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『10年』を辿って見つけたLiSAが大ヒットした本当の理由。

2020年12月30日、デビュー10周年の節目を迎える直前に彼女は、「輝く!日本レコード大賞」の大賞を受賞した。


そんな、歴史深く、栄えある賞を受賞したのは、今回が初受賞となった『LiSA』だ。

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(あの感動を、もう一度。泣いちゃう。)


私、テテマーチ株式会社でSNSにおける企画・制作ディレクションをしているタカミと申します。3度の飯より「LiSA」が好きです。興味のある分野はファンマーケティングや、オタクカルチャーなどです。推しはオタクを救い、オタクは世界を救います。


プロローグ

今でこそ、日本中の老若男女で"知らない人はいない"という状態にまでなっているLiSAだが、2019年に放映された大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の主題歌になった『紅蓮華』で存在を知ったという方も多いだろうと思う。


アニメ「鬼滅の刃」とともに、LiSA本人や楽曲の認知が増大したことは確かだが、LiSA自身の【ファン】が増えたことについては、彼女のここまで10年の軌跡を辿ってみると、アニメの大ヒットに便乗した偶然ではなく、必然だったのではないかと思う。


LiSAの歌声、人柄、生き様は、多くの人を魅了し、【ファン】にするパワーを秘めている。いや、"秘めて"いない。だだ漏れだ。


そこで私は、あることに気が付いた。


もしかして、ファンだからこそ学べる【ファンマーケティング】の考え方が、LiSAの思想や行動にありそうなのでは?


そう思った私が、日々のお仕事に活用できるくらいまでには観察したLiSAから学ぶファンマーケティングをポイントごとに紹介していこうと思う。


ファンマーケティングという分野になんとなく興味があるな~面白そうだな~というくらいのテンションで、ゆるく見ていただければ幸いです。

(ちなみに…私自身が3度の飯よりLiSAちゃん大好きな熱烈ファンなので…つい熱量を込めすぎてしまい長くなってしまいましたが…ご容赦ください。)


1.最近よく耳にする「ファンマーケ」とは

SNSマーケティングに特有なわけではないと思うが、私たちが仕事の中で日々、頻繁に触れる言葉がある。最近は特に多くなった。

それは、「ファン」という言葉だ。

まだ企業でのSNS活用が盛んではなかった時期から、SNSは(購買効果よりは)ファンを作るためのチャネルとしてポジショニングされていることが多かったためか、今では「ファンを作りたい」=「SNSやらなきゃ」という原則のようなものが浸透している気さえする。

(もちろん、本当にファンを増やしたいのであればSNSの運用だけでは事足りないこともあるし、CMもWEBメディアも、雑誌などでも、ファンは作れる&むしろあったほうがいい場合もある。と思っている。)

そんなこんなで、SNSマーケティングの仕事をしている私たちにとって「ファン」という言葉はいわば血液みたいなものだ。(血液?空気?まぁ、なくてはならない存在ということ。)

だが最近では、「D2C」などの考え方も出てきて、もはやSNSに限った話ではなく、企業やブランドにとっては"ファン作り"がホットワードになっているはず。

どんなに良いものを作ったって、どんなに安くたって、どんなに大声で叫んだって、こんなにも多くの情報や物が溢れている世の中では、届けることも、受け取ってもらうことも、容易ではない。

届かない、受け取ってもらえないということは売上も利益も立たないということ。。

◎じゃあ、どうする?どうやったら受け取ってもらえる?
まずはやっぱり、「好き」になってもらわないと。あなたじゃなきゃだめなの!あなたがいいの!って思われる存在にならないと。(これは極端ですが。)
◎じゃあ、どうやって「好き」になってもらう?
ファンマーケティングという考え方のもと、ブランディング(好きになってもらうための活動)をする。

ここで言うファンマーケティングとは、とことんファンに向き合って、その企業やブランドを「好き」で居続けてもらう(揺るがないファンを作る)方法を考え続けること。(と、個人的には思っている。)

