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Reason

当たり前が当たり前じゃなくなって
何もかもが未知で上書きされた生活も
もう1年以上が経つ。
少しずつではあるけれど新しいスタイルが
浸透していき日常が戻りつつある。
恐らく、収束したとしても完全に元通りには
ならないだろう。
それでも、変わった世界で一喜一憂しながら
強く生きている。

「お客さん入れてライブするんでしょ?
 やっとだね。」

スマホ越しに聞こえる君の声は明るく、
どこか嬉しそうだ。

「久しぶりにお客さんの前で歌うから
 めちゃくちゃ緊張してる。絶対歌詞飛ぶ…。」

「ライブは生物(なまもの)なんだから、
 そういうことがあってもそれはそれで
 良いかもよ?」

君の言葉はいつも僕の心を軽くしてくれる。

「トラブルもミスも全部演出、ってことだな。」

「ふふ、そうだね。当日行けないのが本当に
 悔しいけど、最高に楽しんでね!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「今日は来てくれて本当にありがとう!
 声は出せなくてもみんなの熱い気持ちは
 しっかり届いてます!!」

会場にはマスクをしたたくさんのお客さん。
目だけでも楽しみにしてくれていたことが
よく伝わってくる。

始まる前は今までにないほど緊張していたのに、
いざ始まってみると緊張なんかすぐ吹っ飛んだ。

生配信用の機材を通さずに、
直接みんなに自分の歌を届けられる喜び。
感動して歌えなくなりそうだった。

「きっと、今日ここに来ることを悩んだ方が
 たくさんいると思います。その選択に正解は
 ないし、決めようがないんです。」

誰も経験したことのないことだから
みんな正解だし、みんな間違ってる。
それを責める必要はない。

「だけど来てくださったからには最高に
 楽しんでほしいし、楽しんでもらえるような
 パフォーマンスをしたいと思ってます。」

僕の歌を待っててくれる人が1人でもいるのなら
僕は、歌い続ける。

「…最後に、この曲を届けたいと思います。
 聞いてください。"Reason"。」

ピアノのソロから始まるこの曲は、
どうしても有観客のライブで歌いたかった。

初めて自分だけで作詞をした曲。
伝えたいこと、想いを等身大の言葉で歌いたい。
何度も書いては消してを繰り返して
ようやく完成した Reason 。

配信限定シングルとして世に出したものの、
この状況でなかなかライブが出来ず
披露する場面がなかった。
無観客で開催した配信ライブを何度もやったが、
この曲は歌ってこなかった。

目を見て心を繋いで、伝わる想いがある。

見えないものを繋いでいくこと。
それがきっと、音楽の力。


変わりゆく世界の中

僕の時間は止まらない

みんながいるから、君がいるから

それだけで僕が歌う理由になるんだ


「まだまだ、みんなと見たい景色があります!
 僕はこれからも全力で走っていくんで
 みんな着いてきてくださいっ!
 絶対に、後悔させません!」

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