箱
箱が好きだ。紙製と缶の箱を集めている。そのほとんどがお菓子のパッケージだ。なにかを入れて再利用する場合もあるし、押入れから出して時々眺めて楽しむだけの箱もある。他人には、押入れに溜まった空き箱を整理しようかどうしようかと悩むおばちゃんに見えるだろう。しかしわたしは、そのときうっとりと宝物を眺めている気分だ。
パッケージデザイナーを尊敬している。その箱に収めるお菓子や雑貨を、より素敵に見せる技術。フタを開けるときの心踊る瞬間を演出するデザイン。お菓子を食べるのがもったいないような、箱に入れたままずっと取っておきたくなるような、そんな箱が理想だ。
ほとんどの箱は、底面に対して、側面が垂直に立ち上がっている。わたしはこの、箱の四隅や底面と側面に存在する直角に萌える。中でも、簡素な展開図をしっかりとした紙で箱型に仕立て、和紙のような薄い紙で包むように仕上げてある箱が好きだ。こういう箱は和菓子のパッケージに多い。手触りも和紙のそれで趣があり、マットな質感の印刷も少しインクが滲んだように見えるものが多い。その微妙な線のブレが愛おしい。老舗の商品などは、古風な書体で店名や菓子の銘などが入っていて、これがまたオツなのだ。
一方で、洋菓子はコート紙など表面にツヤのある紙で組み立てられた箱が多い。バレンタインのチョコレートの箱は、形も色も美しく、表面に指紋をつけないように注意深く開ける必要がある。箱に綺麗なシールが貼られている場合、これは剥がしたくないが、蓋と本体を留めてある場合は、そうとう悩むことになる。シールを切って箱を開けるか、丁寧に剥がして開けるか。たいていの場合、シールは剥がすときに爪で引っ掛けるため、角がヨレる。これが気に入らない。そして、剥がすときに粘着面と表面の紙が裂けてしまう場合がある。さらに、シールに箱の一部がくっついて、紙の表面が持って行かれることもある。「ひっ」とか「ぎ」とか声が出てしまう。切ればよかったと思ってももう遅い。
わたしはお土産を頂いたとき、「まあ!これは結構な箱で」と言ってしまわないように気をつけながらお礼を言う。会合やアルバイト先では、頂き物の箱がもらえるかどうかを虎視眈々と狙っている。
そんな箱好きなわたしに、「箱だけでいいなら」と、空き箱を譲ってくれる友人がいる。彼女は箱に興味も未練もないから、ちょっと手の出ない高級チョコレートの箱や、外国の珍しい箱も惜しげもなく「はい、どうぞ」と渡してくれる。それでわたしのコレクションは、ずいぶん幅が広くなった。
コツコツ集めた箱が押入れにいっぱいになってきた。これを捨てずに、どうしたら活かせるかを考えている。机の引き出しの整理とか、貴重品の保管とか、使いようはあるにはあるが、大小さまざまな箱にふさわしい使い方を見つけるのは至難の技だ。だから今日も、出しては眺め、眺めては仕舞う。そして「ああ好きだ」とうっとりするのだ。
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