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歩行分析 機能的課題と印象 前編

「歩行分析ってどうすればうまくできますか?」


実習生や後輩に聞かれたら皆さんはどう答えますか?
日々の臨床で必ず見ているポイントはありますか?

なかなか一言で答えられるものではないので、返答に困ることも多いのではないでしょうか。

今回は
入谷誠氏「結果の出せる整形外科理学療法」
盆子原秀三氏「印象から始める歩行分析」

運動と医学の出版社様の歩行分析の解説動画を参考に、
前編では

①そもそも歩行とはなにか
②重要な機能的課題と3つの相
③観察の手がかりとなる歩行の印象
などの事前知識を中心に

後編では
3つの相にわけての観察のポイントや実践的な評価

についてまとめていこうと思います。
ぜひ最後までお付き合いください。



そもそも歩行とはなにか

そもそも我々が見ようとしている歩行とはなんでしょうか?

入谷氏は、
歩行は身体を前方に移動させるために、立脚相と遊脚相が左右交互に繰り返される循環運動であり、直線的進行を行う動作である。
この循環運動を流動的に(スムーズに)遂行するには時間的過程、力動的過程、空間的過程が必要になる。
と述べています。

前方へ移動するための循環運動である、というのは理解しやすいと思います。前へ進むための手段として両足を交互に使っているということがわかります。
では3つの過程はどうでしょうか?抽象的でやや分かりづらいので、3つの過程を簡単に説明すると、


時間的過程

加速と減速を繰り返すこと。まったくの静止状態はなく、両脚支持期で加速し、単脚支持期で減速する。

力動的過程

適度な緊張と弛緩を繰り返すこと。緊張が続けば動きに流動性は生まれない。歩行では特に足の上に体重が乗ってこないと緊張が生まれず、その後の弛緩もない。

空間的過程

曲線的に四肢を動かすこと。かどばった動きからは流動性は生まれない。

ということになります。流動的な循環運動(歩行)を達成するには、加速と減速、緊張と弛緩、曲線的な動き、が必要ということです。



重要な課題を達成する3つの相

では時間的・力動的・空間的過程を踏むにはどうすればよいでしょうか?
これには大きく分けて3つの課題があり、それらの課題を適切にこなせれば過程を踏む事ができます。

3つの課題とは①荷重の受け継ぎ②単脚支持③遊脚前進であり、歩行の相を関連させてまとめます。

荷重の受け継ぎ

名前の通り対側からの体重を受け継ぐための衝撃吸収が課題となります。歩行の相は初期接地・荷重応答期にあたります。

単脚支持

引き受けた体重を片足で支え、次に生じる加速の準備をします。歩行の相は立脚中期・立脚終期にあたります。

遊脚前進

身体を前方に移動・加速させる実質的な段階となります。これの達成のために前の2つがあると言えます。歩行の相は前遊脚期・遊脚期にあたります。

となります。



課題の達成をどう見抜くか

ここまでで歩行の目的や重要な課題がわかりました。では実際に各段階での課題が達成されているかどうかをどう判断すればよいでしょうか?

これには具体的な着眼点をもつこと(部分)と抽象的なイメージ・印象を捉えること(全体)が必要です。

具体的な着眼点

これに関しては実際の写真や動画を見ながらのほうがわかりやすいと思うので、後編で詳しく説明します。簡単に言葉だけまとめます。

荷重の受け継ぎ:踵接地のタイミング

単脚支持   :骨盤の側方移動

遊脚前進   :股関節伸展から屈曲

これらに着目すると課題が達成できているかよくわかります。


イメージ・印象

盆小原氏は、
歩行分析の熟練者は歩行から受けたイメージや印象から逸脱した動作を見つけ出すトップダウン的な思考をもっている。
と述べています。

つまり観察の始まりは印象であり、どの相での、どういった逸脱動作がどのような印象を与えやすいか知っておくと動作の是非を見抜く助けになる、ということだと思います。

「印象から始める歩行分析」から、重要な課題を担う3つの相のつくる印象をまとめました。

荷重の受け継ぎ

力強さ・勢いに関する印象を与えます。
具体的には適切に荷重を受け継げていれば、踵接地での踵部と床の接触によって力強い印象、荷重応答期での下腿前傾によって勢いがある印象を受けます。
逆に踵接地で弱々しい印象、荷重応答期で勢いがない印象だと、荷重の受け継ぎは達成できていない可能性があります。

単脚支持

安定感・質量感に関する印象を与えます。
単脚支持が行えていれば、立脚中期には安定した印象、立脚終期には軽い印象を受けるでしょう。
逆に立脚中期で不安定な印象(多くは体幹の動揺による)や立脚終期に重たい印象を受ける場合は、単脚支持は適切に行えていないでしょう。

遊脚前進

円滑さ・大きさに関する印象を与えます。
遊脚前進できていれば、前遊脚期での膝関節と足関節の協調性から滑らかな印象を、遊脚期では足部クリアランスと歩幅から大きい、という印象を受けるでしょう。
逆に遊脚前進できていなければ、前遊脚期ではぎこちなさ、遊脚期では小さい印象を受けると思います。


対象者の歩行を最初に見たときの印象を上記のような言葉にすることで、大まかにどの相、課題に問題があるかの仮説が立てやすくなると思います。

また臨床的には、エラーの出ている相は結果であり、多くはその1つ前の相に原因があることが多いと感じます。



後編の記事では、3つの相においての具体的な着眼点、臨床的な評価、結果の解釈などをまとめていこうと思います。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

クライアントの動きを一目見ただけで原因がわかるような、プロフェッショナルにあこがれて、今日も学ばせてもらう日々です。

後編もぜひ読んでいただけると嬉しいです。


参考文献

山口光國,入谷誠,他.結果の出せる整形外科理学療法.メジカルビュー社.2009.
盆子原秀三,他.印象から始める歩行分析.医学書院.2018.


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