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マガジンの説明(ロングバージョン)/今いる世界を目を凝らしてみてみよう。

『僕は小さい頃、この世は夢で本当の自分は眠っていると思っていた。

いまでも少しはそう思っている。昔から自分以外のものを疑う人は多いらしいけれど、ぼくもご多分に漏れないみたいだ。デカルトみたく、考えるだけで少なくとも自分だけは定義してみても、それ以外の世界は曖昧で、意識と世界は限りなく同じ意味になってくる。

もしかしたらこれを読んでいる君も同じような思いをしているかもしれない。君がもしそんな思いを持っているなら、これは君へ向けた物語だ

世界はまやかしで、大人はなぜかまやかしを信じている。それでも世界ってやつは少しは見所がある。何処のどなたが描き出したか知らないけれど、そのまやかしは非常に精緻なルールを基に動いて、そのルールは未だどんな人間にも掌握されていない。それでも世界は動く。君は学校に行くし、大人は会社にいくし、電子は雲みたいに捉えどころがなくて、時空は重力で歪んで、法律は解釈をこねくりまわされ、道端の猫は車で轢かれてよこたわっている。君が望めばこれは君の世界だ。

だから、細かく見てみるといい。きっと気にいるだろう。そして、こう思うといい。この世界はよくできた君のおもちゃだ。所詮おもちゃだ。適当に振り回せばいい。

僕が保証する』

はじめに

はじめまして。早雲と言います。この記事を開いてくれて本当にありがとうございます。

今回は、この記事が含まれているマガジンの説明をしようと思います。

このマガジンは生物学を短編小説やエッセイで伝えるマガジンです。例えば、夕暮れ時の教室で食中毒の検査をする男の子の話PCRの話をエロい語り口で説明したりしています。

なぜわざわざそんなことをしているのでしょう?少し長くなるかもしれませんが、ちょっと説明させてください。

上の「序」の文章は僕が少し前に書いてネットにあげた小説の一部です。この小説で言いたかったことは日常って退屈かもしれないけれど、ちゃんと勉強して観察したら捨てたもんじゃないぜってことでした。

なんでそんなことを書きたいと思ったかといえば、なんのことはない、日常に退屈してた昔の自分へ向けたものでした。高校生くらいの頃の僕は色んなことが退屈に感じていました。街を歩いても、服見ても、授業受けてもあんまり興味を持たずにいました。好きだったのは小説やマンガを読むことと、ゲームをすることくらいでしたが、それ以外には本当に無関心だった気がします。

でも、今はあんまり退屈してません。何が違うのかな、と考えてみたところ、大学の研究室に入って勉強した経験ができたからかなと思い当たりました。誰もまだ知らないことを調べる時は、先人たちが出した大量の論文や教科書を読まなければなりません。未知に到達するには既知で積み上げた土台にのらなきゃならないんです(巨人の肩に…というやつです)。その時期に今まで怠けていた分、沢山勉強することになったんですが、勉強すればするほど目が覚めるような思いをしました。日常が面白いんです。

たとえば、僕は微生物学の研究室にいたのですが、コンビニでお酒をみると作り方を想像するようになりました。これはビールか、IPA(インディアンペールエール)だから上面発酵だな、エールは香り高いのが特徴と訊いたけど、なんでなんだろう、あっそうか、上面発酵だから発酵の時の温度が高いんだ、だから酵母のエタノール以外の代謝物も多く作られるんじゃないか、それに上面発酵なら嫌気的な代謝回路だけでなく酸素を使うTCA回路がよく動くはずだ、ならきっと炭酸量も多くなるはず……といった具合です。もちろん、考えてることが後で調べたら間違えていることもあります(上で書いていることもまちがってるかも)。ですが、日常の風景から推察できることが多くなったおかげで、退屈することは少なくなりました。これは僕にとってとてもいい変化でした。

