ざいたく

　
みんなが笑ってるう。

当主はご在宅である。ご在宅でお仕事中である。こんな制度は数年前にはカケラも無かった。世の中であることが起きて、以来働くということの性質が大きく変った。

しかし暑い。家の中でも熱中症！なんて記事を毎年見掛けるが、今日初めてその恐れを実感した。今住んでいるマンションは40年選手なので、ペアガラスなんて洒落たものが付いている訳がないことも大きい。熱も虫もウェルカムなのだ。

こういう時によく言われるのは、動物がいるところは涼しいということだ。過去実家で犬を見ていてもそうだった。そして今の家でも同じことが言える。どうも茶トラが開放型のクローゼットの下でばかり寝るので手を突っ込んでみると、ひんやりと冷たい。一日中日陰で熱気がこもらないのだろう。これはいいやと思って私も入ってみると、全身毛だらけになったうえ、何となく獣臭い匂いがした。

いつもはいない時間に家にいると色んな音がする。ちょうど今日はビン類を捨てる日だったので、昼過ぎにその回収車が来た。がちゃがちゃと結構派手な音を立てて次々にビンを荷台に乗せている。そういえば午前中から工事の音みたいなのがするなと思っていたら、バルコニーからすぐ先に見える家が取り壊し中だった。

そのうち隣の家からピアノの音がしてきた。最初は聞いたことのない曲がしばらく流れてきたのだが、そのうち聞こえてきたのは、サザエさんの主題歌だった。

私はピアノを習ったことがないのでよくわからないのだが、あの曲は何か指使いの練習に最適だったりするのだろうか？実はこの曲だけは前から土日にも耳にすることがあり、気になっていた。

お魚くわえたドラ猫、はまだいい。ウチもサバ缶くわえた黒ネコが出て追い掛けたことがある。問題はその後だ。みんなが笑ってる、お日さまも笑ってる、という素人目ならぬ素人耳には何でもない箇所なのだが、何故かいつもここを何度も繰り返し弾いている。

みんなが笑ってる、お日さまも笑ってる
みんなが笑ってる、みんなが、みんなが、みみ、みんなが笑ってる……

何となくそわそわしてくるのだ。

長谷川町子という人は怖い人だったとどこかで読んだことがあるが、それとはまた別の怖さがここにはある。それもわざとかどうか知らないが、みんなが、みんなが、と繰り返すのは何か意味があるんだろうか。みんなが笑ってるって、心象風景としては最悪の部類のひとつじゃなかろうか。

それでも何とか最低限のことは済ませた。みんなに笑われないように、明日は普通に出ようと思う。ふふ