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子どもが泣き止まない・親の不安やイライラはどのように伝わるのか

余計なお世話と言われるかもしれないが、小児看護師の視点から今日は書きたいと思う。



「お母さん、怒らないでー」「怒ってないから」
「お母さん、怖いよー」「いいから早く歩いてよ」

昨日、帰宅途中で赤ちゃんを抱っこしているお母さんの傍らで泣いている幼稚園くらいの女の子を見かけた。
会話は、その時通りすがりで聞こえてきたものだ。

店や乗り物など、いろんな場所でよく見かける状況だと思う。


一方で、小児外来では「赤ちゃんが泣き止まないんです」どこか痛いのではないだろうか等と心配になり受診する保護者がいる。
しかも少なくない。
たびたびいる。
それほどみんな育児に一生懸命なんだと思う。

2つは違うパターンだが、親のある共通点に気付くだろうか。


▼まず外来に来るパターンから考えてみる。

病院について、私たちが話を聞きに行く頃には、当の赤ちゃんはスヤスヤ眠っていることが大半だ。
「来る途中に眠っちゃって」とのことで、一応診察して何事もなく帰られる。

なんで泣いていたんだろうという保護者がいるけれど、泣き止んでいるのだから、それほど深く考えることはない。些細なことがきっかけ、きっと。

赤ちゃんは車の揺れが気持ちいいので、来る途中で眠ってしまうことは多いですよ、とか、お母さんが、受診することで安心したので赤ちゃんも安心して眠ってしまったのでしょうね、とかお話している。

逆に診察時になるまでひとときも泣き止まないときには、どこか痛みがないのか等を念入りにチェックする。
そんなことはまれだが。

▼泣き続けることの不安はあやす側にある

赤ちゃんは些細なことで泣き始めたはずだけれど、泣き続けていると
どうしていいのか分からない、どこか痛いのではないか、など不安や恐怖ともいえる葛藤が保護者の中に芽生える。我が子を愛しているからこその心理だ。
泣いたら泣き止ませなければならない。そう思ってはいないだろうか。

体調が悪いとかいつもと様子が違うときは別だけれど、単にぐずって泣いている、そしてあやしている親がイライラしたり不安になっているとき、無理に泣き止ませようと躍起になっているときは、少し冷静になってみる時間が必要だ。

今は核家族で日中ひとりで育児をしている人や共働きで時間に追われる親も多いと思うので、泣いているからといって、ずっと抱っこしているのは大変なことでかなりのストレスがかかる。

私も専業主婦とシングル子育ての経験があり、ストレス満載の日々を送っていた時期もあるので、「いったいどうしたいのー」と叫びたくなることもあった。いえ実際叫んだことも。

いろんな方法を試してみても、もう無理と思ったときは、そんなに必至に泣き止ませなくてもいいのでは、と発想を転換してみてはどうだろう。

今は私がイライラしているから無理、と思ったときは、いっそのこと、抱っこせずに安全なところに寝かせて泣かしてみる。

(今はご近所が煩いところもあるんですよね。世知辛い世の中ですが、ご近所付き合いもコミュニケーションとって分かってもらいましょう)

▼そして冒頭のパターン

しかし冒頭の子のように外で地団太されるとしばらくおいておく、なんてことは厳しい。
どうにかしたい、しなければ、そんな心理状態になってしまう。
「ちゃんとしてよ」という言葉は時に子どもへだけではなく、周囲の人達に向けられているのではないだろうか。通りすがりの大人へ。
気持ちはすごーく分かる。本当に。
私だって頑張っているのよ、言うこと聞いてくれないのよ、って思い。

でも通りすがりの私は、ちょっとその子をぎゅっとしてあげたくなった。そしたら落ち着くかもよ。不審者になるからしないけどね。
そして、そんな広い心を持てるのは当事者ではないからと重々承知しているから。

ここでタイトルの件

▼イライラは赤ちゃんに伝わると言われるが何故だか知っているだろうか?

ふたつのパターンの共通点。
親の身体から発していることだ。

赤ちゃんは抱っこしているその腕の筋肉の緊張を感じとっている
赤ちゃんってすごい。
また、言葉をまだ理解していないので
声のトーンや大きさなどを感じ取っている。

泣いていて抱き上げるとき、
腕の硬さ大丈夫?不安で緊張していない?
「はいはい、○○ちゃん、どうしたのかなー」という声は?
イライラした声になっていないだろうか?

「どうして?」という気持ちであやしたりしても、赤ちゃんは逆に不安や恐怖を感じ取り、余計に泣いてしまうのだ。

冒頭のお母さんも「怒ってないから」の声のトーンがイライラモードだった。そして子どもの返答は「怒ってないの?」ではなく「お母さん、怖い」だ。

自分が冷静ではない時、泣いている子どもに言葉で諭すのは難しい。
言葉の内容よりも口調や声の大きさで親の心理を判断している、いや、されている、ことのほうが圧倒的に多いから。
やはり自分が落ち着くしかない。辛いけれど。
逆に親が冷静で優しく話しかけている時は、泣いていても子どもはしっかり聞いているのだ。イライラしているときに冷静になることが至難の技なのは経験上重々承知している。
でも、泣いているときこそ、ぎゅうっと抱きしめて安心させるほうが早く泣き止む近道なのだと、その時に思い出してほしいと願う。


▼私自身も

私は看護師になって1年目に筋肉の緊張のことを医師から教えられたのだが、そのときに「イライラしているときや忙しくて自分に余裕がない時には子どもを抱くな」と言われた。

イライラしているときにいくら抱っこしてあやしても赤ちゃんは泣き止まないどころか、余計に泣いてしまうこともあるから。

それが常に念頭にあったので、
自分が子育て中は、抱っこしながら声が大きくなったりしていたときは「ああ、今は私無理だな」と安全な場所に泣いてる我が子を寝かせて、深呼吸して自分自身がリラックスしていることを確認することがあった。

ひといき置かなければ向き合えない時もある。
母親だって感情がある人間だから。
わかっていても落ち着く前にカッとなって大きな声をだすことも1度や2度ではなかった。

逆にいつもニコニコと冷静で対応している人は尊敬する。
私は決してそういう親ではなかったので、今日見かけたお母さんの気持ちがよくわかる、だからこそ自分の心の安定のためにも、早く子どもを連れて帰るためにも、ふと思い出してほしいのだ。

そして、成長とともに泣く時間は確実に減っていく。
当事者であるときは長く長く感じるものだが、永遠には続かない。

子育てって本当にすごいことだから頑張っている自分を、たくさん褒めてほしい。
エールを送ります。


▼こちらも参考までに書いてみました↓
育児ストレスを溜めないためのイライラ解消のコツとその医学的根拠

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