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『屋上のバイオテロ』を紙の本に。7/27より販売予定。

 本を出してみたいと、ずっと思っていた。

 本をぺらぺらめくったり、本棚に並べて背表紙を眺めているのは、本を読むのと同じくらい好きだった。僕はネットに小説をあげることは多々あったけれど、自分が書いたものが紙の本に載ったことは学会誌に投稿した論文以外になかった(それでもその時はとても嬉しかったのだけれど)。だから、自分の小説のページをめぐる感触や他の本と一緒に本棚に並べたりする経験は当然ながらなかった。

 自分もネットに小説を投稿しているから、時々自作以外のネット小説を読む。沢山の小説があって、その中には商業出版されているものと遜色ない、どころか、それ以上の質の作品があったりする。

 しかし、その小説はその小説を望む人の元へ届いているんだろうか?僕はネットに小説を投稿するからネット小説を読む。でも、自分で投稿し出す前は、ネット小説を読んだことはなかった。紙の本ばかり読んでいたのだ。僕の周りの読書好きもネット小説よりは紙の本を読んでいることが多かったと思う。僕はその事に気がついたとき、こう思った。僕が自作小説を読んで欲しいと思う人はネット小説を読んでいないのではないのではないか。あるいは、僕の小説を望む人(いれば嬉しい)に届けるためには紙の本を出す必要があるのではないか、と。

 僕は素人小説家だけれど、小説を書く時には、伝えたいことがあって物語を紡ぐ。沢山の人に伝わる必要なんて確かにない。だけれど、僕の書いた物語が必要な人がいるのなら、その人には伝えたい。僕がいろんな物語に助けられたように、僕の物語だって誰かを助けると思いたい。それなら書くだけじゃなくて、届ける努力が必要ではないか?

 そんなわけで、ネットだけではなく紙の本として小説を出そうと努力を始めた。

 まずは手始めに賞を受賞する事を考えた。しかし、何度か小説の賞に応募したけれど、ことごとく落ちた。小説を出版するのは限られた人間だけで、特別な才がないといけない、と思った。

 もちろん、自費出版や同人出版という言葉は知っていたけれど、それだって市場原理をねじ伏せるような才か、採算度外視でリスクを負う勇気か、あるいはその両方が必要だと思っていた。僕はそのどちらも持ち合わせてなかった。

 某出版社に自分の小説を送って、自費出版をしようとしたことがある。自作の小説を送った後、編集者の方に連絡をもらったのだが、僕は驚いてしまった。自費出版というのは物凄く費用が高かった。大雑把な見積もりで200万円程と言われた。話を聞くと、出版費というより、校正などの編集作業や本屋さんへの営業などの人件費でこのような金額になるとのことだった。確かに編集や営業の労力を考えればそのくらいでも安いのかもしれないし、大いに支払う価値があると思う。だけれど、とても僕には手が出ない金額だった。

 やはり素人が小説を紙の本として世に出すのは無謀なのかな、と思った。

 ただ、案外諦めなければ何とかなるものだ。

 MYISBNというサービスを知ったのは出版社に自作小説を持ち込んだ後のことだった。

このサービスを知った時は信じられない思いだった。約5千円で紙の本を出版できるというのは、出版社を通した200万円と比較すると物凄い差だ。もちろん、先述のとおり出版社での自費出版費は営業や編集といった、本を売るための人件費が大きな割合を占めているので、一概に善し悪しを論じることはできない。だが、僕のように元手があまりない人間にとっては、このサービスは嬉しいものだった(一応言っておくが、僕はこのMYISBNというサービスの回し者ではない。ただ、もし僕と同様に、自費出版を考えている方の参考になればと思う)。

 僕はこのサービスを使って、ネットに上げている小説を紙の本にすることにした。選んだのはこのnoteに掲載している、『屋上とバイオテロ』という作品だ(値段はつけてるけれど、全文無料で読める)。現在Amazonでの販売の審査中でうまくいけば7/27から販売開始になる。

 この作品があなたにとって必要な小説なのかは、正直に言えばわからない。この小説は過去の僕に伝えたいことがあって書いたものだ。自分を許したくて書いたものだ。だけれど、もしかしたら『過去の僕』は『あなた』でもあるかもしれない。

 もしもそうであれば。願わくば、『今の僕』の洞察が、『あなた』を救えますように。

 まだ届ける努力が十分とは言えないから、もっと発信したり、本屋さんに頼み込んだりしようと思っているけれど、とりあえずはひと段落して人心地がついた。

 応援していただけたら、とても嬉しい。


早雲


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