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夢と記憶

私のことが好きだと言ってくれた人の夢を見た。
懐かしい空気の中で優しく笑うあなたを見て、あたたかい気持ちと胸がきゅっと寂しくなるような感覚で目が覚めた。
もう一度ちゃんと思い出したくて、ぼんやりとした頭で一生懸命振り返ってみるけれど、どんな夢だったかなんてすぐに色褪せてしまう。

なんだか遣る瀬無い気持ちで「夢に出てきたよ」と一言だけメッセージを送ってみる。数時間後、「いい夢だった?」と返ってきた。
懐かしい曲が、頭の中に流れた。





大切に思っていたから、恋人にはなりたくないと思った。
そんな気がする。

当時の私の気持ちや感じていたことを思い出そうとするけれど、やっぱりちゃんと思い出せなくて、今の私が過去の私を美化している。
きっと過去の私はちゃんとどろどろとした気持ちも嫌な部分もあって、だけど今の私は呑気に「昔は楽しかったな、また戻りたい」なんて軽々しく言ったりする。
記憶が全部きらきらして、かけがえのないようなものの気がして、ぎゅっと両手で抱きしめている。

過去の私はきっと辟易した顔で今の私を見ている。
勝手に私を美化しないでくれ、記憶を改ざんするなと静かに怒る。
心の中で「ごめんね」と謝る。



大好きだった気がするし、全然そんなことなかった気もする。
大切な関係だった気もするし、ただの友達だった気もする。
関係を壊したくなくてはぐらかした気もするし、ただ単に恋人という関係になれないと思っただけな気もする。

曖昧な私の記憶と共に、頭の中にはたくさんの愛しい曲が流れた。



また夢に出てきたら、
私はメッセージを送ってしまうだろう。





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