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男と女のすれ違い ~失われた風景~

BGM:STILL LOVE HER(失われた風景) TM NETWORK


演出したい男

 女というのは結局、少しやんちゃでロマンチストな男に弱い。俺はそう考えている。

 10月の彼女の誕生日。俺は助手席に女を乗せて、行き先も告げず夜の高速道路をすっ飛ばす。秋の夜風が肌に心地良い。山道に入り、急カーブの中をたくみにハンドルを切る肩を彼女に見せつける。

 俺が女に見せたかったのは、この山の頂上付近から見下ろす百万ドルの夜景。

「きれいね…。」

 女がため息混じりにつぶやく。そうだろう。秋の夜の寒さも、この景色を見れば吹き飛ぶはずだ。

 連れてきたかいがあった。俺は誇らしげな気持ちになった。

 時は流れてクリスマスイブ。もう一度、あの場所に行きたい。俺たちの美しい想い出が残る神聖なあの場所で、俺は彼女に結婚を申し込むつもりだ。

 …だが、女は現れなかった。なぜだ!?

大切にされたい女

 女というのは結局、男に大切にされたいのだ。私はそう考えている。

 10月の私の誕生日。遅くまでかかった仕事を終えて職場を出ると、彼氏が車を乗りつけて迎えにきていた。それ自体は最初、うれしく思ったのだが、行き先も告げないまま高速道路に入ったところで不安がつのってきた。

 しかも男は、窓を開けて風を浴びながら運転していた。秋の夜風が私の体温を奪っていく。さらに車は山道に入り、急ハンドルの荒い運転で何度もカーブを曲がるのでひどく吐き気がしてきた。

 男がここまでして私に見せたかったのは、山から見下ろす夜景…。時計を見ると午前0時目前。私は疲れ果て、身体が芯から冷えていた。

「きれいね…。」

 とりあえず調子を合わせておいたがため息が混じってしまった。それに気づかなかったのか、男は得意げな顔をしていた。

 翌日、私は案の定、風邪をひいて寝込んでしまった。男は自分の「ロマンチックな演出」に酔いしれており、私が疲れていること、寒がっていることには目が向かなかったのだろうと思う。

 時は流れてクリスマスイブ。

「俺たちの大切な思い出の場所にもう一度行きたい。」

 と連絡が入った。

 …あり得ない。私はあの時の寒さを思い出して身体が震えた。とても残念だ (。´-д-)~