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痛さを表す単位

右腕が痛い。子どもの頃「うるさいな!痛い痛いと言って治るなら、いくらでも言え、言ってもしょうがないなら黙っていろ。聞いてる方が迷惑だ。甘えるな」と、誰かに言われたことがあった。父だったか、先生だったか、お医者さんだったか?もう思い出せない。ただ、男性だったと覚えている。

病院ではよく「どんな痛みですか」と聞かれる。「ずーん、と重いような感じ?ズキッとする?ピリピリする感じ?」そう聞かれても、どういうのがずーんなのか、わからない。味覚や触覚は「ほら、これ食べてみて。甘いでしょ」とか、「この滑らかさ、いいよね?」とか、ある程度共有できるのだが、痛覚に関しては難しいなと思っている。

20年前くらいにネット上で「痛みの単位は国際基準としてhanage(ハナゲ)が採用された」という記事が出回った。「1cmの鼻毛を1N(ニュートン)の力で引っ張る時に生じる痛み」が基準となっている。「タンスの角に足の小指をぶつけた時の痛みは200 khanage」で、「お産の時の痛みは2.5 ~3.2 Mhanage」という単位の目安もあった。わたしは「タンスの角に足の小指をぶつけた時の、あの痛みがキロ程度なのだから、お産はメガ、それも最大3.2とは!」と、笑ったのを覚えている。もちろん、これはジョークの話である。当時は本当に国際基準になったと信じ込んだ人も多かったらしい。

さて、昨日、リハビリで症状の説明を受けた。
診断名は『右肩関節周囲炎 右肩関節拘縮』とあり、その下に
『可動域制限:屈曲 90p 外旋1 15p 外旋2 45p』
と書いてあった。「ん?このpというのはなんですか?」「痛みの単位です」マジで?痛みの単位があったのか!! わたしの脳内はシャキッとした。
これから痛みを表現するのに、この単位が使えるじゃないか!

しかし、単純に90pがどれくらいの痛みなのか、という話ではなかった。
屈曲とは、腕をバンザイした時にどこまであげられるか、という話だった。
基準は180°なので、90°までしか上がりませんよ、という話だ。痛みの単位というよりも、硬さの目安だと思った。ここまで曲げる(あるいは回す)と痛みが出ます、みたいな。この可動域が180°に近づくようにリハビリをしていくということだ。なるほど。やはり数値化すると見えてくるものもある。

病気や怪我は困る。でも、病気や怪我をすることで知らなかったことがまた一つ、経験と知識として増えていく。もしかしたら生きていく上で、知らなくてもいいことかもしれないが、まあ、これがわたしの人生だ。楽しもう。


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