先ほども言ったように僕がいたのは微生物学の研究室でした。なので、僕は主に細菌や真菌、微細藻類なんかの研究をしていたのですが、その研究のためには一般的な生物学の知識も必要になります。細胞や遺伝子や代謝や生態や分類なんかです。なのでわりに一生懸命その辺を勉強しました。そして思ったのは生物学って日常に結構かかわっているという事でした。さっきの例でも出ましたが、お酒は酵母やカビや細菌の力(主に酵母ですが)で作られますし、身体的な特徴だけでなく政治的性向は遺伝子の影響が大きいですし、海に釣りにいったときに海が赤く見えればそれは微細藻類が大量に増殖しているとわかります。最近ではコロナウィルスのパンデミックの問題が挙がっていますがそれも生物学の範疇と言えます。多分、僕が勉強したら退屈しなくなってきたと感じたのは、生物学という日常によくかかわっている学問を学んでいたおかげもあるのかなと思っています(もちろん、他の分野の学問だって日常に大きくかかわっているとは思いますが)。

でも、大学の研究室に入って誰しもがちゃんと勉強したり調査したりするかというと少し違う気がします。研究室によっては毎日来る時間が決まっていて、しっかり進捗報告して、計画通りに研究を進めるためにたくさん勉強しなければならない、という場合もあると思うのですが、少なくとも僕が所属していた研究室は、わりに学生が持っている裁量が大きかったと思います。簡単に言えば研究しようがしまいが自由だったんです。したくない人はしなくていいし、したい人はすればいいと言った具合に。

研究をするために勉強した経験が退屈を追い払ったというのは分かったのですが、そのきっかけは何だったんでしょう?思うに、「もやしもん」という漫画が僕がちゃんと勉強するようになったきっかけなのかな、と思います。「もやしもん」は知ってますか?菌が肉眼で見える少年(青年?)が農大で学ぶ、という話で、結構面白い情報がたくさんあります。全巻揃えるくらいファンになってしまいました。今改めて考えてみると、この漫画はただ情報を伝えるだけでなくいかにその情報が面白いかという事を伝えている、という事に気が付きました。「もやしもん」で語られる話は身近な大学生の日常なんですが、その日常に菌がどのようにかかわっているかを語ってます。それがすごくわかりやすくて面白んです。たぶん、日本史の教科書に書いてある新選組よりも小説や漫画の新選組の方が魅力的だし、同じ池田屋事件の話でもその話がいかに面白いかというのを伝えるのは圧倒的に小説や漫画の方です。これは情報にストーリーが与えられたときに面白くなる、と言い換えてもいいかもしれません。情報それ自体を見てもあまり面白くないかもしれませんが、好きなお話の中に組み込まれた情報なら興味がわきませんか?「もやしもん」はとてもそのことを強調した漫画だったように思います。

ストーリーと情報を組み合わせるという点で似ているものとして、SFと学習漫画があると思います。ただ、前者は日常から遠すぎるし、後者はストーリーが少なすぎると思います。もちろん、日常に近い情報を、しっかりしたストーリーで語るものも中にはありまが、そんなに多くないような気がしています。

「はじめに」の冒頭でこのマガジンは生物学を短編小説やエッセイで伝えるマガジンですと言いました。つまり僕は、「日常を退屈にしないためには勉強しないといけないけれど、勉強は大変だから、ストーリーのなかに勉強に必要な情報を組み込もう。そうすることでその情報は興味深いものになるはずだ。それを読者の方に提供しよう」という事をしようとしています。もちろん、先ほども述べたように、これは特に新しい試みではありません。ただ、僕がやりたいなとおもったからやっていることです。ただ、この方針に特化した小説やエッセイなんかは珍しいんじゃないかな。なので、気に入ったらぜひ記事を読んでみてください。

きっと日常は面白いもので溢れてます!!

このマガジンについて

コンテンツの説明

このマガジンでは遺伝学、微生物学、発酵食品学の情報を短編小説形式やエッセイ形式で紹介します。

有料記事について

このマガジンの記事では無料の記事をたくさん公開しますが、マガジンを購入しないと読めない記事も作成(予定)してます。
無料の部分でも十分役に立つ内容を書いていくつもりですが、有料版の方は私の気合が違います。


著者について

このマガジンは複数の著者で作成されています。代表は私、早雲というものです。私自身は普段大学院の博士課程で研究をしていますが、時々小説を書いたり投稿したりしています。他の著者については追々述べていこうと思います。現時点で私を含め、著者は3名です。


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