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「作りたい!」と言ったら15万円もらえた話〜私とLab①〜

「小さな夢」ありますか?

こどもの頃、将来の夢って書きましたか? 小学校とか、中学校とかのとき。幼稚園でもいいです。私は中学生までパティシエになりたくて、「将来値打ちが出るので持っといてくださいね!」と先生にサインを押し付けた記憶があります。

こんな感じで、小さい時に考えた夢って「職業」が多かったと思うんですよ。パティシエとか美容師とか、公務員、とか。でも、働く年齢になって、小さいころの夢とは違うかもしれないけど「職業」についている。そうするともう「将来の夢はなんですか?」と聞かれることは少ないでしょう。

でも、「夢はなんですか?」とは大人にも問うていいんじゃないでしょうか。職業じゃなくても、もっと小さな叶えたいことでも、それは夢ですよね。次の食事にカレーが食べたい、でも大きな枠で見れば「夢」と言ってもいいでしょう。カレーを自分で作るなり、買ってくるなりその夢の実現のために行動が必要なのですから。きっとみんな小さな叶えたいことがある。そんなふうに思います。


夢の値段は、10万円

私の場合、2019年に生まれた「小さな夢」はアクセサリーを作ることでした。ただのアクセサリーじゃないです。カテゴライズするなら「物理アクセサリー」。「化学アクセサリー」って見たことあります?六角形のベンゼン環とか、セロトニンの構造式とか、試験管のイヤリングとか。そういうの。私は大学生のころ何がきっかけか忘れたけれどその化学アクセサリーを見つけて、「めっちゃ可愛いじゃん!」と興奮したものです。

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(作品はst drop laboratory様

大学院で物理に転向してしばらくした頃、ふと思ったのです。

あれ、昔化学アクセサリー好きだったけど、物理のアクセサリーって見ないな?

物理学の実験系研究室の私。ものづくりは大好きです。そして研究者のマインドとして、「ないものは作る」というのも共通認識かと思います。何が言いたいかと言うと、「この世にないなら私が作りたい!」と思うのは、私にとって自然だったということです。

私が思いついたのは「ファインマンダイアグラム」という、物理でいう反応式のネックレス。私が見たことがあった構造式アクセサリーは金属だったので、同じ感じで金属で作りたい、と思ったはいいものの、金属のパーツの注文の仕方なんてわからない。そもそも何個から発注できるんだろ。「金属加工 小ロット」とか、Googleの検索窓に適当に打ち込んで出てきた会社に、物は試しと問い合わせをしてみました。

「こんなのが作りたいんですけど。」

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返答は、

「アクセサリーは、型を作って、溶けた金属を流し込む鋳造が一般的です。
金型が約10万円の投資が必要ですが、1個あたりの単価は安くつきます。」

…ですよね。初期投資が必要だし、たくさん作れば作るほど安くなりますよね。一個だけ作るとなると一個10万円のネックレス・・・いやいやいや。となると、たくさん作って売るのが現実的でしょう。物理アクセサリーだったら、物理の布教にもなるし。でも、そもそも学生の私は10万円なんて持ってなかったわ。


キジも鳴かずば叶わない

さて、ここまでのお話は、完全に私の脳内のお話でした。この時点で誰にも話してません。5ヶ月くらい「10万か〜」と思いながら過ごして、忙しさのうちに忘れかかっていました。

そんなとき、いきつけのコワーキングプレイスTsukuba Place LabFriday Night Bridgeというイベントをやっていることを知りました。投資家と起業家をつなげるピッチイベントです。

尖ったアイデアやおもしろいビジネスモデル、これからの時代を切り開く最先端技術などをはじめとする熱量ある野心家が集まりプレゼンするイベントです。そして先見性や野望、構築されたビジネスモデルに対してはその場で投資が決まります。