これまでは"新規層の獲得"に注力していた企業やブランドも、ぜひ勇気を出してファンマーケティングのほうに振り切ってほしいなと思っている。僭越ながら。。

なぜなら、ファンがいる状態が、ファンを作るので。


2.「ファンマーケ」の視点でLiSAを見る

2-1.LiSAについて

まずはLiSA(リサ)の紹介。
岐阜県関市出身、6 月24 日生まれ。2011年ソロデビュー。
数々のアニメ主題歌・劇中歌を担当、全てのシングルが上位にランクインするヒットを連発。ラウド系ロックからポップスまでを唄いこなす、変幻自在さが持ち味の音楽性は、アニメファンだけでなくロックファンからも大きな支持を得ており、数々のアニメフェス、ロックフェス共に出演するアーティストとして、確固たる存在感を発揮している。

ソロデビュー年を見てもわかるように、LiSAはどちらかと言えばブレイクするまでの下積み時代が長いほうだと認識している。

しかし、デビューからブレイクまで、全く芽が出ないわけでも、人気がなくファンがいないわけでもなかった。

確かにメジャーでは有名ではないものの、むしろアニメ界やロック界の一部では「鬼滅の刃」よりも前から有名で人気もあり、なにより熱量の高いファンが多かったのだ。

LiSAがブレイクするまでも、そしてブレイクしてからも着実にファンが増えていることには理由があると思っている。この"着実"が実はすごいことなのかもしれない。

これだけの大ヒットを果たすと、その次の発売楽曲が売れなかったりすることもあるだろう。それに伴って、一発屋として見られてしまう可能性もあったはずだ。

だが、鬼滅の刃の映画主題歌になった「炎」の次の楽曲発売時も、配信サービスでは十何冠達成やら、動画配信サービスでは何千万回再生やら、もちろんCD売上なども勢いが衰えることはなく音楽業界を席巻していた。

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※2019年「紅蓮華」~2020年「炎」までがスーパー鬼滅の刃ゾーン

それに、LiSAがブレイク後に出演したテレビ番組などを見た知人・友人からも「LiSAっていい人だね」や「LiSAって歌唱力すごいんだね」などと褒め言葉ラッシュだった。
つまり、元々実力も兼ね備えていたLiSAにとって、今回の大ヒットはひとつのきっかけに過ぎなかったのだ。

ちなみに、ファンの私から見ても、ファンは確実に増大していた。2月に開催されたライブのチケット当選倍率が過去最大まで上がったそうだ。(ちなみに私は奇跡の当選。2021年で一番泣いた。)

なぜ、LiSAはファンを確実に、着実に増やすことができたのか?

なぜ、LiSAのファンは熱量が高いのか?

そのヒントは、LiSAの「ファンへの向き合い方」にあると思っている。



2-2.徹底的に「ファンベース」な思考と行動

ここからは、実際にLiSAが普段どんな風に私たちファンに向き合ってくれているのかを紹介していきたいと思う。もしかしたらここに、明日から使えるファンマーケティングのヒントがあるかもしれない。

(1ファンとして愛情を感じずにはいられない内容ばかりなので、多少にやけながら全力で感謝と尊敬の念を持って書いていきたいと思う。)


Keyword1:距離感

LiSAのファンに対する距離感は程良い。
距離感の講習でも行ってたんか?って思うくらい本当に"ほど良い。"

コミュニケーションにおける距離感の話なので、コミュニケーションが発生する2つの場所に分けて事例を紹介したい。


①オンライン(SNS)

LiSAのSNS(特にTwitter)を見たことはありますか?
Twitterのフォロワー154万人に対して、フォロー数が11・・・
11万人!?!!?!?!!

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芸能人や著名人は基本知り合いや同業界の方しかフォローしないことが多い中で、LiSAは11万人もフォローしている。この中には、LiSAのファン(通称:LiSAッ子)がほとんど。定期的にファンのアカウントを見に行って、フォローしているのだ。

それに加えて、Twitterではファンのツイートに対しての引用ツイートやいいねをして絡むことも日常茶飯事だ。

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さらにLiSAには決めているTwitterルールがひとつある。

それは、誕生日には「せめてものプレゼントになれば」という思いでツイートに"いいね"のプレゼントを必ずくれるのだ。粋な計らいである。

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あとちなみに、ツイートの頻度も「1日でこんなに!?」という程、頻繁にする。(ファンの誰よりもツイッタラーなのではないかという説もある)

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そして、ラジオやテレビの放映に関しては生放送でない限りは、一緒に視聴して実況までしてくれるほどだ。ファンにとっては一緒の時間を過ごせている実感を持てるので、たまらない。


