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過酷な気候変動を生き抜いた「日本人のルーツ」

日本人のルーツ

こんにちは、今回は「私が妄想した日本古代史 」の中で、冒頭に記した「日本人のルーツ」のパートに関して、理系的な視点からの思いを記します。

先の記事では、以下のように記しました。

日本人の祖先は、約3万8千年前に日本列島に到着しました。その頃は旧石器時代後期なので、マンモスなどの大型獣を追いかけて野山を移動し、石器で狩猟して火で焼いて食べる、いわゆる原始人のイメージです。

https://note.com/rihaku_mousou/n/n93874dbdec70

このあたりの旧石器時代は、考古学による発掘の成果と、国立科学博物館や国立遺伝学研究所を中心とした人骨の形態やDNAの研究により解明されています。具体的には、遺跡の地層や炭素の同位体比率から年代を推定し、石器などの遺物から生活様式を推定し、人骨形状の類似性やDNAの変位から人類が移住した歴史を解明するなどの方法です。
これらの解明方法はとても科学的なので、理系の私から見ても特に疑問はありません。歴史家の間でも、「日本人は宇宙から来た」などのオカルト話や、「日本人は神の子だ」などの宗教話以外には、特に異論もないと思います。

国立科学博物館 篠田謙一 「DNAで知る日本列島集団の起源」より引用

ただ、これらの情報だけでは、彼らが何を思ってアフリカからアジアや欧州へ移住し、極東の日本列島へたどり着いたのかなど、物語がイメージできませんよね。以下では、そのあたりを理系的な視点から考察してみたいと思います。

地球の気候変動と生物の栄枯盛衰

地球が46億年前に誕生して以来、地表の気候は零下を大きく下回る「氷期」と、今より数10度高い灼熱の「間氷期」を繰り返しています。全ての植物や動物には、生息に適した気候があるため、気候が変動すると生態系が大きく変わり、新たな生物が誕生しては絶滅する栄枯盛衰を繰り返します。

Wikipediaの図に加筆

直近では、約1億年前から5000万年前までに灼熱の間氷期があり、その間に繁栄していた恐竜が寒冷化に伴って絶滅後、現在に至る新生代氷河時代に入って哺乳類が誕生しました。人類が猿から分岐したのは約500万年前、さらに人類の中で我々ホモ・サピエンス(現人類)が分岐したのは約20~30万年前のことです。恐竜が絶滅した頃の気温は今より15度程度高く、人類が誕生した頃の気温は今よりも5度程度高いんです。

Wikipediaの図に加筆

気候が温暖な時期は大型の生物が繁殖し、寒冷化に伴って減少します。人類が誕生した頃、寒冷化に伴って既に恐竜は絶滅していましたが、まだマンモスやナウマン象などの大型獣が繁殖していました。そんな中で、初期の人類は猿と同様に、木の実や根菜や昆虫などの小動物を食べる雑食でした。ホモ・サピエンスは、人類の中でも特に脳が発達した種族です。脳が発達したことで、石器を使って集団で狩りをする術を編み出した結果、栄養価が高い大型獣をも食料に加え、繁殖して行きました。人類が誕生してホモ・サピエンスが繁殖するまでの約500万年の間も、地球の気候は約4~10万年の短周期で温暖化と寒冷化を繰り返し、気温が6度程度も変動しています。最近、気候変動による異常気象の問題が叫ばれていますが、家も冷暖房もスーパーもない原始人にとって、約6度もの気温変化が起きたらどれだけ生存が難しくなるかは、想像を絶するものがあるでしょう。

Wikipediaの図に加筆

日本列島への到着

人類の中でホモ・サピエンス(現人類)が分岐したのは約20~30万年前、アフリカでの出来事です。ホモ・サピエンスよりも前に、アフリカのナリオコトメ原人、ヨーロッパのハイデルベルク原人、アジアのジャワ原人・北京原人などの人類がいましたが、気候変動により食料が尽きたためか、他の大型獣の食料になってしまったためか、気温の変化に耐えられなかったためか、絶滅しています。ホモ・サピエンスが誕生した頃にも、ネアンデルタール人やデニソワ人などの他の人類が生存していましたが、今は絶滅しています。彼らもホモ・サピエンスと同等に脳が発達し、石器を使った狩猟も行っていましたが、何かが不足して生存競争に敗れたのでしょう。

おそらく、ホモ・サピエンスがアフリカで誕生し、アジア大陸を経て日本列島へ到着するまでの数10万年の旅も、我々が想像するような新天地への旅ではなく、気候変動に対して繁殖か絶滅かの生死を賭けた移住だったのだと思います。時には飢えて食料を求め、時には大型肉食獣から逃れて野山を移動する内に、徐々に東へ移住を繰り返し、数1000世代後の子孫が偶然に日本列島へ辿り着いたのでしょう。日本列島へ到着したホモ・サピエンスは、その後も激しい気候変動に晒され、絶滅の危機の中で独自の劇的な進化を遂げ、縄文文化が誕生します。その話は次回に。

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