資金調達のイベントなんてあるの?あの、10万かかるからって諦めかけてたアクセサリー、作れるんじゃ?!でも説明には起業家向けって感じのことが書いてあるなぁ。

代表である堀下さんに、ダメ元で「こんなことを考えているんだけれども、個人でも出られますか?」と聞いてみた。答えは、

「いいじゃん!」

言ってみるもんだ。

ジャンプのコピーで「夢は口に出すと強い」っていうのがあったけれどまさにそれだな、と思った。彼らの「夢」は大きいものだけれど、それは小さな夢でも同じ。なんで「口に出すと強い」かというと、仲間ができたり、支援してくれる人が現れるからなんだなぁ、としみじみと実感しました。
人との出会いが、夢を叶える。だから夢は口に出した方がいいんだ。


「作りたいんです!」で広がったものづくりの世界

さてはてそんなこんなでピッチに登壇できることになったゆーみるしー。しかし、投資家向けのプレゼンなんてしたことはありません。というわけで自分の研究を専門外の方に説明するときのようなスライドを作りました。つまり・・・「この形、実際に物理学者が使ってるんですけど、シンプルで可愛くないですか?!」「作りたいんです!」という主張をしまくった。今見返すとひどいスライドだ・・・

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他の起業家のプレゼンは、市場規模がこれくらいで、僕らはこういう価値を提供して、このように収益化します、という、今思えば当たり前の、「僕らは投資してもらうに値します!」と主張するものでした。翻ってそもそも販売計画なんで考えてない私。そりゃそうだ、もともとひとりの趣味で作りたかった物で、世の中のニーズなんて考えてなかった。むしろ「私がほしいから作るんだ!」という究極のジャイアン理論。いやー、よく「出直してこい!」と追い出されなかったもんだ。

そんな未熟なプレゼンでも、チャンスをくれた人たちがいた。なんと、その場で2人の投資家が支援してくれることになったのです。一人は「おもしろいプレゼンだったから」とポケットマネーで5万、

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もう一人は、「経営計画や、投資家へのリターンを考えたら」という条件で10万。

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合計15万、目標達成。

この15万円は、初めて「ものを作るためにもらったお金」だった。これだけ支援してもらったのだから、いいもの作らなきゃ!と気合を入れた。貸してもらった3Dプリンタで形の試作を重ね、製作会社と素材を検討し、15万で作れるギリギリの数を発注した。最初に描いたラフと相違ない、綺麗な金色のペンダントトップが出来上がった。

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(「粒や」という屋号で現在販売しています。)

長いことものづくりをしてきた私でしたが、「自分のためにも、人のためにも作る」、そんな経験は初めてでした。支援してくれた方には、一生かかっても恩が返しきれない気がしてます。


言葉は夢を叶える祈りであってほしい

一個人が右も左もわからず金属アクセサリーを作るのは難しいと思ったけれど、思い切って「作ってみたいんです!」と言ったら叶った、という私のエピソードでした。

私の場合、投資してくれる人が見つかった、とか3Dプリンタを貸してくれた人がいた、とか、運が良かったという部分もあると思います。でも、そういう人たちと出会えたのは、私がTsukuba Place Labで「やりたい!」と声をあげたから。「こういうことやりたいんだよね」と言ったとき、「そんなの無理だよ」、と言う人もいるかもしれない。でも、それはただの呪いです。ミラーシールドついてる盾を心に構えといてください。

いつかやりたいな〜というふわっとしたことでもいいと思うんです。人に話すことで思いがけない支援が得られるかもしれない。それはすぐ叶うかもしれないし、しばらくは叶わないかもしれない。祈るように口に出していくことが夢の道を運んでくるんじゃないかと思います。口に出して、夢を叶え続ける。そんな人生を歩みたい。

私は、次は「粒や」の実店舗として、自分で宇宙スイーツを作って提供する「物理カフェ&バー」を作りたいです。各位、よろしくお願いします。


この連載は「Tsukuba Place Lab」で私がやってきたことのまとめ兼Tsukuba Place Labの宣伝記事です。この記事を読んでLabに興味を持った方は是非足を踏み入れてみてください。
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