②オフライン(ライブ、サイン会)

ライブに関しては物理的な距離も近いことが多い(このご時世になる以前は、客席まで来てくれる演出がお決まりだった)上に、ステージ上からもファンと会話をすることが多々あった。
ライブ終盤の写真撮影の時に楽曲のワンフレーズを歌ってポーズを決めて撮影するというシーンがあったのだが、そのワンフレーズの歌唱もファンを指名して歌ってもらっていた。

そして、CD発売記念として開催される恒例の0距離イベント「秘密のサイン会」。
これに関しては、おそらく全イベントの中で最も長い時間、ゆったり、LiSAとお話ができる機会かもしれない。

私も何度か参加したのだが、LiSAや周りのスタッフが作り上げるアットホームな雰囲気もさることながら、剥がし(時間計ってスタッフに急かされるアレ)もなく、LiSAが目の前で自分に向けたサインを書きながら、ばっちりしっかり目を見てお話してくれる、ファンにとっては奇跡のような、幻のような、夢のように幸せな時間が流れる。

LiSAも、スタッフも、まずはリラックスさせてくれるような雰囲気作りからして、ファンの気持ちを手にとっているようにわかっている。運営側でいながら、そこが何よりもすごいところだ。

という具合に、距離感の近さを紹介していったのだが、もちろんアーティストとしての表現やイメージは守れるように一定の距離を保っていて(=近づきすぎない)、それがまたファンを飽きさせていない要素になっているのかもしれない。近いようで遠いような、近い存在なのだ。

企業やブランドもそういう絶妙な距離感を意識したコミュニケーションを図れるといいのかもしれない。


Keyword2:需要

LiSAはファンの欲しいものをわかっている。
それは、グッズ、他ブランドとのコラボ商品、楽曲制作、ライブ演出、イベント(最近ではオンライン配信などの企画)、普段のコミュニケーションに至るまで。
すべてに、「私たちファンの欲しいものや嬉しいことをわかっているなぁ」と感じるポイントがある。

グッズを作るときなんかは事前に「何が欲しいか」を聞いたりもしている。

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グッズが売り切れてしまった事態をファンからのコメントで気が付いたLiSAはすかさず、「えらい人」へ再販の懇願。翌日すぐに再販が始まるという奇跡のような実話がある。

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情報発信のスピード感に関しても、ファンの"すぐ見たい!"や"すぐ知りたい"という思いに阿吽の呼吸で応えている。

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(イベント終わりのツイートはファンよりも速い可能性がある)

何を通して需要を知るべきかという手法に関しては色々あるとは思うが、そもそもでちゃんと相手の立場を想像した上での質問や対応ができているかが重要となる気がしている。(相手は本当に喜ぶのか?相手は本当に必要としているのか?などを気にする意識を常に持つなど。)


Keyword3:共創

LiSAはいつもライブを「みんなで作った」と言ってくれる。
言ってくれるだけではなく、その気持ちはあらゆる場面の行動や表情や言葉から伝わってくるものがある。

例えば、LiSAとファンの間での共通言語をつくることもひとつだ。
CDのことはラブレターと呼び、ライブのことはデートと呼ぶ。
そして、ファンのことはLiSAッ子と呼び、「今日もいい日だっ」をはじめとする合言葉がたくさんある。
ライブの曲中のダンスや掛け声などもその場でファンと考えることも多々ある。
また、ファン側も受け身ではなく、自分たちで曲ごとのペンライトの色は考えて、みんなで合わせるようにしている。
この状況には、例え初参戦のファンでも、「LiSAッ子」として参加できている一体感に達成感すら覚えるはずだ。

そして、LiSAはソロアーティストなので、固定のバンドメンバーはいない。
しかし、毎回ついてくれるミュージシャンの方々との仲はものすごく良い。
バックバンドメンバーは定期的に入れ替わりなどがあるため、ファンが個々の名前を覚えていたり、ましてやバックバンドメンバーが主役級に目立つことなんて、なかなか他のアーティストでは見かけない光景だが、LiSAのライブでは頻繁に見る光景でもある。

それもこれも、LiSAが毎回バックバンドメンバーが変わるごとにそのバックバンドに名前をつけて、自分たちもファンも親しみを持てるようにしているからだ。

一度、大きな会場でのツアーライブ中にLiSAが体調を崩してステージに上がれなくなってしまったハプニングが起きたことがあったのだが、サポートのバンドメンバーが素敵な演奏とトークでその場を繋ぎ、ファンもその場を一緒に創った。

