見出し画像

トライアスロンに出ました。

前回の記事からかなり時が経ってしまった。良くないサボり癖というものは頻繁に顔を出すものである。前回はトライアスロンに挑戦してくるぜ!アディオス!的な記事を書いてしまったので、その詳細を書き記しておこうと思う。

準備期間は約半年。急ピッチでの準備と調整には骨が折れ、本番もしんどくはあったがなんだかんだ楽しかったので良かったと思っている。

前日入り
まずは京都から伯方島まで約5時間の道のりを運転しなければならない。この時点ですでにレース時間より長いではないか。せっかくの土曜日に何をやっているんだという思いを噛み殺し、黙々と荷物を詰め込む。
それにしても荷物の量がすごい。ロードバイクをはじめ、ウェットスーツやヘルメットなどのトライアスロンギアが車内のスペースを次々に埋めていく。5人乗りの乗用車なのに定員1名というカオスな状態が出来上がった。空きスペース活用術の匠が見たら卒倒するだろう。重量的にも燃費が悪い。環境活動家からはお叱りを受けるだろう。
一緒にエントリーした友人2人とは現地合流のため、おひとり様長時間運転となる。当然助手席には無言の荷物しか乗っていないので、連絡を取り合うことも叶わない。よって特に何も起こらず、マジで書くことがない。というわけで伯方島に到着したこととする。異論は認めない。

伯方島で高速を降りるとすぐ目の前がスタート会場だった。夏の日差しを跳ね返す瀬戸内海が目にまぶしく、既に大勢のトライアスリートが受付のために会場入りしていた。近辺の道路には前日試走に勤しむ者も多数見受けられたが、私は体力温存のためにバイクで軽く試走するだけに留めた。
受付でゼッケン番号を伝えると、手首にゼッケンバンドを装着された。防水性のある紙のようなものだったが、これはレース終了まで取ることができないそうだ。気持ち悪い事この上ない。首輪をつけられている犬ってこんな感じなのだろうか。だが、私と違って彼らは死ぬまで(下手したら死んだ後も)首輪を外すことが出来ない。かわいそうだ。

レース当日。スタート前
レースのスタートは7:30。いつもの出社時間より早い。つくづく休日に何をやっているんだろう。
余裕をもって会場には朝5時過ぎに到着したが、選手用駐車場はほぼ満車。みなスタートの2時間以上前から会場入りし、入念に準備を積み重ねていた。
参加者名簿を見た時から思っていたが、年配の参加者が圧倒的に多い。40代50代が一番多い印象であった。やはり道具を揃えるのに金がかかるからだろう。20代にはなかなか厳しい。自分で言うのもなんだが、収入のあまり多くない20代でこんなことやるの変人しかいないだろう。

レース前の様子。トランジットエリアが混み合う。


スイム1.5km
いざスタート。まずは上半身を主に使うスイム競技。ブイで作られたひし形のコース(1周750m)を2周する。
ウェットスーツに身を包んだトライアスリートたちが次々と伯方の海に飛び入っていく。これで俺も鉄人デビューだ!!と、まだゴールした訳でもないのに意気込んでいた。
伯方の海は美しく、水深が深くなっても底が見えた。しかしこれは優雅な海水浴ではない。レースだ。さらにコースは参加者で混み合い、殴り殴られの水中大乱闘が繰り広げられていた。腕を回すと気をつけていても誰かに当たる。そして当てられる。水中なのでもちろん「すみません」などとは誰も言わない。いかに空いてるスペースを探し、潮に流されず、ペースを乱さず泳げるかが大事だと分かった。これはカナヅチには絶対無理だろう。
1週目の後半からは泳ぎのリズムをつかみ、うまく人をかわしながら進むことができるようになっていた。するとこれがなかなかに楽しい。ランニングなどと違って基本的に聴覚が作用していないため、身体の動きや呼吸そのものに集中できる。情報に溢れた現代社会において、このような感覚は大事にしなければならないなあ、などと思っていたら平泳ぎしているオッサンから脇腹を蹴られた。ちくしょう。
2週目のゴールが近づき、水底との距離が縮んでくる。その光景にある種名残惜しさを感じていた。おじさんおばさんに囲まれながらプールで練習した日々、琵琶湖のスイム練習で水草がバシバシ顔面に当たったことなどが頭を過った。やがて足が着くようになり、スイム競技完了。
しかし、まだまだレースは始まったばかりである。

