見出し画像

ビッグイシュー編集部の端っこ席から①

ビッグイシュー編集部で働かせてもらっていて幸せだなと思うことの一つは、なんといっても、誰かの"善意"に日常的に触れられることだ。「世の中捨てたもんじゃない」。そう思える瞬間が度々あることで、私自身もどれだけ救われているか分からない。下記は最近のほっこりしたお話、です。

8月○日   「はじめまして。翻訳者の〇〇です」。国際記事などを翻訳してくださっている翻訳者のAさんが事務所に来られた。Aさんが翻訳してくださった記事は何度も目にしているけれど、今回が初対面だった。といっても、今回事務所に来られたのは、仕事の用事ではない。なんと、本誌を読んで共感したという某NPOさんにボランティアとして参加され、そのNPOの業務の一環で来られたのだ。「あの記事を読み、このNPOさんのご活動にとても感銘を受けたんです。家も近いことから、ボランティアをさせていただくことにしました」
8月△日   いつもお世話になっているフリーライターHさんと、同僚宅に生後1ヵ月半の赤ちゃんに会いに行く。抱かせてもらうと、たまらなく癒やされた。同僚のパートナーも元同僚。二人とも私よりうんと年下ながら私よりうんと成熟した思考の持ち主で尊敬している。赤ちゃんはスイマーバという浮き輪を装着して、びっくりするぐらい生き生きと浴槽の中を泳いでいた。希望のかたまりだ。
9月○日   「すみません、料金を間違えてしまいました」と、若い女性が事務所に突然来られた。表紙右上に記された390号という文字を見て、「390円だと思って、400円しかお渡ししていなくて。あとで450円だと気づいたんです」。そういって、わざわざ事務所まで足を運んでくださって、50円を差し出された。「〇〇〇で買いました。販売者さんにお渡ししていただければ」。
9月〇日   販売者Hさんが「これ、見てください!」と声を弾ませて、私のデスクまで来てくださった。見ると、なんと可愛いイラスト! 「お客さんがね、描いてくださったんですよ。本当にうれしいです。拡大コピーして販売時に飾っておこうかな」。Hさんは目を細くしっぱなしだった。描いてくださった方は、Hさんのことを思い出しながら家で筆を取ってくださったのだろう。そうやって少しでも心を寄せてくださる方の存在ほど、心強いものはない。

画像1

9月11日  (手前味噌だが)ビッグイシューの創刊17周年記念日。17年前に日本でビッグイシューを立ち上げるために奔走した、佐野章二、水越洋子、佐野未来の3人に改めて尊敬の念を抱く。借金を覚悟してまで、この日本に、小さくても一つのセーフティネットを誕生させた。そしてこれまで、一度でも路上に立ったすべての販売者さん、一度でも購入してくださったことのある無数の読者の方々、ボランティアさん、インターンさん、各所スタッフ、関わったすべての方々の力で、このセーフティネットが17年間も途切れずに今に至っていることに、しみじみと感動する(課題はもちろん山積みだが)。
9月○日   LLCインセクツさんが主催する「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」のオンラインマーケットイベント「オンラインわいわいまつり」に出展させていただくことになった。スタッフ有志で、このイベントで販売する編集部おすすめバックナンバーセットや、イベント先行発売予定のビッグイシューオリジナルグッズなどについて相談。スタッフNさんと元インターンのKちゃんの20代メンバーが惜しみなくいろんなアイデアを出してくれて頼もしい。
9月14日   あれ? そこに座っているのは……Bさんではないですか! 販売者を卒業し、今は関東で暮らしているBさんが事務所へ来てくださった。今日は新しい号が刷り上がり、事務所に届く日。定期購読者の方々などへの発送作業をBさんも一緒に手伝ってくれた。
9月16日  体調がすぐれず、販売を休止されたCさん。喜寿を過ぎ、私の父とほぼ同じ年齢だ。それだけに、お体のことはとても心配になる。そのCさんと久しぶりにお会いしたら、「スタッフのみんなは変わりない? 元気にしてる?」と私たちのことをとても気にかけてくださった。今、休養しつつ、ノートに詩や文章を書き溜めていらっしゃるとのこと。

画像2

9月△日 これは個人的な話ながら、岸政彦さん監修の「東京の生活史」プロジェクトに「聞き手」として参加させて頂けることになり、楽しみで仕方ない。大阪から東京へ移り住んだ大学の先輩Kさんに「語り手」になってもらおうと思っている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?