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癒す人と癒される人との距離感


付かず離れず

 リラクゼーションサロンの接客は、接客業全般で比べると、施術者とお客様との距離感はだいぶん近い方に入ります。

 一方、当サロンのオーナーセラピスト曰く、施術者はお客様が何でも話せる相手になる一方で「お友達」にはならず、あくまでサロンのセラピストとお客様としての関係を保つのが適切な距離感だ、とのことでした。

 そうなん?とその時私は訊き返しました。

心は開いてもその先には立ち入らない

 お客様はサロンという現実の生活から離れた空間で、気心の知れたセラピストに「ここだけの話」をしながら施術を受けてリフレッシュして、よし、また頑張ろう、となる為に来ていただけるわけでしょ。

 うん、それはよく理解できる。

 せやけど「ここだけの話」は、秘密を守ってくれる信頼できる人、かつ当事者ではない人にだけ話せることやない?

 これが、サロンのセラピストという立場を超えて、私生活上の友達や恋人になっていたらどうなると思う?

 感情移入しちゃって、一緒に怒ったり悲しんだりするのはまだ良いとしても、こうすべきだ!とか、私がその人に言ってあげる!なんて、自分が口出しするのを我慢できなくなるかもしれない。

 お客様の方は逆に、こんなことを話したら嫌われちゃうかも、とか、心配かけたくないから言えない、なんてためらいが出るかもしれない。

 人と人とのことやから親しくなるのはお互いの自由やけど、距離が近くなるとある程度その人の人生の「当事者」になってしまうからね。親しい関係やからできるようになることもある反面、今まで通りセラピストとしての役割ができるかというと、やりにくくなる面も出てくるよ。

都会の止まり木としてのリラクゼーションサロン

 なるほど、と納得しました。当サロンは「エステ」ではなく「リラクゼーションサロン」としての看板を掲げています。施術メニューだけを見ると、アロマオイルを使ってお身体の調子を整える、というようなことが書かれていますがそれだけではありません。

 冒頭にも書いた通り、日常から離れた空間で、ここだけで完結したご自身とセラピストだけの人間関係で、心に溜まったモヤモヤを置いていく場所。美容目的の結果に特化した「エステ」では得難いものがそこにはあるからこそ、個人経営の「サロン」は大手の「エステ」とは棲み分けができているのだと思います。

 都会の大きな樹の中では目立たないけれど、よく見て探していただければ、貴方が立ち止まって羽根を休められる「リラクゼーションサロン」という小さな枝がそこにあります。ぜひお越しくださいませ。

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