低で十が最高ってことや」
「え〜……だとすると……ニ……いや、イチ……かな」
「なに弱音吐いてんねん!」
アズキはジローの肩を思い切り殴りつけた。
「痛っった! なにすんの!?」
「ジブンなめとんちゃうぞ! 挑戦するまえから無理とか言うアホは大っ嫌いや!」
「いや、だってさ、仮に、仮にだよ? 間に合うスピードで飛ばしたら絶対ケーサツ来るって」
「まいたらええやん。音楽かけたら一発やろ」
「いや、それは、その、まずいよ……」
難色を示すジローにウメが小首を傾げた。
「音楽??」
アズキは後部座席を振り向くと、手をひらひらさせながら答えた。
「ほら、ハンドル握ると性格変わるみたいな人おるやろ? ジロちゃんはハンドル握って、なおかつ爆音で音楽かけると性格変わんねん。脳細胞全開バイブス急上昇、チャキチャキの走り屋になんねや」
しかしそれを否定するかのようにジローはぶんぶん首を振った。
「ダメダメ、安全運転、安全運転っ! ウメさんには悪いけど、それはちょっとできないよ」
「なんでや!」
「いや、だって、シンプルに危ないもん。それはちょっとマズいって」
ちょうど十字路にさしかかったとき、目の前の信号が黄色に変わった。ジローは停止線でぴったり車を停めるとドリンクホルダーからタンブラーを抜き取り、それを開けてごくごく飲んだ。
「あ、それ、ウマ用の興奮剤入っとるで」
「ぶほ! っぐ、ゲッホエッホ!! な、なんでそんなの入れたの!?」
「ウケるかなって思って」
「っあ、あ、ああ〜〜〜〜〜っ……! し、心臓軋む……!」
「よっしゃ、その勢いでもうぶっ飛ばしてこうや!」
そしてアズキはダッシュボードを開け、そこに詰め込まれた大量のカセットから一本を抜き出すとそれをカーオーディオへと差し込んだ。ガチャンという音とともにカセットが吸い込まれると、アズキはカーオーディオのヴォリュームを全開にした。Ilianの『Hey Denise』がスピーカーから爆音で流れ出すと、アズキはまっすぐ前を指し示した。
「行け、ジロー!!!!!」
ジローはハンドルに額をぴったりくっつけたままうなだれていたが、やがて全身をブルブル震わせると仰け反るように天井を仰ぎ、大声で叫んだ。
「う、う、う……っ……うおおおおおあああああああああああ!!!!!!!!!!」
そしてジローはゴリラのドラミングよろしく胸を両手で何度も叩くと、完全に瞳孔の開ききった四白眼でウメを振り向いた。
「ウメさんっ、ガチでリアルにマジの本気でブッ飛ばすからな! 会場着くまえに死ぬんじゃねえぞ!!」
その言葉に、ウメはニヤッと笑って答えた。
「死なねェさ」
ジローがアクセルペダルを底まで踏み込むと、猛スピードで車は発進した。三人を乗せたインプレッサWRXは暮れなずむ街の光と陰の中を流れ星のごとき速度で突き抜けていった。
♪Sound Track : Hey Denise / ilian
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