バイク40km
名残惜しさを感じながらスイムが終わったが、余韻に浸っている暇は無い。ウェットスーツを脱ぎながらバイクの置いてあるトランジットエリアへと駆け込んでいく。なんでこんなびしょ濡れでバイクなんか乗るのだ。マジでトライアスロン考えたやつどういう脳みそしてんだろう。
海水で湿った足が靴下をなかなか通さない。ヘルメットとサングラスを装備し、いざ出発。約13kmのコースを3周する40km区間。全競技の中で最も時間の占める割合が大きいメインレースである。
唸れ俺の太もも!進め中古のロードバイク!
しかし、序盤に立ちはだかる急峻な上り坂がやる気をへし折ってくる。立ち漕ぎしなければ上れないほどの急斜面が太ももを襲った。立ち漕ぎはエネルギー効率が良くないからやらない方がいいという情報は持っていたが、そんなの構ってられるか。立たなきゃ上れないんだもの。
周囲を見るとみんな座ったまま漕いでいるせいでスピードが出ていない。一方立ち漕ぎストである私は彼らを横目にグングン順位を上げていった。
なんだ、大したことねえな。俺の何倍も値段しそうなロードバイク乗ってても遅いじゃん。
なんて思ったのも束の間、下り坂に差し掛かった途端に猛追を受けた。ここがバイクの性能差なのだろうか。グングン抜いていった人達にグングングンと抜かされていった。平地でもそれは変わらなかったのだが、大きな要因としてビンディングシューズの存在がある。
ビンディングシューズとはペダルとシューズが一体化するロードバイク用のシューズだ。ペダルに引っ掛けて使うため、脚を押し込む時だけでなく引き上げる時にも力を伝えられる。よって効率良く進むことができるのだ。周りは皆ビンディングシューズを着用していたが、私は普通のランニングシューズを履いていた。なぜかというと金が無かったからである。ロードバイクだけで10万を超える出費だ。当時は車を買った直後でもあったため、そこまで回せる金が無かったのだ。
「まあランニングシューズで出る奴もけっこういるだろ~」
という考えは甘かった。そんな奴私しかいなかった。多分上り坂でランニングシューズ野郎に抜かされたことがトライアスリート達の逆鱗に触れたのだろう。資本力の差を見せつけられるように上り坂以外では抜かされる一方だった。おばちゃんに抜かされた時はさすがに心が折れそうになった。
上りで順位を上げ、それ以外で順位を落とすという行為を3回繰り返し、バイク競技が終わった。次こそはビンディングシューズを買って出場しよう…

ラン10km
バイクで資本主義の厳しさを知ったが、ここからが私の真骨頂、ラン競技のはじまりはじまり。バイクで大幅に落とした順位を上げるにはここしか無い。汚名返上、名誉挽回の8文字が頭を駆け巡った。
まずトランジットが誰よりも速かった。皆ビンディングシューズを脱いでランニングシューズに履き替える行程があるが、私にはそれが無い。バイクから降りたら即走れまっせ!という状態でロケットスタートを切った。貧乏人なめるな!
しかしバイク40kmの疲労は確実に下半身を蝕んでいた。太ももにうまく力が入らず、フォームが定まらないまま走り出さざるを得なかった。しかしそれはみんな同じ条件のため、絶望することは無い。年配の参加者に財力では劣るが、体力では劣らない。バイクで私を抜いた人達を復讐と言わんばかりに抜きまくった。これが気持ちいったらありゃしない!!
性格?ええ、悪いですよ。何を今さら。
参加者がマラソンなどと比べて多くないため、参加者の服装とかを何となく覚えているのだ。
「あっ!さっきあの道で俺の事抜いたやつだ!」
進研ゼミでやった問題だ!的な感じで参加者の判別が付く。そうなると私はハンター同然である。狙った獲物を確実に仕留める(抜き去る)ことが楽しく、かねてから自分はドMと思っていたが、実はドSの部分も持っていたんだなあという新たな一面を見つけた。
ラスト1km地点でスパートをかけた。このスピードのままフィニッシュできるだろう。あと10人は抜けそうだ。
1人、2人、いい感じ。もうゴールは見えてきた。さあ、ラストの直線。数十メートル先には一人のオッサン。よし、あいつを抜いてゴールしてやる!

そう息巻いた私を悲劇が襲った。

オッサンのご家族がフィニッシュ手前で乱入し、私の走路を塞いだのである。といってもこれはルール違反ではなく、この大会独自ルールで同伴フィニッシュが認められていた。お仲間と一緒にゴールテープを切って最高の写真を撮ろう!みたいな粋な計らいである。決してオッサンの家族が非常識なわけではない。
しかし小さい子供がはしゃいで走路が塞がれ、抜くに抜けない状態となってしまった。フィニッシュ目前でもし子供を蹴飛ばしてしまったりしたら私の人生もフィニッシュしてしまう。最後の最後でペースダウンを余儀なくされ、ゴールテープはオッサンに切られ、フィニッシュ写真はオッサンの家族に被って映らないという気持ち悪い結果となった。

初めてのトライアスロンは思わぬ伏兵の登場により、若干しこりが残る結果となった。しかし、全体を通して言えば辛くはあったものの楽しかったと言える。しんどさだけで言えばフルマラソンの方が確実に辛い。3種目あるから変化があって飽きないのも大きいだろう。
次はビンディングシューズを履いて、オッサンに邪魔されないようフィニッシュしたいという誓いを立てた。2回目はどこの大会に出ようか…

おまけ
トライアスロン完走後、友人からこんな画像が送られてきた。

2位と3位が私の趣味だ。

大きなお世話だ!と叫びたいが、これが残酷な事実なのだろう。マラソンに加えてトライアスロンも初めてしまった私はこれで孤独死のリーチがかかった。ますます彼女ができなくなってしまうのだろうか。
今のところアイドルの追っかけをしたい欲はゼロなので、首の皮1枚つながった状態である。

この記事が参加している募集

#夏の思い出

26,313件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?