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運動器エコーの初歩

皆さんの病院ではエコーによる画像検査を活用していますか?
近年はPTがエコーを使って評価・治療を展開していくことが選択肢の一つとなりつつあります。

今回は、

①簡単なエコーの仕組み
②長軸像・短軸像の違い
③各組織がどう見えるか

についてまとめていこうと思います。


筆者も初めは何が見えているのか、どの方向から見ているのかすら分からず、苦戦した覚えがあります。
エコー画像をみる最初の一歩を手助けできるような記事にできればと思います。



エコーの仕組み

超音波画像診断装置の原理は、「パルスエコー法」といわれ、生体内に向けてパルス波を送信してから反射波が戻ってくるまでの時間を測定して距離に換算した上で、反射波の強さの変化を、画像にしています。

https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/ultrasound/ultrasonography/ultrasound-column/general/artifact より

つまり、解剖学の知識と照らし合わせながら、なんの組織がどの程度超音波を反射するかをまず知る必要がある。



長軸・短軸の違い

プローブの当て方(画像のみえかた)には2種類あり、輪切りのように見える短軸と、縦に切れ込みを入れるような長軸がある。


短軸像でみる利点は、周辺の組織をまんべんなく観察することができ、各組織の位置関係がわかりやすい点にある。



一方で長軸像の利点は、一つの組織にフォーカスして連続性や柔軟性、腫脹などを観察できる点である。

短軸で周辺組織の位置関係を把握し、長軸で特定の組織にフォーカスして観察するようなイメージである。

プローブを当てることに慣れてきたり、当てるのが簡単な部位であればいきなり長軸から当てても目的の組織を探し出せるだろう。
また部位によっては短軸像のほうが特定の組織を観察しやすい場合もあるため、一概には言えない部分もある。


各組織がどう見えるか

エコー画像において、反射するものは白く、反射しないと黒くうつる。
言葉の定義を確認すると、強く反射してうつることを高エコー像、逆を低エコー像という。


骨は骨皮質表面でほとんどの超音波を反射してしまうため、骨の輪郭が線状の高エコー像となる。また骨皮質より内部は超音波が透過できないため、黒くなる。

つまり骨表面を見るには適しているが、骨内部の状態はわからない。


軟骨

軟骨は構成する組織によって見え方が異なる。

硝子軟骨(関節軟骨など)は2型コラーゲンが主成分である。水分を多く含み、線維を作らずゲル状のため、あまり反射せず均質な低エコー(黒)となる。

一方で線維軟骨(関節半月など)は1型コラーゲンが主成分であり、膠原線維が密になって束で波状に走行している。そのため、やや高エコー(白)をしめす。




筋、皮下組織

筋膜(筋を包む線維性の鞘)は強力な膠原線維性結合組織で作られており、高エコーとなる。
筋周膜(筋線維を包むさらに小さな膜)も高エコーとなるため、筋膜の高エコーの内側にやや細い線維状の高エコーが見られる。
つまり筋を描出した際は筋膜による太めの高エコー像とその内側に筋周膜によるやや細めの高エコー像がみられる。

腱、靭帯
腱と靱帯は長軸像では共にfibrillar patternという層状の線状高エコーが見られる。
組織に対して直角に当たらないと超音波の散乱が起こり黒く抜けたように見えてしまうため注意が必要。断裂や損傷と見間違う。



神経

末梢神経は神経を包むParaneural Sheath(傍神経鞘)とその内側にある神経周膜が高エコーとなり、さらに内側の神経線維、神経上膜は低エコーとなる。
そのため短軸像ではhoneycomb patternと呼ばれる蜂の巣状の形が見られる。
長軸では腱と似たような層状の高エコーが見られるが、腱よりも縞模様が大きく見える。
また中枢に近づくにつれて神経線維に対する結合組織の量が少なくなるため、神経周膜内部の層状の高エコーは見られなくなる。



参考文献

笹原潤,他,編.臨床整形超音波学 version1.医学書院.2022.


ここまでお読みいただきありがとうございました。
今後は運動器エコーに関する記事もどんどん書いていきます。
次回の記事もぜひ読んでいただけると嬉しいです。


またエコーも解剖学や触診の知識があってこそ。
解剖・触診シリーズの記事も合わせてどうぞ!


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