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朝ドラ『虎に翼』が面白くなる3つの視点〜「多様化」は女性にとって幸福な変化か? すべてイエスでない理由

4月6日放送のVoicyでは、日経xwomanの女性の多様化についての記事を紹介しながら、4月から始まったNHKの朝ドラ『虎に翼』がもっと面白くなる3つの視点を紹介しました。

連続テレビ小説「虎に翼」は、日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー。困難な時代に立ち向かい、道なき道を切り開いてきた法曹たちの情熱あふれる姿を描いたドラマです。 この『虎に翼』がもっと面白くなる視点として紹介した3つの視点とは、
⑴女性を取り巻く時代はどう変わってきたのか?

⑵女性活躍、多様性を尊重する機運の高まりの結果、女性は幸せになっているのか?

⑶主演の伊藤沙莉さん、語りの尾野真千子さん、脚本家の吉田恵里香さんという今回のドラマで欠かせない存在となっている3人の魅力 です。


一つ目、女性を取り巻く時代の変化について。

男尊女卑の価値観があからさまだった戦前戦後の日本社会の中で、伊藤沙莉さん演じる寅子が、 結婚よりも、法曹の道を進む中で、当時はまだ無かった『女性初の弁護士』という生き方をどう実現していくか、を応援していく楽しさがあります。

二つ目。多様化が女性の幸せにつながっているか、の視点について。 記事の中では、女性の多様化は進んだと声高に叫んでいるけれども、その内実は、『仕事をする、しない』『結婚する、しない』の選択肢に集約され、

さらに、結婚後の女性の働き方は非正規雇用というスタイルが多いとの指摘があります。 その背景には、家事・育児の分担は依然として女性がするもの、という価値観が残ってしまっている実態が挙げられます。 その結果、仕事をし、結婚するという選択をした場合には、家事育児との両立がほぼ無理ゲーとなり、非正規雇用、時短、パートで働く選択肢を取らざるを得ない状況になっている。

つまり、“選択したくないけど選択せざるを得ない選択肢になってるんでは?”という疑問が湧いてくる。 それなら、『虎の翼』で寅子の親友、花江のように戦略的に結婚し、専業主婦になる選択が幸せな気もしてきます。

でも、現代では、共働き世代がこれだけ増えてくると、専業主婦の道はかえって狭き門。 “選択したくても最早選択できない選択肢”になりつつあります。

となると、 『虎の翼』の世界のように、選択肢がほとんどない中でも、自らの選択に変えてしたたかに生きる、あるいは当時はまだ無い選択肢を新たに作ろうとしてきた昔と、 選択肢はあるように見えて、実際は選べない選択肢や、選択したくないのに選択せざるを得ない選択肢ばかりの現在。 どっちが幸せなのでしょうか?

寅子の親友花江や、寅子の母はるが決して不幸には見えない描き方をされているからこそ、 女性が本当に求める多様性、女性が幸せになる選択肢とは?を考えていく面白さもありそうです。


三つ目。 伊藤沙莉さん、尾野真千子さん、吉田恵里香さんに注目してみる視点。

伊藤沙莉さんは主役、脇役、声優とマルチな活躍でギャラクシー賞テレビ部門の個人賞されており、坂元裕二さん脚本の『大豆田十和子と3人と元夫たち』でのハスキーボイスでコミカルなナレーションが印象的でした。 寅子が女性はこうあるべき、という固定観念に違和感を覚えるときに呟く「はて?」のセリフは、癖になるような響きがあって、早速今年の流行語大賞にノミネートされそう。 これまでの女性なら当然と言われてきた歪んだ価値観をいろいろ崩してくれそうな正直で真摯な演技に共感できます。

尾野真千子さんは渡辺あやさん脚本の『カーネーション』で腰の座った啖呵の切れる男らしいヒロインの糸子を演じ、同じく渡辺あやさん脚本の『火の魚』では離島に暮らす偏屈な作家を担当する若い編集者として、その偏屈さに物怖じしない凛とした態度が魅力的でした。 今回も、女性の本音を淡々と、でも悲観的にならず、むしろところどころクスッと笑ってしまうような語りに期待しています。


そして、脚本家吉田恵里香さんは、『恋せぬふたり』で向田邦子賞を受賞、渡辺あやさんや坂元裕二さんを尊敬する脚本家さんにあげていらっしゃるとのこと。社会からはみ出してしまう人を愛らしく描き、社会の不平等や差別、違和感を無視せずに熱量をもって描いてゆく両作家さんのエッセンスを活かした意欲的なドラマになると期待しています。


そのほかにも、出てくるスイーツや食事が毎度華やかで美味しそうとか、寅子の母石田ゆり子さんの女性観、娘を思う気持ちに泣きそう、とか、岡部たかしさんや、小林薫さん、松山ケンジら俳優陣の演技も素晴らしいなど、色々ありますが、今回はそんなところをお伝えしてみました。 良かったら聞いてみてくださいね。

(日経xwomanアンバサダーblogより転載)

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