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マッチングアプリの仕組みは結婚相手を見つけるには不向きだと考えている


あらゆるものがWebで比較できる時代

 先月、今までと少し違った記事を載せたいと思い立ち、好奇心から大人向けのとあるお店に行ってみた体験談を書いたのですが、予備知識が無かった私は当然のごとく、その種類のお店の検索サイトからお店を選びました。

 お店選びの検索サイトの作りはどんな業種でも基本的に同じです。希望する条件を選択するか検索ワードを入力して検索ボタンを押したら、条件に当てはまるデータが一覧で表示されます。私は地域に「大阪市内」で検索して、上位の中から初心者でも問題なさそうなものを選んだだけですから、お店探しはほんの3分程度で済みました。

 このように、現代は物を買うだけでなくサービスを受ける際も、専用の検索サイトで自分の希望条件を入れて検索するだけで、条件に当てはまるものを比較検討し、お店と担当者を選んで予約まで行えます。インターネットを使っている人なら今どき誰でも知っていることです。

 実際に利用してみて、気に入れば次回も同じように予約すれば良いし、気に入らなければ次回は他を選べば良いだけなので気楽なものです。

 ただし、それらはマッサージや美容院など、その時だけの人間関係だから気楽なのであって、この先の人生を共にするお相手を選ぶような重大な選択には、この仕組みはあまり適さない気がします。

かつて「出会い系サイト」と言われていたマッチングアプリ

 今でこそすっかり一般化したマッチングアプリですが、かつて(自分の記憶では2010年代前半あたりまで)その種類のWebサービスは「出会い系サイト」と呼ばれていました。

 出会い系サイトは1回限りのデートをするお相手、もっと露骨に言えば1回限りの肉体関係を持つお相手を探したい人が利用するものであり、そこでの出会いは「割り切った関係」というのがゲームのルールと認知されていました。ゲームのプレーヤーが独身なのか既婚者なのかはあえて聞かないという雰囲気もありました。

 そんな出会い系サイトのあり方は不健全だったとしても、割り切った関係はまさにその時だけの人間関係なので、Webの検索サイトには適していました。容姿や年齢が自分の好みか、気軽に会える地域に住んでいるか等の単純な条件で選び、相手が会ってくれることになれば嬉しい、という具合なのでお手軽です。

 ですがPairsなど大手事業者のイメージ戦略が功を奏し、「マッチングアプリ」と呼び名が変わって一般化したそれらのサービスは、真剣なお付き合いができる恋人、場合によっては結婚も視野に入れたお相手を見つけるためのサービスということになりました。(実際は様々な思惑のプレーヤーが混在した複雑なゲームになっていますが。)

 健全化するのは良いことかもしれませんが、サービスを通じて出会いたいお相手との関係性が各段に深くなったということは、検索の条件も各段に厳しく絞り込むようになっていきます。

生身の人間が機械的に「対象外」とはじかれる残酷さ

 Webアプリの検索で取り出せるようにする為には、人の個性も何らかの形で数値化するかタグ付けして、データベースにデータとして入れ込む必要があります。

 結果、「学歴:大卒以上、年齢:35歳以下、身長:170cm以上」などと検索され、一つでも検索条件に当てはまらなければ除外されるので、文字通りお相手の「眼中に無い」扱いを受けます。

 検索サイトとはデータ(=商品)を並べて比較検討するのに最適化された仕組みである為、そこに生身の人間が並べられた結果、本来は機械などの性能を表す「スペック」という言葉が人に対しても使われるようになり、まさに家電を買う時のように比較検討されて、いわゆる「ハイスペック」なお相手とうまく結婚できた人たちが勝ち誇るような風潮が出来上がったことには強い抵抗を感じます。

 「ハイスペック」な人が優れた「商品」であるなら、そこに含まれない人たちは言わば「ロースペック」であり、型落ち品や欠陥品と見なされ対象外なのか。そのような扱いを受けてしまえば、真剣に結婚したいと思って活動していた人たちが心を病み、あきらめてしまうのも当然ではないでしょうか。

 「自分には合わなかった」とお断りされるのは仕方ないと思うしかないですが、商品として陳列された挙げ句「ロースペック」として扱われるのは耐えられないでしょう。

 これらのことから、将来を共にするお相手を検索サイトで探すのは、商品やサービスを検索するのとは勝手が違うので不向きだと考えています。かと言ってマッチングアプリ以上に有益な手段があるかと言われると思い当たりません。これは重大な課題です。