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三十年後の自分は。

 先日、親父の定年祝いをしてきた。

 薔薇のように盛り付けられたお肉を、豪快にすき焼きにする感じのアレだ。いわゆる黒い毛の和の牛なのだが、運ばれてきた赤と白のコントラストが鮮やかで、視覚がダイレクトに食欲を刺激した。

これ絶対美味いやつ~~

 そしてサムネイル画像の通り、特製の割下で美味しく頂いたってわけ。

 65歳の父と35歳目前の私。丁度父が30歳の時の子供になるのだが、そこから35年。こうやって酒を飲み、美味い飯を食べ、祝いの席を設けられる程度の人間にはなった。失敗は多いが息子として最低限のラインはクリアできていると信じたい。
 信じたいがまぁ自己採点では正直微妙なのが本音だ。

これも絶対美味いやつ~~

 楽しいご飯は時間が経つのも早い。そして兄妹4人での割り勘だという話を小耳に挟んでいたのだが、事前情報と異なる展開になっていくのは、戦場ではよくあることだ。
 紆余曲折あったが最終的に私のクレジットカードが発動しただけで終戦した。なんでやねん。

 とは言え弟1号は良い酒を贈ったみたいだし、弟2号は店の手配等諸々(おかげで安くなった)、妹1号は親父が興味を示していたワイヤレスイヤホンをプレゼントに持参していたので、全く何も考えていなかったチャランでポランな長男が今宵の金を出したなら、落とし所としては丁度良いのかもしれない。あんまり納得はしてないけど。
 買い換えようと思った財布、新調しようと思ったベルトやズボンの費用は愛すべき家族達のカロリーへと昇華した。
 だがそれでいいのだ。買い物するはずだった未来にサヨナラを告げて今日の明細をそっとしまい込んだ。いいのだ、これで、きっと。
 ……いや全然納得できん!!!!

 帰路、少し静かなアーケード街を歩く。
 弟妹もいつの間にやらかなりでっかく育ったものだとぼんやり思っていたのも束の間、なんだかんだあってこのあと家族全員でカラオケに行ったのでしたとさ。
 昔から友達、知り合い、色々な人に家族仲があまりに良いとよく言われるのだが、どうやら本当にそのようだ。さすがに自覚してきた。
 ついでに言うと私は安全地帯を熱唱しているところを動画に撮られた。何に使う気なんそれ。

 さてさて親父殿、まずは長年のお勤めお疲れ様でございました。
 第二の人生楽しむが良いでしょう。

お疲れ様でした

 65歳、30年後の自分。35歳、独りの私。どこかからもらってこない限り当然35歳の息子はいないわけで。そもそも今から少々頑張ったところで子供作るとかも簡単じゃないわけで。沢山の選択肢を切り捨てた自分には何が待っているのかと思うこともあるわけで。
 簡単に見えることを難しく捉えて、難しいことを簡単に蔑ろにした結果のツケを払う間に30年が終わりそうな気さえする。それも面白がるつもりだから別に良いのだけれど。

 何がいけないって悩むより30年後は単純に死んでいる可能性の方が高いことだ。
 今日くらい飲酒を控えようじゃないか。バーニングストーンにウォーターって感じだけどね。

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