この時、LiSAがもし普段からバンドメンバーにまで親しみを持ってもらうような働きかけをしていなかったとしたら、あの場はあんなに温かく楽しい時間にはならなかっただろうと、今でも思う。

「一緒に創っているんだよ」と言われたり、感じたり、そういう瞬間や出来事があるとやはり自分ごと化せずにはいられない&嬉しい&一体感が生まれるものだ。


Keyword4:信念

LiSAはデビュー前から今もなお、ある信念を貫き通している。
きっと当時歌手になると決めた時も、今現在歌手としてみんなの前に立つ目的もただひとつ。

「大好きな音楽で、みんなと一緒に遊びたいから。」

LiSAのこの"想い"にワクワクして心を動かされたり、時には救われた人も少なくないはず。だからこそ、この人についていこうと思えたはず。そして今、ついてきているはず。

LiSA自身の思想や信念が"変わらないまま、あり続けている"ということも、コアファンがずっとファンであり続ける大切な理由なのではないかと思う。

貫き通すことの難しさも超えたその"想い"に共感して、ここまでずっとついてきたわけだから。

どんなに売れて遠い存在になったとしても、LiSAの想いは変わらず、ファンへの向き合い方も変わらないでいてくれたら、ファンにとってこれほど安心できて、これほど嬉しいことはないだろうと思う。

ちなみに、以前何かのインタビューで見たのだが、LiSAにとっては、「もっともっとたくさんのみんなと遊ぶこと」が目標であり目的だから、売れることはそのための通過点というようなことを言っていた。

だからこそ、SNSが150万フォロワーだろうが、レコード大賞に選ばれようが、どんなに大きくなろうが、距離感を変わらずに保ってくれているのだろうと思う。(本人は保とうとしているわけではなく、自然にそうなっているだけなのかもしれないが・・)



3.「ファンマーケ」は愛と思いやり、そして熱量。

◎絶妙な距離感を意識したコミュニケーション

◎相手の立場を想像して需要に対して的確に応える

◎共創や仲間意識を持ってもらえるようなコミュニケーション

◎理念や信念を持ち続け、伝え続ける

結局のところ、ファンと徹底的に向き合うということが最重要な【ファンマーケティング】の考え方の上では、ファンは「何をしたら嬉しいか」「何が欲しいのか」逆に「何をしたら嫌なのか」までを徹底的に見る、聞く、調べる、考えることが大切なのだと思う。そしてファンの熱量を高めていき、巻き込んでいくことが大切なのだと思う。


そして、今回のタイトルにもなっている『大ヒットした本当の理由』は、鬼滅の刃の主題歌だったからというだけではないはずで、LiSAが大ヒット後も飛躍し続けているのは、この10年積み重ねてきたファンへの「愛」と「思いやり」があるからだと思っている。

ちなみにこの思想や行動は、"アーティストだから"通用するというわけではないと、私は思っている。企業もブランドも、創るのは"人"だし、好きになるのも"人"だからだ。

(企業やブランドのマーケティングでも生かせる考え方はあると思うので、少しでも参考になる部分があれば、LiSAが喜びます。)

そして、今回紹介した思考や行動はあくまでも一つの事例であり、行動に関しては"手法"である。そのため、実際にブランディング戦略を決める際は、企業やブランドの理念に基づいて考える必要がある。


以上、大切なことはすべてLiSAの『10年』が教えてくれた。


エピローグ

LiSAへの愛のパワーだけで、ここまで書き上げてしまいました。

あ、まさに、LiSAのライブってこんな感じ。

飛ばし続けて、気づいたら「最後の曲でーす!」って。



LiSAちゃんは4月でデビューから10年が経ちました。
つい先日、記念アルバムを発売しました🐞ぜひ『LADYBUG』の楽曲を聴いてみてください🐞(LiSAッ子宣伝部より)


次回は、ファンマーケティングを主軸にしたプロモーション戦略のお話なんかも書いてみようかなと思います!
(LiSAを売り出す側の"戦略"などもすごいなぁと感じる点があるのでご紹介できればと思います。)

今日もいい日だっ★

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